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きっかけのジーンズ

きっかけというのは誰にも平等に転がっていて
大事なのはそれを掴めるか掴めないかだ。

というような言葉を何度も聞いたことがある。

「あの時の◯◯がきっかけでそれを掴んだから今の成功があるんです」
なんて台詞を言える人間は自分の成功体験があるから、
あの時のきっかけをハッキリと覚えているわけだ。
それに比べて何の成功体験もない僕は、今までの道程に平等に転がっていたであろうきっかけというやつを気付かない内に何度も素通りし、今日も間抜けなツラをぶら下げている。

服を作り始めて4年が経った。
細々とだけど続けてこれたのは、僕にだってきっと小さなきっかけがあったに違いない。間抜けなツラにグッと力を入れて今までの道程を逆走してみると、
きっかけと呼ぶには取るに足らないかもしれないが、2本のジーンズが転がっていた。

はじめて作ったジーンズ【J-001】

当時、自分で服を作ろうと思い立ったはいいが、知識はあれど制作の能力はミシンを多少踏める程度でほぼ皆無だった。

リメイクなら何とかなるだろうと、今思えば何発か引っ叩いてやりたくなるほど舐めた考えで、L社(名前は伏せますが皆さんご存知の世界一のジーンズブランドです)の501XXというレアなジーンズを解体し、パッチワークをした。

完成したそれは、きっとはじめて作ったものだからだろう、とても格好良く見えた。宝物のように思えた。

いま改めて見ると、不細工な仕上がりでとても商品と呼べるものではないが、何故だか格好良く見えて、今でも宝物であることに変わりはない。

はじめて作ったものを格好良いと思えたから今でも続けているのだろう。
小さい頃に描いた絵を褒められたから絵描きになった。それに近い感覚だと思う。

おれじゃなきゃ見逃しちゃうほど小さなきっかけだった。


はじめて売れたジーンズ【J-002】

それから1年が経ったころ。毎晩毎晩服を解体し縫い直していた。甘く見積もっても100着以上の服を破壊し、再生し、ゴミ袋に詰めた。今思えば何発か引っ叩いてやりたくなるほど環境に悪い行為だが、それだけリメイクの特訓に励んでいたのだと目を瞑っていただきたい。

その春にオンラインショップを開設し、数点ほど販売したが直後は箸にも棒にもかからなかった。

夏になり、大阪であった写真展を観終えた車での帰り道、スマホに1通のメールが届いた。
ヒビ割れた液晶パネルに映し出されたのはジーンズが購入された通知だった。嬉しかった。飛び跳ねるほどに嬉しかった。きっと車体も少し飛んでいただろう。そう思えるほど嬉しかったのを今でも覚えている。

たかがジーンズが1本売れたくらいで大袈裟だと思うかもしれないけれど、最も自信のある渾身のリメイクジーンズだったから尚嬉しかった。

他にもシャツやカットソーなどいくつか販売していたが、
はじめて売れたのがこのジーンズだったのは本当に良かったと思う。自信を得て、今の制作に繋がるきっかけになった1本だ。


1本目はほんの些細なきっかけです。
2本目は自分で掴んだわけではなく、与えてもらったきっかけです。

風が吹けば飛んでいき、踏みつけると粉々になるような小さなきっかけだけど、今でもJ seriesとしてリメイクジーンズを作り続けるには十分すぎるきっかけでした。

活動初期の1番好きな写真

さて、そんな思い出もあってより大切に時間をかけて作っているJ seriesは、レアなジーンズに手作業の髄を詰め込んで再構築した世界に一つのリメイクジーンズです。

お陰様でご好評いただいており、今まで11本作ってきましたが、今回12本目をリリースします。

Mr.Ash  J-012
【size】33inch
【col】ID
【quality】C100%
【price】¥19,800(tax in)

L社501をリメイクしたストレートジーンズ。

今回使用したジーンズはUSAのL社でのみ展開された、生地やディティールに拘り、レギュラーレッドタブよりワンランク上のモデルとして、米国内の限られた店舗で展開された希少なジーンズです。
生地はコーンデニム ホワイトオーク製の14.5ozセルヴィッチデニムを使用。


両足にダメージ加工、パッチワーク、ドリップ加工などMr.Ashが得意とする手作業を全て詰め込んでおり、フラットなデニムをより立体的な表情に。

裾はユニオンスペシャル社のミシンを用いてチェーンステッチ仕様で程よいレングスに。
ボタンフライ、赤耳セルヴィッチ、チェーンステッチ、BIG Eなどヴィンテージデニムを語る上では欠かせない要素が全て詰まった世界に一本のリメイクジーンズです。

※商品の詳細・購入はコチラ


世界に一つのリメイクジーンズは
手作業による一点ものという意味だけではなく、
思い入れや心が宿っています。そんな特別な1本です。
今回はその一端が少しでも伝われば嬉しい限りです。

この1本が次の誰かのきっかけに繋がれば幸いです。


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