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メインウェポンをもたない型

iPadがあると、何でもできる気がしてくる。スケジュールも、タスクも、メモも、勉強もこれがあれば全部まとまる。パソコンやお気に入りのロルバーンの手帳、印刷紙の裏を使っていたが、まるっとこれに置き換えられる。急に見知らぬ外国人が林檎をかじりながら船でやってきて、見たこともない兵器で道場に風穴を空けられた。もともとは竹刀をえい!えい!と振っていたのに、強力すぎる武器を見せつけられ、とうとう買ってしまった。それがiPadだ。

これさえあれば無敵だー!と思ったが…

何ヶ月か経って、仕事で持っていくのはiPadとパソコンだけになる、かと思いきやロルバーンの手帳も用紙の裏紙も使っている。あれ、なんでこうなったのだろう。今回はその理由をまとめることにしよう。

はじめに、なぜiPadを買うに至ったか、それは荷物を軽くするためではない。「PDFに直接書き込みたい」だけであった。仕事柄、図面やパースなどに指示やアイディアを書き込むことが多く、わざわざ印刷して書いてスキャンするのが面倒だった。しかし購入してあまりの多機能さに圧倒されてしまい、自分の働き方までもドライスティックに変えようとしてしまったのだ。

Goodnotes便利すぎる…
もうこれ無しに仕事はできない…

僕には型があった。それはiPadを購入して気付いた。
僕はレイアウトを描く時に必要な情報を印刷して机いっぱいに広げていた。
僕はスケジュールをまとめる時にGoogleカレンダーに案件ごとに色分けして細かく入れていた。
僕はテンパった時に印刷紙の裏に全てのタスクを書き出し、常に目に入るパソコンの横に置いて作業していた。
僕は勉強する時にロルバーンの手帳にまとめ、書き切ったら写真を撮って、情報をまとめるアプリに保存していた。

書き出したら色々あった。iPadを購入して早々は何だか心が穏やかじゃなかった理由は、自分の最適なやり方が崩れたからかもしれない。スマートになったにも関わらず、仕事もなんだかうまく回らず、うっかりが増えた。勉強しようという意欲も薄れた。

ロルバーンの良さは数行じゃ語れない。使っていくとわかる心地よさ。

ふとよぎったのは宮本武蔵と佐々木小次郎の話だ。佐々木小次郎は物干竿と呼ばれる極めたら強力な長い剣の使い手として有名。一方、宮本武蔵は相手に応じて武器を変えることで知られる。これはコンセプトの違いである。強い武器を磨き続けるのか、状況に応じて武器を変えるか。僕は後者に共感をする。やはり状況によって自分にあった武器を選ぶべきだと思う。それが僕の型なんだ。

武器を多く持つということは、それだけ鍛錬に時間がかかる。武器一つ一つと向き合う必要があるからだ。遠回りが1番の近道というのはこのことを指しているのかもしれない。

勘違いしてはいけないのは、あくまでも武器はたくさん使いつつも、目指すべきところは一つに絞るべきだ。宮本武蔵は剣を極めるのではなく、戦いそのものを極めた人だ。僕は今、オフィス設計という仕事に挑んでいる。小手先に意識が向きがちな性分なので、気をつけたい。

今、部屋が散らかっている。あれこれ武器を試していると、どんどん物が増える。バックも重い。だめなら捨てる努力が、この型には必要だ。掃除をしよう。

大工の父の武器達。山で拾ったものもある。全然使っていないものもきっとあるのだろう。

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