「この施設は好きじゃない。」と言った利用者 その②
パソコンで書類仕事をしていると、新施設長から話しかけられた。
内心ゲンナリした。
書類仕事をする前も仕事について指摘されて内心嫌な気持ちだったのに。
二人きりで事務室で仕事で気まずさがあったのに。
その日、私は忙しかった。
正確には毎週毎週忙しかった。
その日は朝一時間早めに自主出勤していたが仕事が終わらず
早く書類仕事を終わりにして、別の仕事をやらなければと集中していた。
話しかけるなよ、と内心思ったが、断る権利は私にはない。
話としては、私に心を開きつつある利用者は作業が色々できるので
工賃がより稼げる作業(他の職員担当)を任せた方がいいという話だった。
私が担当している下請け作業は単価が低い。
今までは色々な要求がある故、その下請け作業を任せてきたが
最近は穏やかになったし、融通がきくようになったから別の作業もできるだろうという判断だった。
今まではその利用者用に下請け作業をたくさんもらってくるように言われ、それで検品が大変だった。
その利用者は作業スピードが早いので、たくさん作業がないと時間はもたない。
確かにその人分の作業がなければ私の負担は減る。
ただ、以前作業を増やしてもらったのに、今度は減らせと業者に言うのは気が引けた。
私は内心思った。
その利用者は私に心を開いたからこそ、私の促しに素直に応じ、融通がきくようになってきた。
今日も「ともかさんのファンです!ずっとファンでいいですか?」と連絡帳に書いてきている。
このタイミングで、私から引き離し、他の職員との作業に切り替えるのか、と。
私がその利用者ならば、あまりの仕打ちだと思う。
せっかく、利用開始して半年以上苦情しか書かなかった人が前向きになってきたのに、もう大丈夫だろう、と私から切り離すのは酷な気がした。
今までその利用者がお金に固執している話は聞いたことがない。
もともとが週に一回半日しか利用しないのだし、私担当の作業から単価のよい作業に切り替えたところで、工賃金額はそこまでは変わらない。微々たるものだ。
それは果たして利用者の望みなのだろうか。
だから私は思った。
これは、工賃云々ではなく、私との引き離しが目的の話なのではないか、と。
別の利用者が私にしか目薬をささないこだわりが見られた時(私不在時は他の職員に頼れる融通さがある)、様々な職員でできるようにならないと、と言われた。
また、他の利用者が私に懐いている件に関しても似たようなことを言われた。
利用者に好かれる職員に私はなりたかった。
色々な利用者から信頼をされるのは長所だと思っていた。
だけど、転職先ではそれは出る杭なのかもしれない。
私がその利用者から熱狂的に好かれつつあるからこそ、引き離し、他の職員でも対応できるように切り替えなのかもしれない。
今の職場は送迎も分担制だ。
前の職場は送迎が固定だったからこそ、自分の送迎担当の利用者や保護者、運転手が強い信頼関係で結ばれたが
今の職場はそうならないように毎日ローテーションにしているのかもしれない。
そう思った時
利用者に特に好かれることさえ疎まれるなら、私は今の転職先に向いていないと思った。
その日、私は書類作成の仕事の関係でその利用者と久しぶりに一緒に作業ができなかった。
新施設長の言う、単価の高い仕事を任されていた。
「今日は書類作成しているから話せないけど、また今度話そうね。」
そう伝えると
利用者は嬉しそうだった。
ごめんね。
もう今度はないかもしれない。
もう毎週作業はできないかもしれない。
引き離されるかもしれない。
内心そう思いながら。
一方、下請け作業では上手に色々できたが
いざ別の作業を任せると課題が見られたらしい。
口のききかたも悪かったそうだ。
もしかしたら急遽私と引き離されたから荒れていたのかもな。
そう思ったが、口にはしなかった。
上がその考えである以上
別の作業をある程度やり、ある程度課題が見られ
かつ
本人が工賃より楽しく過ごすことを希望すると上に訴えない限りは
多分この決定は覆らない。
私のファンだと言ってくれてありがとう。私に力がなくてごめんね。
あとは周りやあなたの言葉次第だよ。
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