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掲示物の件

前の職場は掲示物がたくさんあった。

 
日課表や送迎表、給食メニュー、職員の業務分担表、作業の注意点や避難経路、その他伝達事項が色々と掲示されていた。

 
更に、行事の写真を飾っていた。
自分の事業の分は私が写真を模造紙等に貼り、飾った。

基本的には職員がやっていた。
利用者が帰った後に写真をレイアウトし、飾っていた。次の日の朝の利用者の反応が楽しみだった。

あの頃は利用者と思い出の写真や掲示物を見ては、色々話したりした。

 
 
反対に、転職先は掲示物がほとんどない施設だ。
私は最初驚いたし、今でもなんでこんなに掲示物が少ないのかと思う。

 
今度見学者が来るので、行事の写真や活動写真を掲示することになった。
利用者と三日後に掲示物作成をやるから構想を練るように新施設長から言われた。

 
構想を練ろと言われても
利用者の誰とやるか、どこに飾るかの話はなく、模造紙のサイズも分からない。
職員が決めたことをやらせるならば楽だが
うちの職場は利用者の自主性を尊重するし
ざっくりとしか、考えられない。
何か必要なものがあれば準備するよう言われたが、予算の提示がないからよく分からない。

更に、掲示物は3グループに分かれて行う。
足並みは揃えなければいけない。

 
私は内心ため息を吐いた。
こういうの、苦手だなぁと思う。

自由があるようで、ない。

 
掲示物を作る当日
グループが発表された。
私は同僚Aさんと複数人の利用者を担当するらしい。
なかなかのメンバーと人数だ。

 
開始して5分後、前施設長がAさんに用事があると呼び出した。
私は慌てた。
まだ開始したばかりだ。

 
「ちょっとだけだから。」

大体そういう言葉は宛てにならない。
実際Aさんが戻ってきたのは15分後だった。

 
Aさんがいなくなってから、こっちはてんやわんやだった。
そもそもが今日は急遽職員が二人休みになり、現場は人が足りない。

 
結局は大きなことをやろうとすると利用者が各自好き勝手にやろうとしたり、まとまりがつかなくなり、ろくなことができない。 
利用者は待つことが苦手だ。
何人かの利用者は放置になり、某利用者は「退屈。つまらない。」ともらした。
他のグループは順調に進んでいて焦った。

これだから三日前に言われた構想を練ろ、なんて何にもならない。

掲示物作成は今日中におわさなければいけないのに。

 
時間に追われながらなんとかやっていた。
写真の後ろには両面テープを貼ろうと思った。
うちの利用者は両面テープの扱いに慣れているから
おおよその長さに切ってもらい、剥がしてもらおうと思った。

 
「写真は後でファイリングするので、両面テープは使わないでほしいんですよ。マスキングテープかセロハンテープを使ってください。」

だから両面テープを貼った後に新施設長にこれを言われて泣きたくなった。
それを先に言え。

 
私は自分で写真を貼るならセロハンテープかのり派だが
利用者がセロハンテープをクルッと丸めたり、のりを適量つけるのは難しいのでリスクが低いマスキングテープにした。
マスキングテープなら多少長くても大丈夫だし
軽く貼って後は利用者に伸ばしてもらえばいい。

見た目もカラフルでいい。

 
他のグループが終わっている中、うちのグループは一番最後に終わった。

 
掲示物に関係ない言葉や絵を利用者が描いたが
まぁ利用者がやった感が出ているのでいいだろう。
そもそも文字や絵が描けない利用者や特定の文字や絵しか描けない利用者も多い。

 
活動の説明文は文章が得意な利用者に書いてもらったし
写真下にも「がんばっています。」とか「○○しています。」とか、書いてもらった。
いくつかは関係のある絵や文字を書いてもらった。

あとは他の利用者が好きな絵や文字を書けばいい。

なんとか終わり、達成感があった。

 
終わった後、前施設長からマスキングテープを使ったことを影で言われていた。
それならば最初から写真はセロハンテープを使って貼るように言えばよかったのだ。

 
新施設長からマスキングテープかセロハンテープを使えと言われたのだから何もルール違反じゃない。
まさかマスキングテープを裏に貼れと言いたかったのか。
マスキングテープは飾り用なのだし
裏に貼るなど勿体ない。

更に言えば、前新施設長にAさんを奪われた私に選択肢などない。

 
あぁ面倒くさい。
いちいちうるさい。

内心そう思う。

 
こうして求められてばかりだと
やっぱり前の職場のように職員がやった方が早いよな、と思ってしまう。

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