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酒蔵見学レポート:神奈川県 熊澤酒造

酒小町の企画に参加し、熊澤醸造の見学に行ってきました。
今回はその様子をレポートします。

■イベント概要

今回は自身が所属する酒小町での企画に乗っかった形です。

なんと、こちらに参加しているメンバーに、
・元々熊澤酒造にてアルバイトをしていた人
・熊澤酒造でのビールの醸造責任者

という面々がいることで実現したこの企画。
かねがね、アンバサダー企画などでよく目にする熊澤酒造。
熊澤酒造さんは先日のかながわ13蔵元秋の感謝祭にも出展されてました。

日本酒の「天青」から入るか、ビールの「湘南ビール」から入るかで、印象が異なるのかもしれない熊澤酒造。
貴重な機会を得られた今回、余すことなく楽しみたいと思います。

■現地の様子、雰囲気

蔵の最寄り駅である神奈川県にある香川駅へ向かいます。

ノンアルです


優雅にグリーン車に乗車。
茅ヶ崎駅で乗り換えます。

発車メロディがサザンオールスターズの希望の轍でした。流石。

香川駅に到着。神奈川県だけど香川です。

駅から歩いて熊澤酒造までいきます。

熊澤酒造内には酒造りのスペースのほか、レストラン、パン屋さん、スイーツ、ギャラリー・アンティーク家具の販売なども行われています。
大正時代の建物や古民家を移築、再利用したものが多数。
緑が多い中に佇む雰囲気は趣がでますね!

◾️ビール醸造場内

ビールの醸造場を案内いただきました。

こちらはビールの原料であるモルトの保管場所。
ドイツのバンベルクにあるワイヤマン社から仕入れているとのこと。
こちらの会社、モルトが高品質で種類も豊富なため、クラフトビールを作る中ではメジャーな取引先だそうです。
一袋で25kgになります。
モルトも湿度によって影響をうけますので、空調管理しています。
一回のビールの仕込みは2000リットル(=330mlのビンにすると約6000本)で、それに使われるモルト400kg分だそう。
驚いたのは、これをかつては手作業で運んでいたとのこと!
結果として腰を痛めたりするスタッフも多かったようで、会社として環境整備に動き、ハンドフォークの導入、管理スペースの増築・改装などが行われたそうです。

モルトを原料処理する工程である粉砕、煮沸、糖化をするスペースに移ります。
モルトを機械に入れて粉砕し、粉砕されたモルトはパイプを移動してタンクに移動していきます。
これらのモルトを移動させるのも、かつては手作業だったとのこと。かなりの肉体労働、重労働。
これに関連し、大手のビール会社が視察に来た際に、労働環境の衛生管理の話題になったそうです。

お湯とモルトを混ぜて糖化させた後、液体と、個体をわけます。液体をまた戻し、発酵にむけてまた作業していきます。

液体と個体をわけるために底に細かいスリットが入っている

煮沸によって殺菌・タンパク質凝固をしつつ、ここで一度ホップを入れる
ホップを入れて煮込めば煮込むほど苦味がでる一方、香りは飛んでしまいます。この辺りのバランスがビール造りのキモでしょうか。
ちなみにモルトのしぼりかすは養鶏の餌になるそうですよ!

遠心力で入れたホップを取り出し、プレートヒーターで熱をとり、酵母を入れて発酵タンクに移します。
原料処理→発酵タンクまでは1日の作業でたどりつくそうです。
ビールにはラガー発酵とエール発酵と2つありますが、エール発酵の方が発酵に必要な日数が少ないため、その分いろいろなビールを作ることができる=回転させられるとのこと。確かに小ロットをたくさん回して作るスタイルが多いクラフトビールでは都合がよさそうです。
なお、酵母は使い回せるそうです。10回くらいは再利用するとのこと。

発酵に使うタンクの大きいものは4000リットルになります。
使っているタンクには常陸野ネストビールさんから購入したものもあるとか。
聞けば、クラフトビールの業界は横のつながりも多く、情報交換も盛んだとのこと。かつての地ビールブームから一度落ち込んだ時代があり、それを機に「業界全体を盛り上げていこう」という意識があるそうです。なるほど、そちらの方が建設的ですよね。

おおきなはしご

発酵中にホップを追加するドライホッピング製法をする時には、ハシゴを使ってタンクの上に登る必要があります。

湘南ビールとしての定番は6種類で、年間ではおよそ20種類近くのビールを作っています。
フルーツを副原料として入れるビールもこちらで作業されています。
特に「もも」を使ったこのビールは、大人気なのですが、作業量がかなり大変だそうです。

コロナの時に人が足らず、社長さん自らが製造現場に立ち、「俺は、ピーチエールの製造料を二倍にしろとは、もう絶対言わない」とお話しされたと。
それだけ大変だったのですね…。

樽につけているビールもあります。
こちらの樽は、イチローズモルトのバーボンバレルだそう!
イチローズモルトといえば、国内のウイスキーでもかなり人気を誇るもの。まさかそんな夢のようなコラボだったとは。
空調下で管理し1年くらい樽に入れてから出荷しているそうです。

