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20年後も忘れない思い出〜旅の記録6〜


「ブー」 「ブー」「ブッブー」
鳴り止まないクラクション。不整備の道路。砂埃と排気ガスの充満する道。目と喉がすぐにやられそうだ。

朝の満員電車並みの人が駅からオートリキシャー(3輪タクシー)乗り場まで乱れた列を成している。
列車から降りるだけでも一苦労だ。

やっと着いたんだと心を落ち着かせる、間も無く。
オートリキシャーの勧誘が溢れるようにやって来る。

「200ルピー」
「ゲストハウスまで連れてくよー」
「宿決めた?」
なぜかバラナシ、コルカタには日本語を流暢に話すインド人の客引きが沢山いる。

どこか怪しかったので、英語しか話さないインド人と頑張って交渉しようと思った。そっちの方が日本人だからと言って、ぼったくられないようなきがしたんだ。

僕はある程度、宿の目星を付けていた。サンディアゲストハウスという宿だった。

とりあえず
「サンディアゲストハウス!」
と連呼して、食い付いたドライバーと交渉しようと試みた。

見事に2人くらい食い付いてきた。

1人目は「There is full today」(今日は満室だよ)
みたいな事を言っていた。

予約は無論していなかったので、少し不安になった。
でも嘘の可能性が高い。なぜかというと自分の提携しているホテルに客を連れて行くと、ドライバーにマージンが入るので、みんな自分の客にしようと必死だ。商売なのでもちろん仕方はないけど嘘は好きじゃない。

本当かどうか確かめたかったので、もう1人のドライバーに尋ねた。

2人目は 「Maybe you could stay at there」(多分泊まれるよ)

と言って連れてってくれた。

交渉した結果 「100ルピー」で宿まで。
後々聞くと、これくらいが相場らしい。

宿は普通に空室が結構あった。
ドミトリーだけは空いてなく、ダブルルームにたまたま宿で居合わせた人とシェアすることになった。宿代も基本的には交渉。慣れたら楽しいけど、日本にはあまりない文化なので、最初の方は結構エネルギーが必要だ。

宿も確保し、とりあえずは一安心。部屋もラウンジもすごく綺麗で快適なバラナシ生活が送れそうな予感。

さあ荷物を最小限背負い、早速バラナシ散策に出発だ。

メインロードに向かうまでの道。
まるで迷路のように入り乱れた、不整然だけど整然とした道。街の至る所で牛が道を塞いでいる。
その横でサッカーボールで遊ぶ少年。茶葉を売るおばちゃん。何をするともなく、ただただ道路を眺めている老人や若者。

しっかりと道を確認しながら歩かないと宿の場所を忘れてしまいそうだ。
その分いつもよりも色んな物を見るように意識する。そうすると、いつもより気付ける物事も増える。

これは"カラーバス効果"の一種なのだろう。
自分に関係のある出来事は、自然と目に入るようになってくる。その分情報も集まってくる。
要は、「人は自分が見たい物しか見ない傾向がある」ということ。
僕はあえてこの効果を利用して、街を歩いてみたりする。そうすると普段気付かないような事に気付いたりして、いつもと同じ道がちょっとした旅路のような気分になる。
僕の地元神戸でも、頻繁に新しい気付きがある。
いつもの通勤路でも。


もうどれくらい歩いただろう。
それと同じくらいどれくらいのインド人に話しかけられだろう。

ガンジス河の河沿いに腰をかけながら、そんなことをのんびりと考えていた。



〜続く〜


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