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映画『ファーストラヴ』

こんにちは。公認心理師の藤田です。昨日から公開されている、北川景子さん主演の映画『ファーストラヴ』を観てきました。公認心理師が主人公ということで、公認心理師界隈で話題?の作品です。ネタバレには注意して感想を書きますが、気になる方は観てから読んでいただいた方が無難かとは思います。

本を出したりラジオ出演もする公認心理師(北川景子)が、次の本の執筆の為に、父親殺害容疑で逮捕された女子大生(芳根京子)に取材をする。ストーリーはこうして始まります。

・公認心理師がどう描かれるのか
・事件の取材をするのが公認心理師である必要があるのか
に着目して観てみました。

【よくいる、やばいカウンセラー】
この映画で描かれた公認心理師は、率直に言うと、「ヤバい」。悪い意味で、です。クライエントの女子大生に自分を投影したり、女子大生のカウンセリングを通じて自分の傷を癒そうとしていたり。さらには、そのことを義弟でもある女子大生の担当弁護士(中村倫也)に見透かされる始末。また、冷静に話し合うことがなく、あまりに感情的なのもどうかと思いました。

公認心理師の倫理的な点でいえば、自分の心の傷はしっかりとクリアしておくべきでしょうし、投影して冷静でいられないような案件はお断りするなり別の心理師にお願いするなどして、自分で受け持たないのが普通でしょう。

ただ、こうしたカウンセラーはよくいるよなぁ、とも思います。人の相談に乗ることで自分を満たしたり、セルフコントロールが全然できなかったり、人とうまく付き合えなかったり。学んだ知識やスキルを、まずは自分自身で実践できることも公認心理師や、カウンセラー等心理職として重要なことだと思っていますが、それができない人はよく見ます。なので、脚本には全く不満はありません。

【公認心理師である必要性】
もう一つの着目点である、「公認心理師である必要性」ですが、狙いはすごく納得できました。容疑者(芳根京子)や、その周りにいた人々への取材を通して容疑者の心理に迫ることが、物語上大きな意味を持つからです。ですが、映画でその役割を果たしていたのは弁護士(中村倫也)であり、公認心理師(北川景子)は、相手と信頼関係を築くのに苦労し、核心に迫る質問はするものの感情的になるので、弁護士の足を引っ張る存在。まともな心理師であれば、もっとスムーズにことを進められただろうと思うと、残念で仕方ない印象でした。
【公認心理師がこの映画を観る意味】
ただ、公認心理師をはじめ、誰かの支援に携わる人にとっては、自身の支援者としてのあり方を見つめ直すいい機会になると感じました。特に、自分の心の傷をケアできていないまま、他者の支援をするとどんなリスクがあるのか、考えさせられます。支援を求めてくださる方は、大切な時間と、貴重なお金をかけてくれています。それはとても、とても重いもの。支援者自身が問題を抱えていては、相談者がかけてくれたものに報いることはできません。

また、支援者も一人の人間であり、幸せに生きる価値があります。身につけた知識やスキルが人を幸せにするものであるならば、やはり、まずは自分自身を幸せにしてあげることが大事だと私は思います。自分が満たされているからこそ、落ち着いて、誰かに手を差し伸べることができるから。

公認心理師でも、誰だって辛い過去の一つやふたつはあるでしょう。だからこそ、今一度、それをしっかりケアできているか、振り返るきっかけを与えてくれる。そんな映画だと思います。

今日2月12日は、第3回公認心理師試験の合格発表の日。今回合格された方々を含めた公認心理師各人が、この映画の公認心理師(北川景子)のようにならず、しっかりと支援をしていくことが、公認心理師の価値を向上させる唯一の手段だと思います。そのためにも、是非観て欲しいと思いました。

そして、公認心理師ではない方々。公認心理師は、この作品で描かれているような人ばかりではないです。むしろ、こういう心理師に出会ったら、「ちょっと信用できないかも」と判断する一つの材料にはなるので、そんな視点でも観て欲しいです。もちろん、そんなの気にせずにストーリーや役者さんたちの演技を楽しむのが一番ですね。個人的には、芳根京子さんと窪塚洋介さん(北川景子さんの夫役)が凄く素敵でした。

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