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話題のパーソナライズシャンプーMEDULLA(メデュラ)をマーケティングトレースしたらD2Cの可能性が見えた。

2021年8月13日、総額41億円の資金調達(しかも21億円はデッド!)を発表し、2022年1月12日から全国でTVCMを放映した事でも話題のパーソナライズシャンプーMEDULLA(メデュラ)※以下メデュラ

最近TikTokで売れていると気になってリサーチした所、これまでのD2Cブランドとはまた違ったプロダクトになっていて、とても興味深いと思ったので記事にします。

分析するにあたり面白そうな書籍があったので、今回は本に記載されていた、「マーケティングトレース」という手法をベースに分析してみます。

マーケティングトレースとは?

因みにマーケティングトレースという手法は、簡単に言うと「マーケターの筋トレ」を行うために編み出された手法のようです。
所謂マーケティングフレームワークを基に企業を分析して、もし自分がCMO(マーケティング最高責任者)ならどうするか?というのを考えるというやり方です。

マーケティングを勉強する方法が分からないという声を良く聞きますので、とても良い手法だなと思って今回実践してみました。
興味がある方は書籍の著者である、黒澤さんのnoteを見て下さい。
※スライドも用意してあったので、今回はそちらを使用しています。

①市場背景の整理

まずはPEST分析です。
PEST分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの視点で市場背景を整理するためのフレームワークです。

戦略を考える前に、マクロ的に市場背景がどうなっているのか?を整理するのが目的です。

メデュラは2018年の5月に発売開始して、累計会員数が2021年8月時点で35万人いるようです。

恐らくメデュラのメイン集客経路はWEB広告だと思いますが、2018年頃はアドアフィ全盛期でゴリゴリの広告が溢れていました。
ですが、直近は広告規制が厳しくなり、主に健食やダイエットを中心にかなり広告出稿が減っています。

代わりにクリーンな商材の広告出稿が増えています。
メデュラもそのうちの1商材だと思います。
※アドでデイリー1,000CVしているという噂も。

この中だと1番影響度が高いのは「政治」だと思います。
なので取るべき戦略は、消費者庁の目を付けられないためにも、クリーンな広告の維持をする事だと思います。商材的に特段問題ないとは思いますが。

②業界構造を読み解く

次に5Force分析です。
5Force分析とは、事業を取り巻く外部環境を理解するためのフレームワークです。
縦軸が「同じ市場での競合」、横軸が、「市場の中での利益構造」になっています。

戦略を考えるうえで業界の構造を理解して、どこと競合すべきなのかを判断するのが目的です。

まず縦軸から見ると、脅威になりそうなのは業界内の競争=直接的な競合になります。
既にCONSTELLA(ロート製薬子会社)、 My BOTANIST(I-ne)などのシャンプー業界の大手企業が参入しているので厳しいシェア争いが繰り広げられていると思います。

ただ前述したようにメデュラはWEB広告をメインで獲得している傾向があると思います。
大手企業はブランディング寄りのイメージ戦略で売っていると思うので、獲得チャネルの違いは、1つのポイントになると思います。

次に横軸の「売り手の交渉力」に関してですが、メデュラの製造元は出資元であるサティス製薬でした。
サティス製薬はBULK HOMMEなどの製造も請け負っているようです。
出資比率などは非公開なので詳細は分かりませんが、2018年11月13日とかなり早めに出資しているので、交渉力を「強」としています。

③戦略土台の整理

次に3C分析です。
3C分析は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点で情報を整理するフレームワークです。

具体的な戦略・戦術を考える前に、前段階として戦略の土台を確認する事が目的です。



出典:矢野経済研究所

市場規模に関して、矢野経済研究所のデータによると、2020年度のヘアケア市場規模が4,537億円、そのうちシャンプーやリンス、トリートメントを含むヘアケア剤が51.8%、約2,350億円もあるようです。

メデュラは累計会員数のみ公開しているため、現在の会員数は分かりませんが、仮に生存率が5%で約17,500人だとします。
サブスクモデルなので、2回目シャンプー&リペアのセットで8,330円(送料無料)で計算すると、単月売上が約1億,4600万円弱になります。
※本来は初回料金がありますが、計算がややこしいので省いています。

ヘアケア剤の市場規模で考えるとシェアは約0.06%となります。
巨大市場という事もあり、現在のシェアは低いですが、逆にかなり伸びしろがあると感じました。

④価値を届ける顧客を決める

次にSTP分析です。
STP分析とは、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つの視点要素を基に、価値を届ける顧客を決めて、差別化要因やブランドイメージを特定するためのフレームワークです。

マーケティング戦略の全体像の土台を作る事が目的です。

セグメンテーションは、人口動数、地理的変数、心理的変数、行動変数の4つの要素で市場を切り分けます。

ターゲティングは、セグメンテーションで切り分けた市場の中から、メインの顧客を誰にするかを決めます。
今回は「美意識が高く、多少お金がかかってもヘアケアに力を入れたい20代後半女性」と設定します。

ターゲティングを設定する際に、「マーケティングの神様」と呼ばれる、コトラー教授が提唱する6Rという考え方をクリアしているかチェックしましょう。

Realistic scale(有効な規模)→市場規模は十分にあるか?
Rate of growth(成長率)→市場の成長性は高いか?
Rival(競合)→競合関係はプラスに働くか?
Rank(優先順位)→他のカテゴリーと比較して優先順位は高いか?
Reach(到達可能性)→そのカテゴリーにサービス提供は可能か?
Response(測定可能性)→反応の効果測定は可能か?

