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初めての施設内販売と見学会

職場の施設が移転した為
前々からどうしたら地域の方とより関われるか、ということは議題に上がってきた。

 
新施設長は雑草抜きや細々とした雑用(ゴミ出しや電球取り替え等)を引き受けることを提案したりしていたが
実現には至らずにいた。

 
私の職場はゴミ拾いを月一していたり、ポスティング作業をしたり、散歩をすることで
地域に溶け込み、見知らぬ方とも挨拶や会話をするような仲だったが
別の地区に移転の為、また一から関係を築くことになった。

 
今年は酷暑のため、ゴミ拾い・散歩・ポスティング作業は例年より回数を減らさざるを得なかったし
日中出掛けても、なかなか前の地区ほどは近隣の方と触れ合う機会はなかった。

 
そんな中、数ヶ月前に施設内販売会と見学会を秋に実施したいという話になり
販売責任者として真咲さんに任せたい、と上から言われた。
また、私の社交術や話術を買われ、ゆくゆくは私に地域の人との橋渡しの役割も担ってほしいと言われた。

 
第1回施設内販売会や見学会の目的は、地域の方との交流・普段は販売に参加できない最重度もしくは重度利用者の活躍の場をもうける、となった。

 
施設内販売会や見学会の話が出た時は楽しそうだな、と思っていたものの
その後土日出勤日・行事が続いたり、サービス残業や持ち帰り仕事が増えたりで
私は気力と体力が奪われていった。
それは他の職員も同じだった。

正直、このタイミングで施設内販売会や見学会開催は無謀だと思ったが
上は決定を覆さなかった。やるしかないらしい。

 
施設内販売会や見学会のお知らせを保護者や利用者、近隣の方や関係者に配り
他の行事や販売会と平行して準備となった。
本来は手作りののぼり旗を用意する予定だったが、仕事が多忙過ぎて気がつけばその話はなかったことになっていた。
無理して作らずに市販やレンタルでもいいのでは、とかつて私が言ったこともなかったことになっていた。

 
「今日の夕方、販売会や見学会について話し合うから、真咲さんはそれまでに販売ディスプレイを考えておいてください。」

ある日、立て込んでいた仕事を行っていた私に上が言った。

 
今日!?二時間後!?

と内心思ったが
私は表情を変えずに「分かりました。」と言い
今やっていた仕事を後回しにした。

 
販売ディスプレイはざっくり考えていた。
だから新施設長にはその場で私の構想を話した。

 
こうした方がいい、あぁした方がいい、と言われ
内心、あなたの中でそこまで考えがまとまっているなら先に言えよ…と思ったが
私はやはり表情を変えずに「では、今の内容でまとめますね。」と伝え
用紙にディスプレイ案をまとめた。
そして夕方、正職員に構想を伝えた。

周りは異議なし、といった感じで特に変更点はなかった。

 
販売会や見学会前日、新施設長は急遽大掃除をしようと提案した。
大掃除は通常一時間くらい行うのだが、その日は二時間に及び、予定していた仕事は更にずれ込んだ。

 
利用者が帰ってから大掃除をすればいいのに、と内心思った。
利用者と一緒では二時間かけても細かな場所まで行き届かず、だが、あれをやってない、これをやってないと言われ、どうにもこうにもいかなかった。
重度利用者支援と掃除を同時に行うには限度がある。

結局二時間掃除をした後、利用者が帰ってからも掃除したし、当日朝も掃除となったが。

 
 
販売会や見学会当日は朝から晴れ渡り、いい天気だった。
天気に恵まれた。

 
その日は職員や利用者の休みが重なり、更にポスティング作業もやらなければならず、施設内は割と人がいなくて見学会としてどうなんだと思ったが
やるしかないので、やった。

 
朝、私は掃除後にリーダーと設営準備に取りかかった。
私やリーダーは早めにある程度準備しておきたい派だが、新施設長は利用者と準備にこだわったので、ざっくりと準備をしておいた。

その日の販売準備担当の利用者は販売にほとんど参加しない方で、しかも最重度利用者だった。
準備時間は普段の倍はかかるだろうが
職員は普段より少なめな上、販売準備時間が普段より少なめに設定されたため
それは無茶だと私は上に訴えたのだ。

 
でも結局は販売準備が予定まで終わったところで新施設長が現場にやってきて
販売準備を職員がやり過ぎだと言われたし
机やテント位置について変更を言ってきたため
私とリーダーでやり直しとなった。

