銃・病原菌・鉄(上巻)、著:ジャレド・ダイヤモンド
冒頭、このような問いで始まる本書。
1万3000年にわたる人類史から解説されていく。
現代社会の問題の根本に関わる問いでであり、種としての人類について学ぶ1冊。
この書籍を読んで、特に印象的だった部分は3点。
共通の祖先を持つ農耕民族による狩猟採集民族の虐殺
一つ目は、「第2章_平和の民と戦う民の分かれ道」で述べられている、共通の祖先から枝分かれしたモリオリ族とマオリ族の衝突。
モリオリ族は、狩猟採集民族であり、揉め事は穏やかな方法で解決するという伝統を持っていた。
マオリ族は、農耕民族となり技術と政治機構を複雑化させていき、1835年12月、モリオリ族を一方的に虐殺した。
共通の祖先を持つそれぞれの民が、正反対の方に進化した結果、このような帰結を迎えた。
ジャレドダイアモンドは、「この出来事は、小規模で短期間であってが、環境が人類社会に及ぼす影響についての自然実験だったといえる」と記している。
食糧生産がもたらしたコト
二つ目は、「第5章_もたるものと持たざるものの歴史」で述べられている、食料生産が果たしてきた侵略のプロセスについて。
食料生産が可能となると、人口を増やすことが可能となる。また、「技術も発達していき、銃器や鉄鋼製造の技術を発達させ、各種疾病に対する免疫を発達させる過程へと歩み出した。この一歩の差が持てるものと持たざる者を誕生させ、その後の歴史における両者間の絶えざる衝突につながっている」とある。
なお、病原菌については第11章で述べられているのだが、とても興味深いのは、ヨーロッパからアメリカ大陸へ病原菌が渡り、原住民が集団感染を起こし死亡することで、結果的に侵略に繋がっていくのだが、その逆がほとんどないことである。そして、そのような病原菌をまさに生物兵器のように、当時の侵略者は利用していたことにも驚いた。
大陸の形状と人類の進化/変化
三つ目は、「第10章_大陸の広がる方向と住民の運命」で述べられている、大陸の形状と進化の関係性。
経度と緯度で説明されるが、ユーラシア大陸は左右に長く、アメリカ大陸やアフリカ大陸は縦に長い。
南北の差は、気候の大きな違いを生むが、その違いが少なければ気候の違いは少なくなる。
気候が同じであれば、食糧生産や家畜、また私たち人間も住みやすい。その結果、食料生産や技術は、東西に広がって行きやすい。
日本列島を見ても、東西と南北の違いを考えると当てはまる部分も多い。
ただ、注意が必要なのは、単純に広がるから良いというわけでもない。
本書を読んで生まれた、新たな問い
マザーテレサは、「愛の関心は無関心」と言ったが、それは前提が異なる人についても当てはまるのだろうか?
特に印象に残ったのは、人類が持つ侵略性と、それがどのような流れを持って進んでいったのかということ。そして、そもそもの地球環境が激変していくので、この分野の重要性が極めて高くなっていくが、同様に前提が異なる人々とどのように取り組んでいけるのだろうか。
銃・病原菌・鉄(下巻)に続く(たぶん)
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