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大人の修学旅行(4)

次男が大阪で行われるボカロイベントに行きたいというので、宿泊と新幹線の付き添いでついてきたものの、やることがない!行き当たりばったりで初日は太陽の塔と湊川神社、神戸ラーメン、大阪でジャズライブ。2日目は朝から奈良の法隆寺、興福寺。東大寺、秋篠寺を参拝。午後は一路京都へ。

(あらすじ)

 初日は太陽の塔で現代芸術、自分が敬愛する岡本太郎の作品に触れ、その足で神戸の湊川神社に行き、自分の先祖とルーツについて考える。そして夜は友人のライブを聴きに行き、生の音楽を鑑賞する。二日目は奈良の寺院、日本で最も古い、人の手で作ったものを間近に感じ、そして一路京都に向かい、今度は日本の伝統文化である着物に触れる。
 なんとも、行き当たりばったりにしては、まさに修学旅行といったような内容になってきた。

 奈良からの近鉄特急は早い。あっという間に京都に到着した。

乗ってきた近鉄特急の車両

 奈良や大阪では「赤い自転車」いわゆる乗り捨てできるシティシェアサイクルが横浜と同じように使えるが、ここ京都ではそれが忽然と姿を消し、一つも走っていない。なぜだ。予想するに、昔からあるレンタサイクル屋との競合があるんだと思う。しかしこういうレンタサイクルは大概前日までに予約をしないと使えないので、自分のような行き当たりばったり旅には不向きだ。
 京都こそ自転車で移動したいところだが、ここは諦めてまずは地下鉄と徒歩を駆使しようと思う。
 しかし、よく考えたら奈良の駅で朝ご飯のヴィドフランスを食べて以来何も食べていないので、さすがにお腹が空いている。京都の地下街を歩き回り、オムライス屋さん「北極星」に入る。おいしかった。

 お目当ての着物やさんは2件ある。まず1件目は、「戻橋」という、中古着物が大変充実していて面白い掘り出し物が多い店。これは、インスタで同好の方から教えていただいた。地図で見ると、タテ位置では御所のはずれの辺りなので、とりあえずそこの近くの駅まで地下鉄で移動する。
 駅から「戻橋」までは、4ブロックほどそこから西に移動したところにあるのだが、いやこれは見誤っていた。京都の1ブロックは横浜の感覚よりも相当に大きい。時刻は3時ごろ、灼熱の太陽の中、半端ない汗でどんどん体力が奪われていく。店にたどり着く前に限界寸前になってしまい、近くにあった喫茶店に入る。
 「喫茶ゾウ」さん。クリームソーダを頼む。生き返る。心の底から生き返る。有名店らしく、お客さんがひっきりなしだった。

ゾウさんモチーフのグッズなんかも売っていました

 息を吹き返し、戻橋へ。お店はなんともミステリアスで不思議な空間。自分は五百円均一の古着コーナーで、薄手の単衣の着物を買う。なにしろ点数がめちゃくちゃ多いので、結構長居して物色した。いや楽しい。さすが京都である。

「戻橋」さんの階段を見上げたところ。雰囲気が伝わると思います。

 次に向かうお目当てのお店は「和次元 滴や(https://www.shizukuya.com)」さん。ここは、袴スタイルのモダンタイプの着物を製作販売しているお店だ。ネットで見つけて気になっていて、京都に行ったら是非実物を拝見しようと思っていた。
 このお店は戻橋からだと御所を挟んで反対側、鴨川の方にある。もう学んだ。歩いていくのは不可能だ。そしてここ京都で便利だったのはタクシーアプリである。タクシーアプリGOが京都でも同じように使えるのだ。難なくタクシーの手配に成功し、滴やさんに向かう。

