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【CBC】飛行機恐怖症の女性とライト兄弟③

飛行機恐怖症を克服したいという女性。飛行機に乗ったことはあるが、とても怖い思いをしてそれ以来乗れないようになってしまったとのこと。コーチは彼女の夢をきいた上で、飛行機恐怖症に取り組む決意を確認。いよいよ恐怖症への取り組みが始まります

あらすじ

 いよいよチェンジワークに入ります。文字でもイメージがつくように解説していきますが、よかったら実際のセッションのビデオがありますので、そちらも見てみてくださいね。とても面白いと思います

宮越「ね。OK。よし、じゃあ、えっとー。。。大丈夫ですよ。今からね、あの、(椅子に)座ってもらっていいですよ。はい、今から、えー、ハワイ行の飛行機に乗るんですけど。」
CL「んー!」
宮越「あ、今、純粋に乗るって思うと何が起きます?」
CL「乗るって思うと、あー、あー、ヤダ、やめてくれ!って思う。」
宮越「うん、ほんと。もう、今僕がチケット持ってて、じゃあ、成田まで行きますよって言ったら何が起きます?」
CL「ヤダ~。」
宮越「ヤダ~。もうちょっと教えて。ヤダ~って。」
CL「なんか、ほん、ほんとに、ヤダ。あ~、ヤダヤダヤダ。」
宮越「うんうん、そうだよね。OK、じゃあ、ちょっと、そのヤダヤダの中に入るよ。ヤダヤダヤダヤダの中にね。」
CL「うわ~、怖い。」

何が起こっているか1

 コーチは「どのように怖がっているか」を明らかにしようとしています。これは基本なアプローチですね。

「あなたが自分をどのように怖がらせているのか、それを教えてくれますか?」

 奇妙な質問ですが、「こんなことを想像すると怖くなる」「こんなことを言うと怖くなる」「こんなことをすると怖くなる」「ここに意識を向けると怖くなる」というのがあるんですよね。

 クライアントとそれに気がついたら、それを変えればいいわけです。シンプルな考え方ですね。

宮越「本当に耐えられなくなったら言ってね。ここは、まだ仮の世界だから。うん。ただ、ちょっとね、身体で何が起こってるかを一緒に想像してみたいんだ。で、ちょっとね、想像する前に説明だけちょっとするけど、多分、自分自身の中で何か特別なことが起きてるの。そんなにみんな怖がってないでしょ?」
CL「うん。」
宮越「だから、何かが起きてるのよ。自分の中で何が起きてるのかが分かれば、それを変えることって絶対できるって私は信じてるのね。で、こんなことね、別に拷問じゃないから、やりたくなかったらやらなくていいの。で、なんだけど、自分があそこ(未来)に行くために、やってみたいと思うんだったら、一緒に何が起きてるのかなっていうことに気が付いて、それを変えるか、もしくは、全然この原因というかね、無視して気持ち良く乗れる方法考えるか。で、でも、どうしても、それでもダメだったら、もう船でも何でもチャレンジしようね。自分の人生に向かって。だけど、船よりも飛行機で行けた方が良いわけじゃん。
CL「うん。」
宮越「なんか、時代にも乗れてる感じもするしさ(笑)効率も良いしさ、多分値段も安いと思うよ、飛行機の方が(CL「ふふふ(笑)」)。で、だから、ちょっと考えてみましょう。で、無理はさせないから、絶対に。」
CL「はい。」

何が起こっているか2

 「本当に耐えられなくなったら言ってね」とか「無理はさせないから、絶対に」といって安心させる部分と、力強く「自分の中で何が起きてるのかが分かれば、それを変えることって絶対できるって私は信じてる」と言い切る部分。これはこのコーチ(僕ですけど)の良さですね。クライアントは安心しつつ、変化に対する準備をすすめていきます

宮越「ね、OK。はい。じゃあ、もう一回想像するんだけど。成田に行って、飛行機これから乗るぞと。あそこに飛行機の席があると思ったら、ヤダヤダヤダになるじゃない。どんなイメージが出てきたりとか、何を考えたり、どんな状態になる?
CL「なんか、うーん、揺れるのがヤダ。揺れるのが怖い。で、グーンっていく時の圧力は大丈夫なんですよ。」
宮越「ああ、そうなんですね。」
CL「グーって、そっか、空の上での、なんかこの、揺れがすごく怖い。後、後なんか、閉じ込められてる感じが怖いですね。うん……なんか、出れない、出れない。」
宮越「そうだね。出たら危ないもん。あはははは(笑)そうだよね。出れないよね、あれね。」
CL「なんか、ヤダ。」
宮越「うんうん、そうだよね。」
CL「あ、ヤダ、その圧迫感かなー。…なんか、フラフラしたいって思います、なんか。」
宮越「フラフラしたい(笑)」
CL「フラフラしたい。なんか、船に乗ってると、甲板とかに出て、開放感を味わえるじゃないですか。あ、なんかね、開放感がない感じが嫌だ。」

