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2022/08/24【コソボとセルビア】ウクライナ紛争とつながる地で緊張高まる【世界情勢】#86

今回は、ロシアに関連する話題で、今バルカン半島のコソボとセルビアで緊張が高まっており、アメリカで大きく注目されています。このコソボとセルビアの緊張がなぜ注目を集めるのか、について、お話をしたいと思います。

コソボとセルビア。事の発端

事の発端は、コソボ政府が7月に、コソボ北部に住むセルビア系の住民にコソボが発行する車のナンバープレートの使用を義務付けると発表し、抵抗したセルビア系住民をコソボ警察が抑圧したのですが、これにセルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領が敏感に反応し、一気に緊張が高まりました。今はNATOの平和維持軍が監視に当たることで落ち着いていますが、未だ予断を許さない状況にあります。

コソボとセルビアの歴史


少し過去の歴史を振り返ると、コソボとセルビアは共に旧ユーゴスラビア共和国の一部でしたが、1990年代に非常に激しい内戦の末に、アメリカ主導の軍事介入、いわゆるコソボ紛争でアメリカ軍を中心としたNATO軍がセルビアを空爆して、コソボからセルビア軍を撤退させて落ち着かせた経緯があります。その後もアメリカはコソボを支援し続けて欧州もそれに倣う中で、2008年にセルビアから一方的に独立を宣言しますが、セルビアやロシアなどは未だにコソボを独立国家として認めていません。そして今でもコソボとセルビアは深い対立関係にあります。
ここで出て来たのがロシアです。元々ロシアはセルビアと非常に関係が深く、民族もスラブ系で同一、宗教もセルビア正教とロシア正教は非常に近く、経済的にも軍事的にもセルビアは歴史的にロシアの支援を大きく受けています。
そして、2008年にコソボがセルビアから独立を宣言した際に、ロシアは強く反発し、直後にロシア系住民の住むグルジアに侵攻し実効支配、その後、2014年にウクライナのクリミア半島に侵攻して実効支配して今現在のウクライナ侵略に繋がるという、今の流れがここから始まっている因縁の地でもあります。

ロシアが狙っている事


今ロシアが一番狙っているのは、欧州の不安定化です。もしここで、セルビアがコソボに侵攻するなどの事態が起きた場合、欧米のウクライナ支援、ロシアに集中する経済制裁を少しでも分散させたいロシアに取っては渡りに船となりますので、欧州もそうならない様相当の警戒感で当たっていて、今コソボにはNATO軍が4000人駐留していますが、NATOストルテンベルグ事務総長はこれ以上緊張が高まれば、このNATO軍を増強すると言っていますし、ドイツやオーストリアなども、セルビア政府に相当圧力を掛けています。
セルビアとしては、ロシア依存度も高い一方でEUへの経済依存度も高い現状で、EUに加盟したい思惑もありつつ、今がどちらに転ぶかの瀬戸際と言って良い状況です。

アメリカとしての優先事項


 アメリカでは、今までの経緯でコソボを強力に支援してきたのはアメリカであって、アメリカが主体的に介入しない限りことは収まらない、ロシアの影響力、そして中国もセルビア狙っていますが、これらを押さえるためにはアメリカの介入が必要だ、という声はアメリカ国内であがりつつあります。バイデン大統領は国内外問題山積で今それどころでは無いのは百も承知ですが、このコソボセルビア問題は今後の欧州の行く末を決める重要案件です。中国もアメリカの出方の分析という意味では注目しているに違いありませんので、バイデン政権が優先順位を上げて積極的に介入して、あわよくばセルビアを西側陣営に引き込む強かさに期待したいと思います。

今回の内容を動画で見たい方はこちら↓


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