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第67号 神経活動から気分のバイオマーカーを作成する、今年の抱負は何ですか?

// 2023年1月14日 第67号
// 1. 今週の注目ニュース:神経活動から気分のバイオマーカーを作成する
// 2. 質問コーナー:紺野さんの今年の抱負を教えてください

こんにちは、東京大学の池谷裕二研究室と松尾豊研究室で脳や人工知能の研究をしている紺野大地です。

2023年、あけましておめでとうございます。
年末年始は地元山形県で過ごし、リフレッシュすることができました。
気分一新、今年も頑張っていきたいと思います😊

実家の窓からの風景

また、現在出張でシリコンバレーに来ています。
人生の目標の1つである「神経科学において、学術界と産業界を結びつける」の実現のため、今年からどんどん行動していきます!

では、今回も始めていきましょう!

1. 今週の注目ニュース:神経活動から気分のバイオマーカーを作成する

今回取り上げるのは、
「てんかん患者の神経活動(Local Field Potential, LFP)を用いて"気分のバイオマーカー"の構築に成功した」という2018年の論文です。

将来的に「神経精神疾患のより客観的でパーソナライズされた診断・治療」につながる可能性を秘めた研究だと思います。

以下で、この研究の内容を深掘りしながら見ていきましょう。

背景

私の著書やBrainTech Reviewでも何度か取り上げましたが、神経科学を代表する研究者の一人であるニューヨーク大学のGyörgy Buzsáki先生は、著書「The Brain from Inside Out」において、「脳科学における次の時代の目標」として以下の3点を挙げています。

  1. 高い空間・時間解像度で脳機能をモニター・操作する非侵襲的技術

  2. BMIなどを用いた神経・精神疾患の治療

  3. 赤外線、紫外線、放射線、磁気などの新たなモダリティの知覚獲得

このうち「2. BMIなどを用いた神経・精神疾患の治療 」は、「理想的ではあるものの実現まではまだしばらく時間がかかるのではないか」というのが2021年中盤までの個人的な考えでした。

そんな中、この1-2年で「神経精神疾患のオーダーメイド治療」に関連するインパクトのある論文が複数発表されています。

その中でも個人的に最もインパクトが大きかったのは、2021年10月に発表された「うつ病患者の脳活動を常時モニターし、”落ち込んでいるパターン”が検出されたら電気刺激することで気分を急速かつ持続的に改善できた」という研究であり、著書やBrainTech Reviewでも詳しく取り上げました。

ここで一度考えてみましょう。
この先、神経精神疾患のオーダーメイド治療がさらに普及するためには、いったい何が必要でしょうか?

個人的には、「神経活動に基づいたバイオマーカー構築」が極めて重要だと考えています。
なぜなら、神経活動からその時点での気分や思考を読み取ることで、それに応じた介入ができるようになるからです。

そのような流れの中で今回紹介する論文では、てんかん患者の神経活動(Local Field Potential, LFP)を用いて"気分のバイオマーカー"の構築に取り組んでいます。

以下で詳しく見ていきましょう。

方法

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