見出し画像

抽象化思考が苦手な人が苦手な話

コミュ力高めだと思っていたが・・・

コンサルタントという仕事柄、コミュ力についてはある程度「プロ並み」のものを備えているとは思う。・・・と、思うのではあるが、唯一苦手な人種がいる。それが抽象化思考を苦手としている人たちである。普段の会話は別に問題ないが、ビジネス上の会話で大変苦労する。というのも、ビジネスの会話というのは前に進むための会話であり、平行線では終えられないから。一体どうすれば良いのかというのを自問自答するために筆を執ってみた。

抽象化思考が通じない場面

まず、良くも悪くもではあるが、私は抽象化思考については使える武器として備わっていると自負している。得意技は「喩え話」であり、話す相手のバックグラウンドや世の中の共通の話題から適切な「喩え先」を素早く抽出し、ユーモアを交えて説明に加えるというのが割と自然に出来てしまう。ただ、繰り返すが良くも「悪くも」である。抽象化して話をして理解を得るという方程式に頼りすぎている面があって、抽象化思考が全く通用しない相手が出てくると苦戦するのだ。そう、呪文を全部反射する敵と相対した魔法使いのように、自分の呪文でダメージを受けた上に、攻撃力のない杖で殴り続けるしかなくなってしまい、にっちもさっちも進まなくなる。

抽象化思考は便利で、細部の具体的なことをある程度「丸めて」、前向きに検討できるところが素晴らしい。例えば、膨大な種類の社内データを整理整頓するというお題があったとすると、一つ一つを具体的に方針検討していくと果てしなく時間がかかってしまうし、全体感が掴めない。故に、ある程度の特徴をもった「社内データの塊」を定義して、塊を単位として方針を決めていく方法を採用すると整理が早く進む。・・・が、ここで落とし穴に填まる。塊の中にも当然「例外」があり、その例外を挙げて検討を遮る発言を挟む人がいるのである。また、その塊に使う言葉は一段階抽象化されているため、色んな意味に取れる単語が入るケースが多い。そうなると、その単語の使い方や定義まで遡って議論が停止してしまう。この状況がとても難しいのだ。

歩み寄ってくれないのは何故なのか

抽象化思考が苦手な人に多いのが、論理・理屈に対する歩み寄りが感じられないこと。まずもって、こちらの「比喩」に乗っかってくれることもない。先のデータの整理の例では、得意の比喩が発動して「家の掃除」になぞらえて議論を展開していた。「家全体が汚れて散らかっていて全部が掃除の対象ですが、まず、生活する上で絶対に掃除しなきゃいけない部屋を決めましょう。」みたいに話をするわけだ。抽象化思考がある程度備わっている人であれば「キッチンを掃除する前に廊下が汚いと掃除できませんよね」などと乗っかって話を返してくれる。この場合「廊下」とはシステムの共有部分を指すのであろうということを想像しながら話を進められるのだ。しかし、抽象化思考が苦手な人は、そもそも例え話がピンとこないみたいなコメントを漏らした後に、具体的にこのケースのこの場合はどうするのかという質問を投げてくる。これをうっかり「それは部屋を片付けたそばから散らかす子供がいるってことですよね」などと比喩返しをすると火に油で、しまいには私の話が通じないのは100%私に非があるような責め方に変わっていく。こちらはなんとか分かってもらおうと手を尽くすのであるが、向こうからそれを感じない。両者の距離が100あるのであれば、50ずつ歩み寄れば最速なのに、100全部を押しつけられた気分になってしまうのだ。これは何故なのか。

そして無意識の見下しになっていく

さらに良くないのが、このやりとりを通じて無意識のうちに相手を「見下して」いってしまうのである。こいつは話の分からない人だと。そうすると態度に出てしまう。態度に出れば感づかれ、100だった両者の距離が200、300と離れていってしまう。会議の雰囲気も悪くなるし、何しろ結論がでないから前に進まない。これが自分の身に起こりがちな、抽象化思考が苦手な人との会話における最悪のケースである。

ついこないだ妻に、「あなたの話と同じ内容のものをYouTuberが言ってて納得した。」と言われ、「あなたの話は上から目線で納得しにくい。」と強烈なダメ出しを受けた。どんなに言っていることや論理の展開が正しくても、聞いてもらえなければ意味がない。どうやら私には「思考力の差で相手を無意識に見下す」癖があるのかも知れない。

ではどうすれば良いのか

一つ大前提として、この見下し癖を治す必要がある。・・・これは努力しかないので、先に登場したYouTuber(ロザンの宇治原さんらしい)の爪の垢を煎じて飲もうと思う。

で、抽象化思考が苦手な人への説明法だが、これはとにかく具体の絨毯爆撃しかないかなと思っている。具体的な話をしたくない(冗長だから、複雑だからなどの理由)から抽象化して話すのであるが、ここはもう覚悟を決めてとことん具体的な話に付き合う。時間もかかるし消耗もするけど、そうやって初めて抽象化された話への扉が開く。もちろん、抽象化思考が苦手な人は、それを克服した方が良いとは思う。けどそれは私の問題ではないので、私がやれることは「リスペクト」「具体的な話にとことん付き合う」の二つになるのかなと。まぁ時間は無限ではないので、とことん加減については経験を積むほかないのだろうな・・・。

でも一つだけ言いたい

自分の改善の方向性は決まったとして、やっぱり一言だけ言いたい。頼むから・・・少しで良いから、歩み寄りだけは見せて欲しい。コミュニケーションにおいて一方の努力だけで成立させようとするのは第三者的にみてやっぱり不公平だと思うのよね。そこだけはなんとかお願いしたいです、はい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?