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東日本大震災─アートにできることはなんだろう

卒業制作の記事を書いてから早くも2ヶ月半が過ぎてしまいました。

お久しぶりです。あれから私は大学院に進学し、学部時代の作品の想いを引き継いだ作品制作を始めています。今回はその作品について私が考えていることを記事にしたいと思います。

文末に作品制作のための調査として簡単なアンケートを用意していますので、そちらもご協力いただけると幸いです。

まずは大学院での研究の土台となっている学部時代の2つの作品を紹介させてください。


8月6日、ヒロシマ。

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1945年8月6日午前8時15分。その瞬間、あまりにも多くの命が消え去りました。その瞬間までそこで生きていた人々がいたことを忘れてはいないでしょうか。

この作品は8月6日に広島に起きた悲劇を日本に忘れさせたくないと思い制作した作品です。

私は2歳から18歳までを広島の街で過ごしました。広島では8月6日午前8時15分になるとほぼ全ての人が動きを止め、原爆で亡くなった方に1分間の黙祷を捧げます。もちろん私も毎年亡くなった方を想いながら1分間の黙祷をしてきました。原子爆弾を経験した唯一の国として、これが「日本人の」当たり前だとずっと思っていました。

しかし18歳で上京した私は東京に暮らす人たちの「戦争と広島」についての意識の低さにショックを受けました。8時15分になっても黙祷をする人は見受けられず、それどころか「8月6日」が何を意味するかわからない人までいました。

私はこの時、広島に原子爆弾が落ち多くの人が亡くなった歴史がすでに忘れられ風化し始めていることを始めて知りました。

この経験がこの作品を作るきっかけになりました。


卒業制作「Phantom」

倉本大豪_01-2

この作品は学部時代の卒業制作として制作したもので、3年前に亡くした親友の消えていく記憶をそのまま作品としました。

以前記事にしているのでここではあまり多くは語りませんが、この作品も「8月6日、ヒロシマ。」と同様に風化していく自分の記憶に対し、アート作品として一つの答えを出したものとなっています。

以上の2つの作品を引き継ぎ、私は大学院の研究を始めました。


震災下におけるアートの意義

学部時代から私は「日本には風化させてはならない記憶がまだたくさんある」と感じていました。その中でもより強く感じていたのは東日本大震災の記憶です。この「東日本大震災の記憶」を題材に作品を作りたい、そして芸術を志す者として、アートを通して東日本大震災が抱える問題と対峙したい、と漠然と考えていました。

しかし、このような震災下(二次被害のことや、復興状況などを考えると今でも震災下と言っても過言ではない)において震災を題材にしたアート作品を作ることに対して自分の中で葛藤がありました。

「震災を作品作りのためのネタにしているのではないか」

「アート作品を作ることは自己満足でしかないのではないだろうか」

「被災されて今まさに苦しんでいる方たちにとってアートはなんの足しにもならないのではないか」

私はまずこの葛藤に答えを出すことから始めました。


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アートにできることはなんだろう

この未だに課題が山積みである震災下において、アートが果たせる役割とは一体なんなのでしょうか。

今なお震災の二次被害に苦しむ方、家族や友人を亡くした方のために私はどんな作品を作ることができるのでしょうか。

やはり私が唯一できることは「アートを通して記憶を形として残すこと」だけなのです。

私は、今まで行ってきた「消えつつある記憶を可視化し、アート作品として具現化すること」を通して東日本大震災の記憶を後世に伝えていくことで、少しでも被災地や被災され今なお苦しまれている方の力になりたいと考えています。

あんなにも大きな被害を残し、今でもなおその二次被害に苦しんでいる人たちがいるにも関わらず、私たちは心からそのことをを想う時間を持てていますか。「日本が経験した災害」として認識できていますか。そしてその記憶を語り継ぐことはできていますか。

もちろん、アートはすぐさま社会を大きく変化させることはできません。しかし「ただ記憶しておくこと」にはできないことがアートにはできます。

それは、見ることができ、触ることができ、いつでもそこに存在し続けることです。そこでは共感や反発を持った意見が生まれ、私たちがこの歴史に対して何を感じ、何を思ったかをいつも考えさせます。

これが、僕の考えるアートのあり方であり、東日本大震災を後世に残すための作品が持つ意義です。

それはきっと、被災された方や被災地、震災を経験していない人やこれから誕生する震災を知らない世代に寄り添うものになると信じています。



東日本大震災に関する作品制作にあたり、様々な立場の方から多様なご意見をいただきたいと思っています。震災を体験された方、体験されていない方関わらずアンケートにご協力いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。










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