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【CBC】飛行機恐怖症の女性とライト兄弟⑥

 飛行機恐怖症を克服したいという女性。「(飛行機が)空気に支えられている感じが乏しい」というクライアントにコーチは「空気(大気)」になって飛行機を飛ばせてみるワークを提案。その後、改めて飛行機にのるイメージをしてみると不思議なことにクライアントの恐怖心は消え「飛行機は素晴らしいなぁ」と言うようにまでなりました。そして、いよいよセッションは終盤に

あらすじ


 コーチは言語・非言語を駆使しながら、クライアントの無意識に働きかけています。その様子は、文字情報だけでは伝わりませんので、ぜひビデオもご覧ください。今日のパートは41分50秒あたりからです

 飛行機をイメージするだけで恐怖で脂汗をかいていたのに、セッションが始まって41分ほどでクライアントは

「あ~、飛行機は…素晴らしいな。素晴らしい乗り物だな」

 と言うまでになりました。それを受けてコーチは

宮越「何が素晴らしいですか?」
CL「飛行機を、自分が信用していなかったというか。この現代の文明を」
宮越「うん、現代の文明を!」
CL「そういうのを、その、自分が拒否してた。」
宮越「そっか。飛行機に何て言いたいですか?」
CL「なんか、皆を運んでくれて、ありがとう。」
宮越「うん。じゃあ、言ってあげてください。皆を運んで、」
CL「皆を運んでくれて、ありがとう。」
宮越「で、今までのことはなんて言いますか?」
CL「ふふふふ(笑)」
宮越「今まで、」
CL「ごめんなさい。」
宮越「今まで、ごめん。今まで、ごめんなさい。皆を運んでくれて、ありがとう。」
CL「なんか、すごい役割を果たしてくれてるなって思います。」

変化を定着させる3

 飛行機を擬人化してポジションチェンジ。これも面白いアイディアですね。コミュニケーションが取れる相手で、相手の気持ちがわかったと思えれば「安心感」が増しますよね。


宮越「そうですよね。じゃあ、ちょっと今度飛行機になり切ります。ここに座ってもらっていいですか?」
CL「はい。」
宮越「飛行機、自分は飛行機の一部になり切りますからね。向こう向いて、はい。三列シートの三つ目だと思って、自分も。はい。ここ飛行機役ね。はい。座っちゃっていいですよ、下に。お尻ついて、いいですよ、それで。はい。で、『今までごめんね』って言われるのを感じてください。『今までごめんね』って。『皆のこと運んでくれてたんだね』って。」
CL「はあー、頑張ってるよ。」
宮越「そうね、頑張ってるよってね。」
CL「そっか…なんか、楽しい…国に、連れていくから、怖がらない。。。怖がらなくていいよって、言ってくれてますね。」
宮越「なんか、今まで揺れちゃってたから、なんか、不安になってたんだよって言われたら、なんて言ってあげますか?」
CL「あ~、それも演出。ふふふふふ(笑)」
宮越「すごいね!(笑)旅の、旅の演出(笑)」
CL「演出みたいな。…そうだな。それもあるから旅だよ、みたいな。」
宮越「なんか今まで全然支えられてる感がなかったんだよね~って言われたら何て言いますか?」
CL「うーん…これは、誰も、あ、なかなかこれは知ってる人はいないんじゃないかなとか(笑)。」
宮越「あははは(笑)なかなか知ってる人はいない。いないけど。。。いないけど、何なんだろう?」
CL「この秘密を教えてあげたから、もう大丈夫だろ、みたいな感じ。」