ポジショニングは、ポジショニングマップを作成して競合との差を分かりやすく表しましょう。

まずはマトリクスの軸を考えます。
その時にターゲットにとって重要な事は何なのか?という目線で考えるようにします。

今回は「美意識が高く、多少お金がかかってもヘアケアに力を入れたい20代後半女性」なので、「価格」と「オリジナル」の2つの軸にしました。

価格は、お金がかかってもいいとはいえ、パーソナライズシャンプーは普段のシャンプーよりも高いのでターゲットも意識すると思います。

オリジナルというのは、少し分かりにくいので説明します。
ターゲットはお金をかけて髪を綺麗にする事が目的だと思います。
商材がパーソナライズシャンプーなので、「商品パターンの組み合わせ数が多いほど、自分に合ったシャンプーである=髪が綺麗になりやすい」
と考えていると思ったため、ここではパターンの組み合わせ数が多い=オリジナルと定義しました。

そしてこの2軸を中心に、リサーチを行い比較表を作ります。

※料金は定期料金で比較。CONSTELLAのみ定期がなかったので通常料金。


リサーチの内容を踏まえてポジショニングマップを作ります。
しっかり競合との差別化ができていますね。

売れているプロダクトは、このようにポジショニングが定まっているケースが多いです。
逆にポジショニングが曖昧だと、そのプロダクトを選ぶ理由がユーザーに伝わらないので、売れない事が多いです。
広告費をかける前に、ポジショニングの再設計をする必要があります。

⑤価値の届け方を決める

次に4P分析です。
4P分析は、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(広告)の4つの要素から、顧客に対して価値をどのように届けるのかを考えるためのフレームワークです。

STP分析から導き出したターゲットやポジショニングをベースに、顧客にどのような価値を届けるかを考えるのが目的です。

メデュラは前述した通り、アフィリエイト広告ユーザーによる集客がメインだと仮定すると、問題点はLTVの低さだと思います。
アフィリエイト広告は主に、第三者(アフィリエイター)が潜在層に対して広告を露出して自社サイトに誘導した流れで購入するので、衝動的に購入するケースが多いです。

比較検討と違って、「思てたんと違う」が発生しやすくなり、解約率が高くなる事が多いです。

その問題点を、購入前にオンライン診断を挟む事で、「この商品は私に合った商品なんだ」と意識付けをして、商品を使った後も定期カウンセリングを実施する事で「今後、もっと私に合った商品に変わっていく」という期待を持たせる事で、LTVを伸ばしていく戦略ではないかと思います。

そしてこの戦略こそが、メデュラの1番凄いところだと思います。
何故ならD2Cの一番の革命は「小売りを介さずにユーザーと繋がれる事」だと思うからです。

今までは商品を作っても、小売りに卸すだけでユーザーの意見を吸い上げる事は難しかったのですが、D2Cは直接ユーザーの意見を吸い上げて、プロダクトの改善に繋げていけるからです。

自分がCMOならどうするか?

これらの分析を踏まえて、自分がCMOなら「ドライヤーをクロスセルする」という方法が良いのではないかと思いました。

結局ユーザーがベネフィット(髪が綺麗になった)を感じる瞬間は、ドライヤーで乾かした後、指通りが良かったり、ツヤが出ている時ではないかと思いました。

メデュラがどんなに良い商品だったとしてもドライヤーが悪かったり、乾かし方が悪いと価値を実感してくれないかもしれません。
それを防ぐために、ドライヤー自体を作ってしまって乾かし方のコツと一緒にユーザーに届ける事でメデュラの良さを最大限に発揮する事が狙えるのではないかと思いました。

既に「美意識が高く、多少お金がかかってもヘアケアに力を入れたい20代後半女性」の顧客情報は保有しているので、相性も良いと思います。

まとめ

今回TikTokでメデュラが売れているという話を聞いて、リサーチしてみたら、とても面白い発見がありました。

今後もD2Cは市場が拡大していくと思いますが、メデュラのように、①長期的に使用するプロダクトで、②顧客とコミュニケーションが取って改善していける商材が伸びていくのではないか?と思いました。

例えばワインのように、たくさん種類が合ってどれから手を付けていいかわからないような商材との相性は良いと思います。

ワインが月に数本送られて来て、それぞれのワインをフィードバックして、フィードバックの内容から次のワインを決めてを繰り返して・・・
自分もワイン好きなので、こんなプロダクトあれば使いたいですw

初めてマーケティングトレースという方法で分析してみましたが、めちゃくちゃ頭の中が整理されます。
特にマーケティングに興味があるけど、何やっていいか分からない人におすすめです!

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