クライアントの頭に残したい質問

ショートコーチングのコツは

 駆け出し時代に先輩からショートコーチング(10分以下など短時間のコーチング)のコツを教わったことがあります。曰く

クライアントの頭にかんざしを挿して帰すんだ

先輩の教え
かんざしを挿して帰す

 意味不明ですよね。。。なのでどういうことかを確認しました。

僕「え?かんざし?どういうことですか?」
先輩「頭にかんざし挿さってたら、気になるでしょ?鏡とか見た時とか、ふと頭に手をやったときとか」
僕「。。。ああ。。日常でも考え続けてもらえるように、相手に質問を残す。みたいなことですか」
先輩「うん。そうとも言えるかな」

先輩とのやりとり

 あんまり要領を得なかったのですが、そのおかげで僕の頭にはガッツリかんざしが挿さってしまい(笑)、それからしばらくはこのことについて考え続けたのでした。すごいよ先輩

 これはNLP指導者の山﨑啓支先生の言う「空白の原則」とも関係がありそうですね。人間の脳は空白を嫌うのです。

 あたまの中に疑問が浮かぶ。でもその答えが見つからない。

 この状態が空白です。多くの人にとって、この状態は不快なので、はやく答えが欲しくなるのです。だからこの空白を埋めるべく脳は動いていきます。それが「空白の原則」です

 「かんざしを挿して帰す」とは「空白をつくって帰す」でもあるわけです。

 話を戻すと、数分間くらいのショートコーチングでは、カチッとした仮説をつくって帰ってもらうことが難しいので、せめて相手の中に「空白」を作って帰ってもらう。そうしたらクライアントの脳は考え続けてくれる。

 こういう話ですね。誤解を恐れずに、さらに大胆に言い換えるなら

「クライアントに答えをもって帰ってもらえないなら、質問をもって帰ってもらえ」

 みたいなことになるのかな。

 ということで、この記事では、ショートコーチングのコツを超えて、クライアントが日常の中でも質の高い問いをもって生きていくために、僕たちコーチができることについて考えていきます

ハイパフォーマーの思考のモデリング

 いったん次のように考えてみて欲しいのです。

 コーチングとはハイパフォーマーの思考のモデリングである

 一体どういうことでしょうか?

 人それぞれ考え方は違います。そして、どんな考え方をするかによって、行動も変わるし、結果も変わります。だから考え方が変われば結果が変わるわけです。

 ハイパフォーマーにはそれを支える思考法があるわけです。コーチングはある意味、そのハイパフォーマーの思考法をクライアントにしてもらうためのプロセスであるとも言えるのです。

 では、どうやってハイパフォーマーの思考をしてもらうのでしょうか。それが質問なのです。

 「これは大問題だ。。。どうしよう。。。自分には無理だ。。。。」

 とか思っているクライアントに「問題のことは一旦おいておいて、本当はどうなればいい?(G)」「そこに向かってすでにできてることは?使えるリソースは?(R)」「うまくいくとしたらどんなやり方をしたからだろう?他には?(O)」「まずは何から始めると良さそう?(W)」

 などと質問を重ねていくことで、いつものグルグル思考から脱して、有効な打ち手を打てるようになってもらいたいのです。

 その意味で、コーチングとは、結果を出せる人や幸せに生きている人がしているような「考え方」をクライアントに体験してもらうプロセスなのです。

 GROWモデルは「結果を出せる人の思考パターン」を作っていくための質問セットなのです。質問ってすごいですね!!

 

どんな質問を持って帰ってもらいたい?

 質問によってクライアントの思考パターンが変わり、行動が変わり結果が変わる。それがコーチングであるということがわかりました。

 コーチの質問は「役立つ考え方」につながるのですから、日常でももっと活用してもらいたいですね。そのためにも質問を持って帰ってもらうというコンセプトは重要です。

 「魚を持って帰ってもらうのはなく、魚の釣り方を持って帰ってもらう」みたいな話なわけです。それができたら、自分の家でも会社でも、魚が釣り放題になるのです!

 とは言え質問をたくさん教えてあげればいいかと言うとそうでもありません。たくさんの質問を持って帰っても使いこなせませんね。

 ということで、僕たちコーチがクライアントに特に持って帰ってもらいたい質問ってどんなものでしょう。よかったらいくつか書き出してみてください。どんな質問があるでしょうか。。。

 僕はセミナーや講演会などで、参加者にこんな質問をよくします

コーチがする質問で一番重要なものはなんでしょう?

重要な質問

 多くの人たちが共通してあげるのは「ゴールの質問」です。

 ・本当はどうなったらいいの?
 ・何を望んでるの?
 ・何が起こったらいいの?

