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2017年-4

今でもこの道を通ると、あの女性がいるような気がする。この道で女性は体を失い、だけど、意識だけは今も残されたままだ。

目には見えなくても、女性はこうして漂っていて、死ぬことで、世界の一つになった。

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僕の体を切り裂けば、硬くて重い機械が現れるだろう。さらに内部をかき分けると、僕は、僕の中の女と出会う。

僕は人間なのか機械なのか、男なのか女なのか、もうわからなくなっていて、意識みたいなものだけが取り残されている。

鏡に映る姿は僕ではなくて、体はただの表面で、その表面は、たまたま人間の形をしていて、そして男で、僕だったのだと思う。

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人に体温があるように、機械にも熱がある。
触れることで、そこに温度があることが分かるけれど、体、手とか足とか、それが見えない。

まるでサーモグラフィー上にしか存在しないみたいに、僕の体は無くなっている。僕は引き寄せられるように、機械を抱いて眠っている。

いつでも代替可能なはずの身体が、すでにこの声すらも自分のものでは無くなっているように、言葉(霊)は解体され、また知らない誰かの声(肉体)にするりと入り込む。

しかしそのことに、誰も気付いてはいない。

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