 
いやいやいや、テント位置や机位置は図案にして事前に見せたじゃないか…
それは前日に言ってくれよ………

と、内心思ったし
リーダーとアイコンタクトで意思疎通したが
私達は「分かりました。」と言い、ただちに変更した。
これが社会人だ。

 
利用者が徐々に登所してきて、さぁ10分後から準備を始めよう、と言っていた矢先
トップバッターのお客様が来た。

なんと、イベント開始一時間前だった。

 
「真咲さん、対応!」

そう言われる前から、私は慌てて売り場まで走った。

 
まだ販売準備は30%も終わっていない。
かといってお客様に「一時間後からスタートですよ。」とは言えない。

 
お客様第一号は近隣の方で、福祉施設のこのような取り組みは地域活性化に繋がると労ってくれ
たくさん製品を買ってくださった。

 
今回は初の施設内販売会のため、来場者にプレゼントがあったが、プレゼント準備もまだできていなく、てんやわんや………

…なところで
第二号、第三号…のお客様が次々にやってきた。

 
利用者と販売準備をしている場合ではない上
一人ではさばききれない。
しかし、施設内も見学会をやっていたり、リーダーも面談が入ってしまい、ポスティング作業で外に出る利用者や職員もいて
現場は大混乱となった。

 
朝少しでも準備をしておいてまだよかった。
一から利用者と準備ではどうにもならなかった。

 
お客様と話しながら、またはお客様がいなくなった合間の時間に急ピッチで残りの準備をした。
同僚が一人ヘルプに入ってくれたが、最重度利用者支援をしつつのヘルプだったため、なかなかに大変だった。

 
想像以上に地域の方が来てくれた。
ありがたい限りだ。
想像以上に開店前から地域の方が来てくれた。
…ありがたいが、想定外すぎた。

 
先着順に来場者プレゼントを渡したが、プレゼント目的の方や見に来ただけの人は一人もいなく
全員が何かしらを買ってくれた。

たまたま通りがかったらイベントをやっていたので来た方、移転施設が気になって来た方が多かった。

 
地域の方の反応は上々で
次回も開催してほしいとの声もいただけた。

 
また、開催前に地域の方何名かが施設内販売会や見学会チラシを持って施設に来所し
地域の他イベントにてチラシを配ったり、告知をしてくれるとおっしゃってくれたり
特別支援学校のママ友グループLINEにそのチラシをアップしたり、声をかけてくれたりもした。

特別支援学校はママ友の繋がりが非常に強く、グループLINEにて情報を回していただけるのはありがたい。

 
その地域の方々と話をしたのは私だったのだが
当日その声をかけてくださった方や、情報を知って来てくださった方も来てくださり
ありがたいことこの上なかった。
挨拶やお礼ができてよかった。

 
販売担当、見学会担当、ポスティング作業担当は利用者・職員ともに時間差で交代となった。
当番表は作っていたが、開店前からお客様が来たり、利用者のやる気にはムラがあり…やりたがる人は自分の担当時間以外もやりたがり、やりたがらない人は担当時間より短めに販売を切り上げた……関係で
当番表は実質意味はなかった。

 
一番大変な販売準備兼初回接客(+最後の片づけ)は私が担当だったため
お客様が落ち着いたところで他職員や利用者とバトンタッチし
私は室内担当へと切り替わった。

 
室内では行事動画をテレビで流し、行事写真が壁いっぱいに飾られていた。

地域の方だけでなく、福祉関係者も販売で購入後は見学会にも参加してくれた。

 
私は販売片づけも担当だった為
イベント終わりかけに再び売り場に戻り
最後の接客兼片づけを行った。

 
やりたがりの利用者は大抵が雑であり
実際片づけを積極的に手伝った人らは雑だったが、それ以上は求められない。

片づけを手伝わなくても大丈夫、と言ってもやりたいのが利用者なのだ。
リスクの低い片づけを手伝ってもらい、怪我、破損に注意をするしかない。
非常に気を遣った。

 
室内に戻ると、部屋の写真は全て剥がされており、再び殺風景な部屋に戻っていた。
前の職場の施設はふんだんに写真を飾っていたから
見学会の為だけに当日写真を飾りまくり、終わり次第剥がすのは内心勿体ない気がした。
ただ、上には上の考えがあるのだし、私は余計なことは言わなかった。

 
予想外に売上は高く、非常にビッグリした。
今年第二位の売上だし、なんなら私が転職してから第二位の売上でさえあった。

 
気を良くした新施設長は施設内販売年一の開催予定を、今後は年三でやりたいと言い出し、内心ため息を吐いた。
年に何回もやっては売上は低迷するだろうし、そもそもが製品が足りない。

今年の秋はイベント販売を詰めこみ過ぎたり、売上がありすぎたり、個人的な注文依頼も相次ぎ
今在庫はギリギリなのだ。

年内の販売はディスプレイを変えたり、在庫がまだある(あまり売れ行きがよくない)製品を並べざるを得ないくらい追いこまれている。
私が入職してから一番在庫にゆとりがない。

 
でもとりあえずは初回が無事終わってよかった。
色々反省点や改善点も見られたが
売上もよかったし、地域の方もあたたかく受け入れてくれたし、普段販売にあまり関われない利用者が主役になれたのだから、目標は達成したといえるだろう。

 
施設内販売会と見学会の次の日も仕事な上
次の日さえ大きな行事が待っている。
ホッと一息吐いたらまた、次の戦いが待っている。
まさに人生とはこういうものだ。

壁を乗り越えたらまた次の壁が立ち塞がる。

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