舞台少年陰陽師レヴュー

今週末の観劇感想二本目。

築地ブディストホールで『少年陰陽師 現代編・遠の眠りのみな目覚め』
原作・結城光流、脚本・藤原良、演出・田中優樹。

原作は角川ビーンズ文庫で何十冊も出版されている超人気小説。
もともとの小説では平安時代を舞台にしたもののスピンオフシリーズ現代編の舞台化。

どっちにしても原作を読んだことがなかったので、僕にとっては初体験のストーリーでした。

主人公は安倍晴明の孫の中学生、少年陰陽師安倍昌浩。
この主人公が人間の姿をしている守護神的な十二神将とともに、バケモノ退治をしていくという物語。

いまや2・5次元演劇と言われるようにジャンルのお芝居です。(ですよね?)


話は、横にそれますが、
僕は個人的に、この『2・5次元』というジャンル分けには、少し抵抗を感じています。
うまいレッテルだとは思いますけど、なんか違和感を感じるんですよね。
マンガ原作やアニメ原作の舞台化作品が、ぜんぶ2・5次元という言い方にひっくくられてしまうのが。

でも、そういう分類をしたほうが、お客さんたちに受け入れられやすいってことなんでしょう。
『2・5次元』っていう言葉には「なんだそれっ!?」という引きがありますからね。


舞台少年陰陽師の話しに戻ります。

今回、面白いなと感じたことの一つは、妖怪や妖術などの表現を、アンサンブルダンサーたちの動きによって表現していたことでした。

いつからか舞台の特殊効果として、プロジェクションマッピングの映像を使うのが当たり前のようになっていますが、この作品ではそういう特殊効果にあまり頼らずに、ダンサーたちの動きでそれを見せようとしていました。
アンサンブルの人たちは、ものすごく体力を使うし、連携した動きをしなければならないので大変だったと思うけど、見応えがありました。

いままでこういう表現を見たことが無いわけではなかったけど、まさか陰陽師の妖怪とのバトルがこういう形になるとは驚きました。

出演者にたくさん知り合いがいました。

サトシの声でみなさんご存じの松本梨香をはじめとして、僕の舞台作品などに出演してくれた橘咲希、星達也、松田翼、朝比奈るう、服部武雄、黒木淳史、阿部悠真、高橋風香、堀切紫、長谷川小夏、大丸美鈴、吉田隆大、中野亜美、小見山雄。
そして二十代からアニメの現場などで良く一緒になった声優の小杉十郎太。

こんなに知り合いが出ている舞台も珍しいです。

でも、けっして身内贔屓ではなく、一人の観客として舞台は見させていただきました。

安倍晴明役を、能楽師の和泉元彌さんが演じていて、圧倒的な存在感を見せてくれていました。
やはり伝統芸能の世界で幼い頃から鍛えられている声の力ってすごいなって思いました。

もちろん声のプロである、松本梨香や小杉十郎太の声の力もすごいんだけど、またそれとは別種の威力を感じました。

俳優にとって、声のパワーって、すごく大きいと思います。
この声のプロフェッショナルの人たちと一緒に舞台を経験できた若い俳優さんたちには、大きな刺激となったことでしょう。
それを感じて、もっと自分の声を鍛えることに熱心になって欲しいなと思います。

まとめですが、
大河ドラマ主演の能楽師から、日本を代表する声優、そしてアイドルから、2・5次元舞台のイケメンが、なんの違和感もなく舞台の上で融合していたのに感心させられました。

さまざまなジャンルやフィールドで、それぞれに活動している人たちが、一つの作品で奇跡のように融合する。
こういう珍しいものを見ることができるから、舞台って、演劇っていいなぁと思ったしだいです。


終演後に演出の田中さんに、原作者の結城光流さんを紹介していただきました。
とても優しそうな女性の方でした。
もっとお話をして、爆発的に売れる小説の書き方を教わりたかったなぁ。(笑い)
原作小説読ませていただきます。


今回、脚本家として思ったのは、この作品のように登場キャラクターが多い場合は、観客にキャラクターをなじませる工夫が必要だということ。
自分がもしこのような原作作品の脚本を書くことになったら、どういうことをするべきなのかというのを考えながら見てました。
以前に原作物をやったときの反省もしました。

作品に始めて触れる観客にとっては、キャラクターの名前とかなじみがないんで、登場するたびに名前を呼んでくれるのがありがたいんですよね。
そして名前の重要性。
名前って、もうキャラクターそのものだったりしますから。

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