 これらは、未来の望む状態(ゴール)について問いかける質問ですね。

 現代コーチングの始祖の一人。ティモシー・ガルウェイも、クライアントの潜在力を発揮させるには、明確な目標を設定することが何よりも大切である説いています。

馬に絵を見せる

 潜在力(=無意識)が馬で、意識がその上に乗っている人だと思ってください。ティモシー・ガルウェイはそれぞれをセルフ2、セルフ1と呼んでいます。そして馬に絵を見せるように、無意識に具体的なゴールイメージを見せてあげるのです。見せたものが魅力的かつ具体的なイメージであれば、馬(無意識)は、それに向かってどんどんと勝手に走っていくのです。モチベーションがあがり、アイデアがどんどん出てくるのです。

 ということで、あなたにとっても、このゴールの質問こそが重要だと思えるなら、それを「かんざし」として相手の頭に挿して帰ってもらいましょう。

 

 持って帰ってもらうのが、たった1つの質問だけでは不安かもしれません。しかしいくつもの質問を投げかけても、相手の中には残りません。挿さらないで、ぽろっと落ちてしまうので、持って帰りようがないわけです。

 だから割り切って1つの質問を、相手の頭に残るようにグリグリと挿しこんで行きたいのです。そのために、実際のコーチングでは何をしたら良いのでしょうか?

 例えば、最高のタイミングに、ズバッと質問することができたら、相手の脳にしっかりと刻まれる可能性がありますね。でも最高のタイミングを選ぶのは難しい。

 だから「繰り返し質問」をしてもらいたいのです。

 本当はどうなったらいいんだろうね?

 本当はどうなったらいいんだろうね?

 本当はどうなったらいいんだろうね?

繰り返し質問する

 セッションの中で、何度も同じ質問をするのです。

 「求めよさらば与えられん」は正確には「求め続けよさらば与えられん」だという説があります。繰り返し求め続けるから結果が出るのです。ぜひ大切な質問はクライアントに繰り返し投げかけてください。回数効果でクライアントの脳に残ります。


他に残したい質問は?

 さて、ゴールの質問のほかに、クライアントの脳に残したい質問にはどんなものがあるでしょうか。

 GROWモデルの質問の一番人気はゴールの質問ですが、2番人気はなんでしょうか?僕の経験上は

 W=行動の質問

 です。

 ・何がしたい?
 ・何をすると良さそう?
 ・何ができるだろう?

 これも大事な質問ですね。ゴールの質問と合わせてコーチング2大質問と言ってもいい。

 本当はどうなったらいい?→そのために何ができる?

 と繋げて使ってもいいですし、それぞれ単品で使ってもいいです。行動の質問だけ使ってもいいのです。なぜなら

 うまくゴールなんて描けなくても、まずはできそうな行動(してみたい)をしながら、進んでみる。そうすることで次の風景が見えてきたりするのです。だから、クライアントに残したい質問(かんざし)としても「行動の質問」には価値があるのです。

 そして、もし可能だったら行動関連の質問をセットで持って帰ってもらいましょう。

 何をしてみたい?(行動)
 それをしたらどうなりそう?(予測)
 実際にしてみたらどうなった?(結果)
 そこから何を学んだ?(学習)

行動関連質問セット

 こんな質問をまとめて持って帰ってもらえたら、クライアントは日々、自分にこれらの質問をなげかけながら過ごすわけです。人生変わりそうですね

 コーチングは行動と学習のループをまわすこと

体験学習

 コーチングは行動と学習のループをまわすこと。という考え方があります。コーチングセッションの時間は、何に向けてどんな行動をすれば良いかの仮説をつくっているにすぎず、大切なのは、実際に行動をとってみる体験から学習し成長すること。そしてさらに次の行動に続けていくことだというのです。

 もしこんなふうに考えるなら、クライアントに持ち帰ってもらいたい質問は行動する前の「何ができそう?」「やったらどうなりそう?」だったり、行動した後の「やったら何が起こった?」「そこから何を学んだ?」だったりするわけですね。

 継続的に関わっているクライアントや、仕事場で頻繁に会うチームメンバーなどであるなら、なんどもなんども会うたびに、行動関連の質問をし続けてもいいです。

 もちろん、これにゴールの質問を組み合わせてもいいですね。

 ぜひ、あなたがいなくても、自問自答が続くように、選りすぐりの質問を相手に繰り返しなげかけてみてください

相手のために質問を選ぶ

 上のようなやり方を基本にした上で、最後に、相手のために質問を選ぶ、ということについて考えてみましょう。

 相手が常々といかけるといい質問を選んでプレゼントするのです。

 例えば

どんなリソースがあるだろう?
まだ使ってないリソースは何だろう?

リソースの質問

 相手がいつも、自力でゼロからむりやりやろうとするタイプなら、すでに存在しているリソースに意識を向けるために、リソースの質問を脳に残すと良いかもしれません。

誰にお願いできるだろう?
どう言えば手伝ってくれるだろう? 

お願いの質問

 他人にお願いするのが、苦手なクライアントなら、お願いに関する質問を持って帰ってもらってもいいですね。

 このようにそのクライアントを大きく変えてくれそうな質問が見つかったらぜひ、それを相手に問いかけ続けて欲しいのです。

今回はここまで

僕たちとコーチングで人生を変えたい人は

 

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