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#エッセイ 隣の人が優しい

喫茶店で、テーブル席に座ろうとして、隣のテーブルとの幅が狭いのに、
ダウンジャケットの幅を考えていなかったもので
たかだが50センチの移動する途中にガッシャンという音
どんな時でも、ガッシャンは嫌な時間の始まりの合図

振り返ると、隣の席の営業マンのアイスコーヒーは無残な姿で
床で寝ている

謝り、床を掃除して、新しいアイスコーヒーを持ってきます
とやろうとしたけども
営業マンの方が、すぐ謝りを受け入れてくれて 颯爽と床掃除をはじめ
「新しいのを」という言葉を遮り「もう飲み終わってたんで」の一言

何度か、押し問答をしたけども、引くしかなく
頭を下げて、何も出来ずに、しばし固まる。

恥ずかしくて、恥ずかしくて、仕方ない。
喫茶店から、すぐ逃げてもいいけど、自分のアイスコーヒーは完全体

頭の中には、過去の似たような出来事の記憶がゲートの前で列をなしている
ゲートを開いたら、持っていかれて今日が終わる

営業マンは、気にしなくていいですよを滲ませて
真剣にパソコンをカタカタ 
喫茶店でやるレベルじゃないカタカタ 

逆サイドの女性二人組は、チラっとこっちを見たけど
特に気にしていませんよと、川崎フロンターレの話で盛り上がっている

あ~恥ずかしい ルヴァン杯見に行って泣いたって言ってたよ
あの決勝戦は面白いかったので、生で見られて羨ましいなぁと
一瞬思ったり、すぐ我に返って、恥ずかしいを満喫。

両サイドの方々の優しさが染みる。
世の中には、優しさってものがある。
損得ない関係での気遣い。
ダサいからこそ分かった優しさは、暖かくて鈍く痛い。

瞬間的な恥ずかしさも収まり、頭の中の行列も解散しそうだったので
喫茶店に来た本来の目的を果たすためにパソコンを開く

お話を書くために来たんです。
優しさに報いるためにも、お話を進めようと思ったけど
今、書いているお話のタイトルが「(仮)悪意三選」

今じゃないなと思い、そっと閉じる。
もしかしたら、今だったのかもしれない。
これを書きている自分の姿を想像したら、耐えれなかった。
数分前に超絶ダサいことしてしまったので、今は無理だ。

目的を失い
スマホをいじるって選択しもあったけど
ダサさをすぐに解毒したと思われるのも恥ずかしいので
書き終わったものを見直す。

見直している間に、営業マンも女性2人組も席を立つ。

見直していたら、自分の本なのに、涙腺が緩む
大部分の理由は、状況ですが 登場自分物が優しかった。

見直してたり書き換えたりしている間に、ダサさの解毒も済んでていて
本来の目的ではないけど、サクサク進んだので

氷が解け、ほぼ水のアイスコーヒーを飲み干す頃には
満足感に溢れてた。

あの営業マンの方の契約が上手く行きますように
女性二人組が楽しめるように、川崎フロンターレが優勝しますように
自分っぽいダサいを今後もするだろうけど、数が減りますように


#エッセイ #日記 #営業マン #フロンターレ





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