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『本好きの下克上』を聴き始めた。

オーディブルで『本好きの下剋上』というのを聴き始めた。
作・香月美夜

オーディブルの会員になってると、月に一個コインをもらえて好きな本を買えるのだが、それとは別にゼロコインで買える本が一冊ある。
今月の無料で読める(聴ける)のが、このタイトルだったのだ。

自分の好みの傾向とは違う本なので、タダじゃなかったら自分では買わないだろうと思う。
でも聴き始めたら、意外にすんなりと続いてる。

声優さんの声は聞きやすくて耳に心地いい。

驚いたのは、この小説は、僕の抱いている物語のセオリーからは、大きくかけ離れているものだったからだ。

とにかく展開しないのだ。
主人公が転生した異世界で、たんたんと日常生活を続けていく。
もちろんその日常は、この現実世界とはまったく違う非日常なわけだけど、主人公がそこで体験することが、実に淡々と描かれていくだけなのだ。

事件はほとんど起きない。
邪悪な怪物や、敵も出てこない。
日常生活が主人公にとってはトラブルではあるのだが。

展開がものすごくゆったりとしているのだ。

これは僕のように脚本の仕事などをしていて、展開していくのが当たり前のストーリーテリングばかりをしてきた人間にとっては、驚くべきことだった。

主人公の異世界での日常が、まるで日記のように描かれていくだけなのである。
(これを書いてる時点で、まだ一巻目の途中を読んでいるので、これから大きな展開があるのかもしれないですけど)

大事件は起きなくても、異世界の日常生活を描くだけで、充分読ませてくれます。(聴いてるんですけど)

これは僕の知らないタイプの作品でした。

作品の特徴は、徹底して主人公の視点で、目の前で起きることを描き、それについて感じることを描いていくことで、読者の目線を主人公に合わせることを徹底してやっていることだと思います。
ほぼ1巻全部をこれに費やしていると言っても過言ではないでしょう。

だからこそ主人公が好きになれるし、主人公の体験することを自分のことのように感じることができるので、ここに書かれている主人公の日記を、読者が自分の日記として、読んでいくことを可能にしているのです。

それがおそらくヒットしている要因ではないかと思いました。

と、ここまで書いて、ちょっとウィキペデアで調べてみたら、この作品、類型400万部以上も出ていて、アニメ化もされている、ビッグタイトルでした。
そういえば、どこかでタイトル名をどこかで聞いたことがあったような気もしていました。

もともとはウェブで発表されていた小説だということ。
ウェブで毎日連載されてのだという。

作家がウェブで作品を発表するようになって生まれたニュータイプの物語だと思います。

小説のスタイルや物語の作りも、日々変化していっているのだと実感しました。


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