johnny

ウェブライターとして活動し、普段は恋愛のコラムを執筆しています。小説家になるのが夢で、…

johnny

ウェブライターとして活動し、普段は恋愛のコラムを執筆しています。小説家になるのが夢で、新人賞の2次審査を通過した経験まではあるものの、デビューまでは届かず。そこで、noteにて長編小説を公開しています。多くの人に読んで頂けたら幸いです。

最近の記事

  • 固定された記事

追憶の咲子〜峰橋志夏〜

 水平線の向こう側には、見た事もない理不尽な世界があるんだよ。だから僕達はこの世界に生まれ育ったことにもっと感謝しなければならない。   父はいつも海の向こうのずっと遠くを見ながら決まってそう呟いた。僕はその度に想像した。海の向こう側に存在する漠然とした理不尽を。  例えば。犬が嫌いだ、と言っていたはずの祖母が、俺のわがままで飼うことになった芝犬に誰も居ない隙に人知れずバナナを与えていた事を。そんな祖母を嫌っていた僕の母が、祖母の葬式で見せた涙を。  そして、君を虐めた奴を、

    • 第一章「泡沫」峰橋志夏

       初めて咲子が僕の家に来たのは、小学校2年生の夏だった。玄関を開けると、薄手のワンピースに麦わら帽子を被った君が柔らかな笑みを浮かべ立っていた。「遊ぼう」そう言って君は真っ白な歯を見せて笑った。君はまるで天使そのもので、僕は導かれる様に、極自然に君に恋をした。  僕等は同じ小学校のクラスメイトで、登下校の方向が同じだった事もあり、よく行動を共にした。咲子は幼い頃からとても美しい容姿をしていて、髪は長く肌の色は透き通る様な白さで、目は大きくくっきりとした二重瞼、唇は薄く、シャー

      • 追憶の咲子〜小出雅也(こいでまさや)〜

         始まりはいつもそうだった。雨が降っていた気がする。絶望の始まりを迎えたところで、この世界は終わる事を知らない。  例え大切なものが僕の手の届く範囲からポツリと消え失せたとしても、世界は絶望と共に残酷にも続くのだ。まるで腐って悪臭を放ちながら溶けていく果実のような惨めな人生だ。それでも続けなければならない。君がまた僕の前に現れる可能性があるのなら。  君はこの世界から突然フェードアウトしていったね。もしも二度と君に会えないというのなら、僕はこんなにも希望の抱けない人生などすぐ

      • 固定された記事

      追憶の咲子〜峰橋志夏〜