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キネマ備忘録

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映画を観て、広がった世界のこと
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2020年6月の記事一覧

映画#9. 家族を超えた愛(『湯を沸かすほどの熱い愛』)

このコロナ禍が収まった暁にはやりたいことがいくつかあるが、そのうちのひとつが銭湯にいくことである。 昔ながらの、下町でやっている銭湯がとてもすきで、ネットで調べてはよくふらりと立ち寄っていたものだ。先日見た映画『湯を沸かすほどの熱い愛』では、その舞台が銭湯。友人に紹介されたのだが、そのときには実は見ることを躊躇していた。 というのも、よくあるガンで余命宣告を受けて…という構成の流れで、お涙頂戴的なありふれたエピソードだと思っていたからだ。実際に映画を見てみると、良い意

形が輪郭を持つこと

最近、コロナ禍の影響で家に篭るようになってから、ただひたすらいろんな家がを見続けていた。調子が出ると、4本くらいぶっ通しで見たこともある。 それまではどちらかというと、本の虫だった。まあ過去形でもなくて、今も相変わらずいろんな本を興味あるものから片っ端から読んでいるのだが。もともとそれほど読むのが早い方ではないので、1日に300ページくらい読めれば上出来というかんじ。 それでも、本を読むペースが映画を見るペースを超えることはここ数年全くなかったのに、それが一変した。わたし

差別と偏見にまつわる人の心

先月、アメリカ・ミネソタ州にて黒人男性のジョージ・フロイドさんが、無抵抗にもかかわらず白人警察官によって殺される、という事件が起こった。その結果、アメリカ国内でたくさんの人たちが、人種差別に対する抗議デモを行う事態に発展している。 21世紀に入ってからは、20世紀以前に起こった出来事を背景に、「人は皆平等、差別を止めよう」という動きが広がった。だけど、たぶんこの手の問題は依然として解決の糸口が見えていないように思う。 確かに今回の事件は痛ましい出来事であることに変わりはな

#8. 自分の役割(『マイ・インターン』)

昔一回見たことがあったけれど、確かその時は学生でこの映画の奥深さについて本当には理解していなかったのだと思う。今回改めて見てみて、いろんなシーンの繋がりがより明確になった気がする。 あらすじファッションサイトのCEOとして活躍する女性が40歳年上の男性アシスタントとの交流を通して成長していく姿を描いた。ニューヨークに拠点を置く人気ファッションサイトのCEOを務めるジュールスは、仕事と家庭を両立させながら誰もが羨むような人生を歩んでいた。ところがある日、彼女に人生最大の試練が

#7. 思い悩むこと(『道』)

ふと振り返ってみると、あの時ああすれば良かったのに、と自責の念に駆られることがある。 以前、森川葵主演の『チョコリエッタ』という映画と黒木華主演の『日々是好日』という映画を見ていたときに、どちらの映画にも一つのオマージュ的な役割として巨匠フェデリコ・フェリーニの『道』という映画の存在があった。その時からずっと気にはなっていて、この度晴れて時間ができたために早速鑑賞してみた。 あらすじ 怪力自慢の大道芸人ザンパノが、ジェルソミーナを奴隷として買った。男の粗暴な振る舞いに