何が起こっているか3

 クライアントの中で何が起こっているかの探索が始まりましたね。

 揺れるのが怖い、閉じ込められているのが怖い

 コーチは笑いで返しています。このように恐怖心をリラックスした状態で語ってもらうのも定石です。これだけでも少しずつ恐怖に振り回されないようになっていきます。認知行動療法の中の暴露法の応用ですね。

宮越「そうかそうか、開放感がない感じがね。ちなみにさ、船も揺れるじゃない?
CL「あ~」
宮越「あれとは、また違うの?何が違う感じ?
CL「そう、船の揺れは全然平気なんですよ。大きく揺れても、なんか、泳げばいいやって思うから。」
宮越「ふふふふ(笑)すごい!泳げばいいと、船は何かあっても。泳げばいいもんね。」
CL「泳げるから、なんか、なんか船を信じてるというか。」
宮越「泳げるから大丈夫。」
CL「泳げるから大丈夫って感じ。」
宮越「で、飛行機だと、泳げないもんね。空はね。ふふふ(笑)そうか、そうか、って思っちゃう。うん。」
CL「逃げられない。」

何が起こっているか4

 コーチは厳密に何が怖いのかを明らかにしようとしています。揺れるのが怖いというので、揺れるのが怖いなら船も乗れないはずじゃないか?と質問しているわけです。クライアントは下に水があるからいい、と答えています。

 このように論理的にチェックしていく能力もコーチには必要ですね。

宮越「逃げられない感じがあるってことね。OK。変な質問だけど、変な質問だけど、飛行機が全く揺れなかったら問題ないの?ちょっと想像してみて。全く揺れなかったら。」
CL「…あ、うん!揺れなかったら平気です。」
宮越「全く揺れなかったら大丈夫。ほんと。」
CL「うん。」
宮越「ちょっとイメージしてもらっていい?じゃあ、ちょっとこっち側来て、飛行機の席に乗りますと。」
CL「はい。」
宮越「乗ります。はい。で、グアーっと上がってくのは大丈夫なんだよね。で、座って、ガーっと上がってきます。ここまで大丈夫?」
CL「うん。」
宮越「で、上がったまんま、ずーっと揺れずに、密閉空間よ。」
CL「密閉空間。」
宮越「まあ、歩けるとしてもトイレぐらいとかさ(笑)そんな行けないけど。」
CL「まあ、大丈夫です。」
宮越「大丈夫なの?これは全然大丈夫。」
CL「うん、平気。」
宮越「ほんと。」
CL「あ、大丈夫。」
宮越「時間長くても、これは別に大丈夫。揺れなかったら。」
CL「あ、長くても大丈夫です。」

何が起こっているか5

 今度は逆のチェックですね。「飛行機が全く揺れなかったら問題ないの?」ということで、揺れること以外に怖さがないのかチェックしています。この質問によって、揺れることが怖いのだと絞ることができました

宮越「長くても大丈夫ね。OK。で、えっと、飛んでって、降りて、これはOKで。で、もう一個ね、ちょっと実験をしたいんですけど。今度は揺れますよ。あの、揺れますけど、ここが密閉されてなかったら、揺れたらどんな感じなのかっていうことを想像したいのね。分かる?揺れるんだけど、」
CL「あ~」
宮越「うん、はいはいはいはい。座ってると、まあ、なんか揺れたりするよね。うん、揺れるけど、どんな感じだったらこの揺れに耐えられそうとか何かある?船で揺れてる時みたいに何だったら。」
CL「…うーん…なんか、浮いてるから怖い。うん、浮いてるのが怖いですかね。」
宮越「浮いてるのが怖い。うん、そうだよね。浮いてるのが怖いよね。どうだったら怖くない感じがする?浮いてるんじゃなくて。」
CL「……線路とか。」
宮越「はいはいはいはい、線路の上を走ってる。」
CL「こう、地に足が付いてる感じがあったら怖くないかな。」

何が起こっているか6

 コーチはいい意味でしつこい。念の為、揺れてても解放空間ならいけるのかをチェックしています。コーチの関わりのおかげで結論としては浮いているものが揺れるのが怖いということになりました。


宮越「変な質問だけどさ、ジェットコースターみたいなのは怖くない?怖い?」
CL「いけます。」
宮越「いけるんだ。ふーん。」
CL「いけます、いけます。」
宮越「何?線路があるから?」
CL「…付いてるから?」
宮越「これが?ここが?何?付いてるって何?」
CL「あ、地面に。」
宮越「地面に付いてるから。」
CL「地面に付いてるからかも。うん。」
宮越「地面に付いてる感じがあると、」
CL「だったら、なんか、平気。」
宮越「と、揺れても平気。」
CL「うん、揺れても平気ですね。うん、地面。うんうん、平気。……、なんか、あー……飛行機が…そうだ、地面がないからですね。」
宮越「地面がないからね。そりゃ、飛行機だからね。」
CL「地面がないから怖い。」

