フトアゴヒゲトカゲの通院
うちには、フトアゴヒゲトカゲが一匹いる。
フトアゴヒゲトカゲというのは、オーストラリアの砂漠にもともと住んでいるトカゲで、愛嬌のある顔立ちで温和な性格、日本でもペットとして人気である。
うちの次男が中学に上がる頃、なぜだかどういうわけだが爬虫類が飼いたいと言い出し、一緒にペットショップに見に行ってフトアゴヒゲトカゲを選んできた。
一口にトカゲと言っても、その辺のカナヘビを捕まえてくるのとはやはり訳が違い、専用のでかいガラスのケージやら紫外線や熱源のランプ、ヒーターなど一通り揃えたので結構立派な水族館コーナーのような一角が誕生した。
その甲斐あってかフトアゴのアグちゃんはスクスクと成長した。初めは尻尾入れて15cmくらいだったが、あれから4年、今では40cmくらいはあるんじゃないだろうか。爬虫類は成長し続けるとは言うが、立派に大きくなったものだ。
爬虫類なので普段はまったく感情を表さないというか、何を考えているかさっぱりわからないが、餌をあげるときだけは意思をはっきり出してくれるのでかわいい。ちなみに餌は今はかいわれとかレタスだけを食べていて、いわゆる昆虫食などはほとんど食べていない。
さてそんなわけですっかり家族の一員となった(といっても次男の部屋にずっといるので次男以外はほぼ触れることはないのだが)アグちゃんだが、ある日次男が深刻な顔をしてやってきて、アグがずっと1ヶ月くらいフンをしないで心配だから病院に連れて行きたいと言う。
爬虫類系は消化器関係の病気や消化不良的なことで死んでしまうことも多いと言うので、あんまりほっておいてはいけない気がする。
じゃあ病院連れていってみようといったはものの、爬虫類なんてどこの病院に連れていっていいのかさっぱりわからない。
「フトアゴ 病院」「爬虫類 横浜 病院」などで調べてみると、ひとくちに動物病院といっても爬虫類を得意にしているところもそうでないこともあるらしいことがわかる。それはそうだろう。ふつうペットの病院といえば犬と猫だ。
という訳で、家から行けそうな爬虫類の実績のありそうな動物病院を絞り込み、土曜日の朝に行ってみることにした。
ほんとうにトカゲなんか診てくれるのだろうか、予約のときにどんな動物なのか生き物の種類は全く聞かれなかったけど(ペットの名前は聞かれたのに)、つれていったら「えっ、トカゲは事前に言ってくれないと困ります」と言われたりするんじゃないだろうか。
半信半疑でアグちゃんをボックスに入れて動物病院に向かった。行った動物病院はびっくりするほど綺麗で待合室も広く、問診票にトカゲと書いても特に驚かれるふうでもなかったのでやや安心する。
「岡島さん、岡島アグちゃん」
程なく呼ばれて診察室でアグちゃんを出すと、至極当然のようにあれこれ診断をしてくれて、エコーとレントゲンまで撮ってたいそう詳細かつ丁寧に説明してくれた。
心配ではあるけれど今の様子であれば特に心配はないので、消化の薬を出します。まだ数週間たっても様子が変わらなければ、またいらしてください。という内容だった。
いや、予想を遥かに上回る神対応に感激してしまった。
まず、今の体調をすごく丁寧に診て説明してくださったこともそうだし、至極当然のように診察されるフトアゴヒゲトカゲはここまで市民権を得た生き物だったのかと言うことも驚きだった。
なんといっても、こんなにも頼りになる先生が存在するということ自体で、飼い主さんが感じる安心感がすごい。これなら、今後アグちゃんの体調が多少悪くなっても大丈夫なような気がする。何事も行ってみるものだ。
しかし、レントゲンで見たアグちゃんの骨格は恐竜そのもので、写真が出てきた瞬間次男と笑ってしまった。また、今まで考えたことがなかったのだが、エコーの結果アグちゃんは女の子だったことが判明。お腹の中に卵胞があったのだ。これも、4年目にして初めて分かった事実だった。なんとなく見た目で男の子っぽいイメージを勝手に持っていたので、家族一同何よりこれに一番驚いていた。
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