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ひこうき雲
この前授業の一環で墓地に行った。
テーマは死。
肉体的な死を見る。そして年に50回ほど葬式に立ち会う女性(牧師とはちょっと違うよくわかんない立ち位置の人だった)からのお話を聞く、精神的な死について。
生まれて初めて人間の灰を見た。
手首にでっかい十字架のタトゥーを入れた優しげなおばさんが淡々と墓地のシステムについて話し、死体を焼いて灰にする場所を案内してくれた。施設の中は無駄なものは一切ない異質な空間で、一人のおっちゃんがちっちゃいスピーカーから音楽を流しながら掃除をしていた。
なんか軽いなぁ〜と思いながら話を聞く。
ちょうど今灰があるから見たかったら見せてあげる、とおばさんがいい、ああ…じゃあ…って感じでみんなおずおずと差し出されたポットを覗き込む。
映画で見るような真っ白な粉じゃなくて、これ骨だったんだよって言われたら全然理解できるような、大きさまちまちの粗い粉が見えた。この後にさらに機械にかけて粉々にするらしいけど、片栗粉みたいにはなんないらしい。
一人の生徒がそのポットは使い回しかと質問した。
「はい」との回答。
使い終わった後は可能な限り綺麗にするけど、同じのを使うらしい。
なんか複雑な気分だなぁと。
そのあと墓地を歩いて回りもうちょっと話を聞いて、すぐ横にある教会に行った。
新しい優しそうなおばさんが教会の前で待っていた。
入って入ってと中に招かれ、教会の神聖そうな場所に招待される。円形に並んだ椅子に腰を下ろしておばさんの聴き心地の良い声をボーッと聴く。
その人は葬式の立ち合いをするだけでなく、死ぬ前に本人と話したり、死後にその家族と話したりするらしい。
死ぬ前に人が一番後悔することってなんだと思う?
おばさんが言う。
教会は声がやけに響く。
少しの沈黙の後に「他人のことについて後悔する人がほとんどね」と言う。
誰々に酷いことをしたとか、大切なことをしてあげれなかったとか。案外自分から遠い人のことについても後悔するらしい。なんかまあありきたりだなと思うけど、改めて言われるとドキッとする。
結構前にね、
おばさんが次の話を始める。
なんちゃら(日本語でなんて言うかよくわかんないけど、デンマークでは13か14歳の時にクリスチャンであることを再度認める儀式があるらしい。大体の子が生後すぐに洗礼を受けるから、成長して理性がある時に改めてクリスチャンであることを宣言する的な)に行った時に、すごい賢い子に出会ったと言う。
そこでは宗教的なことに加えて普通に将来の夢の宣言とかも言わされるらしい。
サッカー選手、有名人、お嫁さん、ミュージシャン、世界共通の可愛らしい夢が飛び交うのよ。おばさんが優しい声で話を進める。
ある子がね、こう言ったの。
死んだ後に寂しがられる人になりたい
そうよね。それが私たちの夢よね。
おばさんがゆっくりと頷く。
そこにいた数人の生徒は涙を流していた。
なんか僕も感極まっていた。
おばさん話うまくね。あとその子人生2回目なんじゃね。
なんてツッコミを入れることもなく、ボーッとバカでかいオルガンを眺める。
人も灰になるんだよな。
頭の中でユーミンのひこうき雲が流れる。
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