何が起こっているか7

 ところが、また別のチェック。ジェットコースターは浮いていて揺れるけどどうなんだ?と

 本当にしつこいですが、何が怖くて、何は怖くないのか。そのことを特定して、クライアントの怖い要素に働きかけたいのでしょう。

 答えは、地面がないから。でした


宮越「うん、ほんと。密閉はあまり関係ない?
CL「密閉は結構、大丈夫です。」
宮越「あ、密閉は大丈夫。うーん、そうか。で、揺れるのも本当は大丈夫なんだけど、その、地面と繋がってない感じが嫌だ。なんだよね。ジェットコースターも。」
CL「足がこうやって浮いてるじゃないですか、飛行機。」
宮越「あはは(笑)足、浮いてるってどういうこと?」
CL「何て言うんですか。浮いてるじゃないですか。」
宮越「飛行機がね。」
CL「飛行機が。足も浮いてるじゃないですか。あははは(笑)」
宮越「あはははは(笑)そのイメージが、まだ掴みきれないんだけど。うんうんうん、どういうこと、足が浮いてるっていうのは?こう、こうなってることじゃないんだよね?」
CL「あ、そうです。付いてる、地面、機体には付いてるんですけど、空に浮いてるから、空が、というか、足が浮いてるじゃないですか?」
宮越「ふははは(笑)そういう感じなのね。足が浮いてる感じなのね。OKOKOKOK。」
CL「そうそう、それが怖いです。」
宮越「そっか、そっか。」
CL「そうそうそう、地に足が付いてない感じですね。うん。」
宮越「地に足が付いてない感じが、」
CL「が怖い。」
宮越「あるのね。うん、OKOK。」
CL「うん、なんか自分でどうにもならないから。」
宮越「そっかそっかそっか。うん、そうだね。」
CL「足が付いてるとなんか、なんか、大丈夫な感じがする。」

何が起こっているか8

 ここまでしつこく追いかけてきた結果、クライアントは

地に足がついてない感じが怖い」という表現に辿り着きました。そして


宮越「そうだよね、OK。えっと、もう一個ね、聴きたいんだけど。で、ちょっとね、すごく微妙な感じをさ、ずっと追いかけて行くんだけど。船に乗ってる時もさ、厳密に言うと地に足はついてないじゃん。水の上に乗っかってるんだよね。とか、何があると安心なんだろう?とか、例えばさ、例えばだけど、うーん、地に足が付いてなくても水の上でも大丈夫?」
CL「うん、うん。」
宮越「水の上でも大丈夫。」
CL「水の上では大丈夫です。」
宮越「ふーん。水の上に飛行機が乗っかってて、揺れながら動いているのは大丈夫。」
CL「あ、大丈夫です。」
宮越「あー、大丈夫なのね。」
CL「なんか、支えてくれてるから。」
宮越「水が?」
CL「水が、うん。」

何が起こっているか9

 また船でチェック。船も地に足がついてないはずです。先ほどの答えは「泳げるから大丈夫」でしたが、今度は

 「水が支えてくれるから

 というものでした。この言葉をきいてコーチは動き始めます

宮越「あー、水がね。はいはいはいはい。空気が支えてくれてる感じが、いまいち乏しいってことだよね(笑)」
CL「あ、空気が支えてくれてるんですか?」
宮越「空気が、支えてなかったら落ちちゃうもんね。」
CL「あー。」
宮越「理屈上はね。」
CL「あー、そっか。」
宮越「理屈上は、支えられてなかったら落ちちゃうんだけど(笑)でも、支えてくれてる感じが乏しいんだよね。あははは(笑)」
CL「乏しい、乏しい。支えてくれるとは思ってないかもしれない。」
宮越「そうだよね。あの、鳥が、ほら、空飛べるみたいにさ。あれだってさ、空気にちゃんと抵抗があるから飛べてるわけじゃん。なかったら落ちるよね。だから、水の中泳いでるのと本当は一緒なんだけど。その感じが乏しいんだよね。」
CL「そうですね。うん。」
宮越「ですよね。乏しいのね。OK、OK。はい。じゃあ、ちょっとさ。何?何かおかしいこと言ってる?」
CL「なんか空気を、のことを考えてなかったなと思って。」
宮越「あははは(笑)どういうこと?どういうこと?空気のこと考え、」
CL「空気の存在を、あ、そっかと思って。あれ、だからかと思った。あ、だからか。飛行機が飛べてるのは空気があるからかと今思って、ちょっと、はあって。」
宮越「あはは(笑)ほんと、そうだよね。じゃなかったら、全部落っこっちゃうもんね。」
CL「そうですよね。そっか、そっか。」

何が起こっているか10

 「空気が支えてくれてる感じが、いまいち乏しいってことだよね

 これも前提を使ったコミュニケーションですね。「空気が支えてくれてる(前提)のだけれど、実感が持てていないだけ」だと示唆しているわけです。

 これを「鳥が空を飛べるみたいに」とか「水の中泳いでるのと本当は一緒」とか言い方を変えながら何度も繰り返し、クライアントの内的イメージを揺らそうとしています。

 これを受けて、クライアントは「空気」に関心を向け始めます。いよいよチェンジワークのゴングがなったようです。次回の展開をお楽しみに

つづく

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