基礎のきそ:金融リテレシークイズ(5)債券と金利を学ぼう!(回答編)
さて、回答編です。今回は「変動利付」と「固定利付」の二つのタイプの債券についての質問でした。ぼんやりとわかっているつもりでも、改めて考えると「どっちだっけ?」と思いませんでしたか?そう思っていただければ、きっとお役に立っていると思います。答えを見ていきましょう。
問21 債券には利率が発行時に決まり、償還まで同じの「固定利付」と利率が発行後に変わる場合のある「変動利付」があります。インフレの時に有利と言われる「物価連動債」という国債は、どちらでしょうか?
A. 固定利付
B. 変動利付
C. 固定と変動と両方ある
D. どちらでもない
答えはA. 固定利付 またはD.どちらでもない です!
物価連動債は、物価の上昇によって元本が増加する仕組みです。一方、利率は一定で、変化しません。ただ、元本が変化するため、利率が一定でも、利金の額は物価上昇率によって同様に変動しますので、Bと答えた方が利率ではなく「利金の額」を念頭に置いていた場合は「利金の額が変動する」の理解は正しいです。
https://japan.pimco.com/ja-jp/resources/education/bond-basic/fixed-income-1/what-is-inflation-indexed-bonds
問22 これから金利が上がりそうです。住宅ローンなどのお金を借りる時はどれがいいですか?
A. 固定利付
B. 変動利付
C. 固定と変動と両方を組み合わせる
答えはA.固定利付 です!
金利には、短期金利と長期金利がありますが、「上がる」と単純に言う時、通常は短期金利(政策金利)を指す場合が多いです。住宅ローンの変動金利は短期金利連動型なので、これから金利が上がると返済すべき利率も上昇してしまいます。一方、固定金利型の住宅ローンは契約時の長期金利に連動している場合がほとんどです。短期金利が上がると、通常、長期金利も上がる場合が多いので、足元の長期金利がまだ低いのであれば、固定で借りた方が有利です。
ただし、住宅ローンには様々な形態があり、固定金利でも契約期間の途中で金利が見直される商品もあるようなので、ケースバイケースともいえます。先日、日銀は長期金利の誘導目標を見直し0.25%の上限を0.50%にしましたが、短期金利の誘導目標は変わらないので、変動金利型ローンは影響を受けませんでした。しかし日銀がいま行っているイールドカーブコントロールは異例の政策(の割には長期間続いていますが)です。通常の環境で政策金利が上がると言う場合は短期金利のことを指す、と基礎として覚えておきましょう。
問23 これから景気が悪化しそうで、物価は安定しています。自分の資金を運用するにはどれがいいですか?
A. 固定利付
B. 変動利付
C. 固定と変動と両方を組み合わせる
答えはA.固定利付 です! 景気が悪化する見込で、物価が安定しているのであれば、長短金利とも低下に向かうでしょう。その場合、変動利付で運用するとこの先リターン(収益率)が下がるので、固定利付の方が有利です。もっとも、景気後退の期間がどの程度か、その景気後退を債券市場がすでに十分反映した価格(利回り)となっているかによって、投資のタイミングいかんでは有利とはいえない場合もあります。
問24 物価が上がり、中央銀行が金利を上げるかも?との観測があります。低金利環境下で発行された長期国債は、これから?
A. 値上がりする
B. 値下がりする
C. 価格には影響はない
答えはB. 値下がりする です。「金融リテレシークイズ その1」の復習ですね。
https://note.com/daidai1008/n/nea70a71c2e99
問25 市中金利が上がっています。その時、変動利付債の価格は?
A. 値上がりする
B. 値下がりする
C. 価格には影響はない
D. AとBのどちらともいえない
答えはC. 価格には影響はない、またはD. AとBのどちらともいえない です! 固定利付債は市中金利の上昇により価格が下落しますが、変動利付債は市中金利の変動または物価上昇率等によって利率が調整されるため、固定利付債に比べて市中金利の変動が債券価格に与える影響は小さいと言えます。しかし債券によって、利率が変動する条件が発行時にあらかじめ決まっているため、まったく価格に影響がないわけではありません。そのため、「固定利付債と比べた場合」にはCが正しいですが、厳密に個々の債券の条件を考えれば、Dも正しい答えとなります。
いかがでしたか?だんだん難しくなってきた、と思うかもしれません。あと一回だけ債券のクイズをやりたいと思いますので、どうぞお付き合いください。(続く)