転倒の瞬間
その日は大掃除のため、保護者がたくさん来ていた。
その関係で送迎車や職員の駐車場場所が変わった。
私は朝遠い駐車場に送迎車を停め、そこから降りて利用者と歩きながら施設に向かった。
すると後方からドンッと音がしたので振り返った。
バイクごと乗っている人が転倒していた。道の真ん中だった。
私は利用者とそこに行き、バイクや倒れている人を起こした。
怪我をしていないか尋ねたが、大丈夫だと言っていたのである程度見届けてからその場を離れた。
「なんで助けたの?」利用者が聞く。
「倒れている人や困っている人がいたら助けるんだよ。」と私は答えた。
再び利用者は「なんで助けたの?」と尋ねたので、再び私は答えた。
笑ってしまう。
助ける理由を尋ねてはいるが、原付バイクを起こしたのは利用者だ。
私がかつて他の利用者からメガネを奪われ、壊された時も
この利用者がいち早くメガネを拾い、別室にいる事務長の元へ走って私のメガネを保護するよう託していた。
理解は不十分かもしれないが、咄嗟に助ける行動をその利用者はできている。
その利用者は障害があり、物事の理解が不十分だったり、不穏になったり、人を傷つけてしまう場合がある。
だけど、こうして倒れている人がいれば見知らぬ方でも助けることができる人でもある。
そういう理解はできている。
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