飛行機との対話1

 クライアントはクリエイティブだし、ユニークですね。曰く

「(揺らしたのは)旅の演出」「(空気の)秘密を教えてあげたから、もう大丈夫だろ」

 あれだけ恐怖の対象だった飛行機になりきって、こんなことを言えるのですから、状態はだいぶ変わっていると思います。


宮越「じゃあ、それ言ってあげてください。」
CL「この空気の秘密を、エミちゃんに教えてあげたから、これ秘密だよ、みたいな感じで。もう大丈夫でしょ、これで。って言う感じ。」
宮越「そうだね。OK。じゃあ、ちょっと立ち上がって、はい。飛行機が言ってくれてるの聴いてください。いいよ。座っちゃっていいよ。はい。で、飛行機が『この秘密教えてあげたから、もう大丈夫でしょ』って。『ちょっと時には演出もするけど(笑)でも、真っ直ぐ飛んでるから、大丈夫だよ』、うん。」
CL「ああー、そうかー…、申し訳なかったな。」
宮越「ふははは(笑)じゃあ、こうやって、さすってあげて。ね。悪者にして、」
CL「あ~、ごめんなさい。そうですね。あー、ごめんなさい。」
宮越「で、何て言いたい?これから、いろんなとこ行こうね、なのか。何て言いたいですか?」
CL「あ、これから宜しくお願いします。」
宮越「うん。これから、宜しくお願いします。」
CL「うん。いろんなとこ連れてってください。」
宮越「うん、そうだよね。そしたら、私はどうする?いろんな人と出逢って、どんなことするよって教えてあげて。」
CL「これから世界中の人と会って、交流を深めていく。うん。で、こう、世界中の人と楽しんでいきたい。」
宮越「だから、よろしくね~。」
CL「うん、よろしくね~。」
宮越「はい、そういう感じですね。」
CL「あ~!あははは(笑)わあ~。」

飛行機との対話2

 コーチは今度はクライアントから飛行機に対して

「悪者にしてごめんなさい」

 と言ってもらっています。しかもさすりながら。このような行動をとることで、わかり合った、仲良くなったというふうにクライアントは思えるわけですね。それも飛行機への安心感につながります。


宮越「OK、じゃあ、一回立ち上がって。はい。じゃあ、こっち側にお座りくださいませ。はあ~、はい。じゃあ、どうぞ。お座りください。はい。さあ、じゃあ、えっと、このセッションが始まる前と今と、自分の中で何が起きたかとか、どんな気持ちかとか教えてください。」
CL「あ~、そうですね。飛行機…はあ、なんか、あー…、飛行機の気持ちを考えてなかった。」
宮越「飛行機の気持ちを!あははは(笑)ね。」
CL「考えてなかったなと思った。なと、思った。なんだろう。まあ、それは、飛行機を作ってる人とか、ライト兄弟とか、」
宮越「ライト兄弟とかね!うん。」
CL「そう、果てまで行くと、そういう人たちさえも自分は否定してきたのかなっていうのを思って。」
宮越「あははははは。。。歴史をね(笑)」
CL「歴史を、うん、なんか、ああ、ごめんなさいっていうのと、なんか、信じたいなと思った。で、皆が、うーん、信じてる、信じてるって言ったら変ですけど普通に乗れてるから、それも、勇気づけられるというか」

振り返りとまとめ1

 人が好きで、人とつながりたいというクライアントならではの発想。

 コーチは即座に「歴史をね(否定してたのかな)」と返しています。こうやって「歴史も含めて人々や世界と繋がっていきたい」というクライアントの価値観と結びつけて処理するわけです。

 クライアントは「歴史を信じたい(し、信じられると思う)」と返しています。

 飛行機を生み出した歴史を信じて、飛行機に乗って、そこにいる人たちやその場の歴史と繋がっていく。。。。そんなふうに物語を重ねています。そして

宮越「じゃあ、ちょっと想像して。あの、それこそさ、さっきの話してくれた、ね、イタリアの歴史とかね。で、これまで世界史で学んできたいろんな、いろんな人たちのチャレンジがあって、いろんな素晴らしい遺跡があって、文化があって。で、その中からライト兄弟みたいな人たちも出てきて、いろんな新しい技術で皆が繋がれるようにとか、もっと新しいことにチャレンジできる世の中ができてきたりとか、その中で飛行機も生まれて、益々、世界中のいろんな人が交流するようになって。で、その中で自分はどんなふうに未来の世界生きていくのかな~ってちょっと想像してみてください。…飛行機と仲良くなって、いろんな人と仲良くなって、…ね。これから、どんな人生生きていくのかな。どんな人生生きていきますか?」
CL「はあー、なんか、受け継いでいきたい。うん、こういう知恵?うん。人が作り出した知恵みたいなものも引き継いで、受け継いで、世界中の人と握手をしていきたい。」