 と言っても、予約も何にもしていないので(なにしろ今日行き先を決めているし)、突然の訪問で大丈夫だろうか…と思いながらお店へ。
 お店は古民家の様相で、いわゆるショーウインドウなどがあるタイプのお店ではないので、やや緊張しながら、こんにちはと玄関から声をかけると、ご主人が出てきてくださった。
 急な訪問にも関わらず親切に応対してくれて、色々と説明を聞きながら着物を出してもらう。
 ネットで見ていると、かなりギラギラな現代風着物な感じの仕上がりに見えたが、実物はもっと落ち着いた色合い風合いで、とても着やすそうだ。やはり見に来てみるものである。一気に気に入ってしまった。
 着物を見ながら話をしていて、カモフラージュ柄の袴の説明をご主人がしてくれている時に、
 「こういうキン肉マンソルジャーみたいな感じのもあって。。」
 というので、ん?と一瞬止まる。
 「えっ、それ言ったら今自分ブロッケンJr.のTシャツ着てます!」
 店主も、ん?と一瞬止まる。
 顔を見合わせる。
 なんだろう、一気に分かり合えるこの感じ。完全に同世代じゃないか。
 そう、キン肉マンは意外とわかる世代幅が少ないのだ。
 そのまま、しばしキン消しで遊んだ小学生時代のことや、自分が思うキン肉マン名勝負名シーンについて語りあう。
 よくよく聞いたら、同世代どころか学校の学年が全く同じだということがわかってさらに親近感が増す。
 「岡島さんは東京から来られたんですか?」とご主人が聞くので
 「実際は横浜からですね」というと、
 「私、実は横浜出身なんです」とおっしゃるので驚いた。
 「えっ横浜のどの辺ですか」「鶴見です」「近い!どこ中ですか」「○○中です」「隣じゃないですか!ぼく○○中です。え、じゃあ○○(友達の名前)って知ってます??」
 こんなことあるだろうか。
 京都で、共通の知人がいるような横浜の同級生に、よりにもよって着物屋さんのお客と店主として遭遇することなど、いやそんなことあるだろうか。
 そこからは完全に打ち解け、着物のことから歴史のことから、横浜の話やら何やら大層盛り上がって喋り通し、いや楽しかった。2時間近くお邪魔してたんじゃないだろうか。
 結局そのソルジャー柄の一式を購入した。値段は自分が着物を買う値段としては高い方だったが(普段中古で1着数千円とかの世界で買っているので)、物としては非常に確かなもので、ご主人との出会いも含めてこれは訪れてよかったなぁと、大変に満足している。

店先で試着

 お店を出て、そろそろ暗くなってきたので、ごはんを食べようととりあえず四条河原町まで出る(店主に、「大阪に帰るなら何に乗るのがいいか」と聞いたところ、京都河原町駅から阪急特急に乗るのが良いだろうと教えていただいたので)。
 そこから、せっかくなので先斗町をふらふらする。川床のお店など、賑わっている。今はそこまで敷居が高い店ばかりではなく、若い人でも気軽に入れそうな店も多そうだ。しかし先斗町を歩いているとなんだか自分が島耕作になったような気がしてくるから不思議である。
 自分は特に何も決めていなかったので、たまたまふらっと入れた牛カツやさん「勝牛」でごはんにした。大層おいしかった。

カレーのつけだれがおいしかったです
四条大橋の近く
鴨川沿いの川床
先斗町の入り口
先斗町の奥の方

 非常に満足して大阪に戻る。大阪に戻り、その足でせっかくなので道頓堀からなんば近辺を散歩する。いかにも大阪らしい風景を堪能し、たこ焼きも食べ、10時半ごろにホテルに戻る。

いかにも大阪な写真を撮りました
はちまるはちのたこ焼き。おいしかった!
通天閣は、行ったらもう消灯してました

 というわけで、2日間の関西行き当たりばったり一人旅は充実と満足の終了を迎えた。
 測ってみたら2日間の総移動距離はなんと約290km。歩いた歩数も初日24,000歩、2日目33,000歩で計57,000歩。いや適当だった割にはよく歩いたし移動した。よくもまぁ予備知識ゼロだった割には次から次へと行きたいところが数珠繋ぎに出てきたものである。
 子供の付き添いで特に何も用事なくきた大阪だったが、なんだか思いのほか楽しい夏休みを過ごすことができたような気がする。
 子供もイベントに心ゆくまで参加できて大変満足した様子であったので、win-winな週末であった。

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