大学教員の採用人事を知る5―学会参加の仕方編

学会とは?

学会(がっかい)とは、学問や研究の従事者らが、自己の研究成果を公開発表し、その科学的妥当性をオープンな場で検討論議する場である。また同時に、査読、研究発表会、講演会、学会誌、学術論文誌などの研究成果の発表の場を提供する業務や、研究者同士の交流などの役目も果たす機関でもある。(Wikipediaより)

研究者にとって、学会は不可欠な存在である。ここに所属しなければ、その学問領域の研究を行っていることを、ほかの同業者に知ってもらえないからだ。それゆえ、大学院に進学したらすぐに学会に入会することになる。

学会では、Wikipedia記事の引用にあるように、様々な活動が行われている。しかし大別すると次の2つとなる。それは、①研究発表会の開催および②学術雑誌の発行、である。②は以下の記事で詳しくまとめたので割愛し、ここでは①について話をすすめていきたい。

研究発表会に参加する

研究発表会は、学会によって様々であるが、定期的に開催される場合がほとんどである。多くの学会は1年に1、2回ほどであろうか。春と秋のシーズンになると、全国各地の大学で大小さまざまな研究発表会が開催されている。

研究者は、学会の研究発表会(長いので、以下学会という)に参加するものである。もちろん、参加しない研究者も多いが、基本的には参加するべきだと思っている。特に若手は、よほどのことがない限り学会に参加した方が良い。

なぜなら、仕事に結びつくからである。若手が学会に参加する目的は、ほぼこの1点にあると言ってよいだろう。学会に参加する若手は就職できるし、参加しない若手は就職できない。

しかし、ただ参加するだけではもったいない。せっかく参加するのだから、より良い過ごし方をしてほしい。この場合の良いとは、もちろん就職に繋がりやすいふるまいをする、ということである。学会参加は就職につながる機会であるだけに、そこでの過ごし方が大事になってくる。

この記事を必要とする人へ

この記事は、若手研究者が学会でどのようにふるまうべきかについて、専任教員の立場からアドバイスするものである。これまでの記事は「採用人事の立場から」書いていたが、学会参加は公募の選考過程とは直接関係のない話なので、専任教員として「この人は近々就職するだろうな」と学会会場で思う人のふるまいについて書いてみたい。

対象となるのは、院生や非常勤講師の方である。自分もそうだったが、非常勤講師時代は、学会に参加しても何となく落ち着かなかった。偉い先生に顔を覚えてもらおうとか、そのようなことばかり考えていた。結局はどうふるまっていいのかわからず、なんとなく右往左往してしまった過去を思い出す。しかし専任になったいま、改めて学会の場をよく見てみると、早く常勤にありつく若手のふるまいというのがあることがわかってきた。端的にいえば、有意義にすごす、ということである。それでは、どのようなすごし方が有意義なのであろうか?この記事はそこに焦点を当てたい。

構成は次のとおりである。

1:学会参加の目的

2:学会参加の目的Ⅱ

3-1:発表者として学会に参加する

3-2:聴衆として学会に参加する

4:業界の方と話す

この記事の分量は約8,700字である。金額は、院生にも購入してほしいので、500円に設定する。記事は、特に3-1、3-2について詳しく書いてある。具体的に、先生への声のかけ方テンプレートとか、メールの書き方文例を載せた

学会会場は、退職した名誉教授クラスも、今をときめく有名教授も、次世代を担う中堅も、将来が楽しみな若手も、右も左もわからない院生も、すべての業界人が一堂に会する唯一の機会である。そのような場で、いかに有意義にすごせるかが鍵となる。しかし、本題に入る前に、これだけは強調しておきたい。どんな形であれ、学会に参加しないよりは参加したほうが良い。専任を目指す目指さないはカッコに入れて、同じ領域を研究する仲間たちと交流を深めることが最も大事だ。

それでは、このことを前提に、早速話をすすめていこう。

ここから先は

7,446字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?