振り返りとまとめ2

 コーチはここまでの話をまとめながら、「どんな人生を生きていきますか?」と問いかけます

 「人が作り出した知恵みたいなものも引き継いて、受け継いで、世界中の人と握手をしていきたい」

 すばらしいですね。飛行機との対話は、人が作り出した知恵を引き継ぐプロセスになったのですね。



宮越「いいですね~。はーい。さあ、それに向けて、小さな一歩はどうしましょうか?あの、どんなことでもいいですよ。例えばね、えっと、支えられてる感じが気持ちよかったら、なんか、それをこうやって、なんか忘れないように何回も練習してみるのもいいし。後なんか、その支えられながら飛んで行くのイメージするのもいいし。で、もしくは、どんなとこ行きたいかなみたいなものを見たりとかでもいいし。なんか、飛行機と仲良くなりたいんだったら、飛行機のことについても学んだり調べたりするんでも良いし、どんなことだっていいんだ。何をするのが今の自分にとって良さそうですか?」
CL「ああ、この感覚を忘れたくないから、これをずっと守ってくれてる感じをずっと、こう、毎日やっていきたい。」
宮越「どうするのが良さそうですか?なんか。」
CL「うんと、なんだろう…あー…毎日かな、毎日?……」
宮越「どんなのでもいいよ。うん。」
CL「寝る前に、こう、あ、ありがとうって。」
宮越「うん、ありがとうって。」
CL「飛行機忘れない。ありがとう。空気、ありがとうって言って、こうやって、この形を覚えておく。」

定着させるための行動1

 そしてコーチングも最終盤。行動を決めます。クライアントは具体的に飛行機に乗る予定があるわけではないので、もちろん、いつ乗るかなど決めてもいいのですが、クライアントはこの認知が定着するような行動が取りたいと言います。

 これは素晴らしいアイディアです。セッションのチェンジワークでつくられた認知を自分のものにするためには、新しい認知を強化する行動を現場でとることが大切です。

この感覚を忘れたくない


宮越「この形を覚えておく。なんか、あった方が良いですか?例えば、なんか紙飛行機みたいなものでも作った方が良いのか。なんか、こういうものがあった方が良いのか。それとも、もう、手だけでやりましょうか?」
CL「なんか、もう、飛行、ぬいぐるみみたいな飛行機あるじゃないですか。」
宮越「うん、ああ、はいはいはい。あるね、あるね。」
CL「柔らかい。ああいうのがいい。ああいうのがあれば、ああいうのが欲しい。」
宮越「ほんと。じゃあ、探してみませんか?ね。ちょっと探してみて、見つけて。で、それと仲良くなりながら、こう、支える感じも。」
CL「そうですね。」
宮越「じゃあ、柔らかいぬいぐるみの飛行機を是非。」
CL「そうですね。」
宮越「探して頂いて、はい。見つかったら、皆に教えてください。あははは(笑)」
CL「あははは(笑)分かりました。」
宮越「OK?」
CL「はい。」

定着させるための行動

 コーチは早速具体化を進めました。「この形を覚えておく」だけでは実行しにくいので「何かものがあったほうがいいのではないか」というような提案をしているわけです。

 そして「飛行機のぬいぐるみを手にいれる」という行動が出てきたら、即座に「見つかったら報告」を求めています。これも大切ですね

宮越「はい。じゃあ、えー、今の気持ちとかここまでの感想教えてください。」
CL「ああ、ありがとうございました。」
宮越「はい。」
CL「なんか、ああ、不思議な体験をした感じですね。なんか、飛行機にもなれるんだなっていうのが、」
宮越「ふふふふ、そうね(笑)空気にもね。」
CL「ああ、空気にもなった、ああ、なった、後、普段、ああ、なんか、びっくりした。こんなふうに思ってたんだなっていうのも、ほんと自分が思ってなかったこと、を感じたって言うか。うーん、ああ、思いました。」
宮越「はい、じゃあ、ゆっくりこれで復習してくださいませ。はい、ありがとうございまーす。」
CL「ありがとうございました。おお~、ありがとうございました。」

感想

 クライアントは後日、飛行機のぬいぐるみを笑顔で抱いた写真を送ってくれました。そして、僕が彼女の地元(愛媛県)で講演会をするときに、一緒に羽田から飛行機に乗りました。

 彼女は自ら窓際の席をとりました。「どうして?」とたずねた僕に

「せっかく乗るのだから、外の景色を楽しみたい」

 と彼女は笑顔で答えました。そして飛行機を降りた後に感想をきいたら

「ちょっと揺れた時もあったけど、全然大丈夫だった」

 とのことでした。

 僕たちは自らの脳内の世界に住んでいるのです。同じ飛行機に乗っていても、怖かったり怖くなかったりするのは、脳内の世界で描かれている飛行機のイメージが違うからです。

 そのイメージを書き換えることさえできれば、私たちの反応は変わります。そしてポイントを押さえてワークするなら、脳内イメージを書き換えることはそれほど難易度の高いことでもないのです。

 ということで、このシリーズも終わりです。自分の過去のセッションに辛口コメントをしようかと思って、スタートしましたが、案外良い形で頑張っていたので、ほとんど解説だけになりました。

 チェンジワークに入る部分までを短くすれば30分以内で終わる可能性のあるセッションで本当に素晴らしいと思います。ぜひ参考にしてみてください

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