熊澤酒造ではホップも自社で製造しています。
使うホップはおよそ10種類ほど。
同時に使うのは2−3種類で、1種類のホップで作るシングルホップのビールもあります。

ビールに使われる瓶は、熊澤酒造のオリジナル特注瓶。3点にシールがすでに貼られた状態で入荷します。
黒・茶色瓶の方が保存・品質維持の面では優れているところをなぜ緑か。それは、単なる社長のイメージだそう。(社長、結構自由ですね。)
今後、映画監督の小津安二郎さんのオリジナルラベルのもの今後発売予定です。 

恥ずかしながら僕はこの方の映画は見たことがありません。これを機に見てみましょうか。
瓶詰め機では一回瓶内を真空にしてから充填する方法がとられており、1時間で1000本瓶詰めが可能。
かつての手作業だった時には1時間でできても100本くらいだったそうですから、ここにも機械化の恩恵がみられます。
なお、今後、瓶から缶に変えていく計画があるそうです!もしかしたら瓶時代の湘南ビールを飲んだことがある、というのが貴重な経験になるかもしれませんね。

◾️日本酒の蔵内

お酒の名前の由来などはホームページにも載っていますね。

「天青」とは、中国の故事にある「雨過天青雲破処」という言葉からとったもの。
4種類の天青には、雨過天青の他に、「雨上がりの山の頂と交わる青空」を意味する千峰、「木々の緑と交わる青空」の吟望、「風そよぐ潤った大地と交わる青空」の風露、がございます。

公式サイトより

「雨過天青雲破処」は、「うかてんせい くもやぶれるところ」と読み、“雨の過ぎ去った後の雲の切れ間から見える空の色”という意味になります。
ここは質問も多いでしょうし、蔵としてのコンセプトをブレないようにする意味もあるのかもしれません。

茅ヶ崎の北側は結構な農地だそうです。
日本酒造りに使う酒米も自社で行っており、使用しているお米の3割くらいは自社米。「かっぱ」シリーズの名前の日本酒になっています。
現在、新しい精米器を入れるための工事が始まっており、足場が組まれたばかりでした。

来週、9月最終週から10月に入る頃仕込みがスタートします。
お米は山田錦と五百万石がメイン。そのほか、雄町、愛山、酒未来なども使用。
お水は丹沢山系の中硬水。ビールも同じ水で仕込んでいますが、日本酒の方が濾過などをシビアにする必要があるそうです。
ビールは煮沸の工程がありますからそこで殺菌されますしね。
製造量は600石ほどで、スタッフは5人体制。
蔵人チャレンジと呼ばれる取り組みを行っており、それでトップをとると4月の蔵フェスでお披露目されます。社内コンペ、的なやつですね。
目指す酒造りは食中酒だそう。

動線がかなりコンパクトになるようにまとまっていました。

酒造内には防空壕があります。年間でも気温が20℃程度で固定されていることで、熟成させるのにはぴったりです。
こちらでは日本酒や酒粕、ワイン樽を入れたビールなどが熟成させています

なお、ジンとウイスキーも手がけています。蒸留機はジン、ウイスキーで共有で使用です。
ジンは酒粕を再発酵、蒸留させ、ジュニパーベリーを入れて作成。日本酒部門で管轄。一方でウイスキーはビール部門で管轄しているそうです。最初に作ったウイスキーが3年の熟成期間を経て今年にはリリースされるそうです。
天使の分前といわれる自然揮発分は、ヨーロッパだと一般的には1年で3%程度ですが、日本だと気温や湿度の関係で5-8%にもなります。あまり長い期間樽熟成させるとどんどん少なくなってしまうので、ほどほどなタイミングで出荷になります。

■飲んだお酒リスト

蔵見学の後、蔵内のレストランにてお食事、同時にビールと日本酒もいただきました。

湘南ビール ピルスナー
湘南ビール シュバルツ
湘南ビール ゴールデンエール
湘南ビール IPAアメリカンスタイル
湘南ビール ヘイジーIPA
天青 風露 特別本醸造
天青 吟望 特別純米
天青 かっぱの純米吟醸

なんとお酒は飲み放題!
しかも、大人の力が働きメニューにないヘイジーIPAが追加されるというサプライズ!
美味しくいただきました。

■終わりに

お土産に買ったのは、
・日本酒 曙光(しょこう) 吟醸酒
・クラフトジン レモングラス
・ソーセージ チョリソー
・ソーセージ 塩麹
・モルトを入れていた袋を再利用したエコバック

熊澤酒造さんの中でもなかなかお目にかかれない銘柄名の曙光。
ちょうどジンのストックが途切れたのと限定品ということでレモングラスの方を。
ソーセージはレストランでいただいておいしかったので、間違いないチョリソーと、面白そうだったので塩麹のものを。
エコバックはリユースの精神と防水・汚れなどに強い生地、そして軽い、と使い勝手がよさそうです。

ではでは。

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