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めがね

自慢するようなことではないが、自分は目が悪い。どのくらい悪いのかというと、白い洗面台に白い歯ブラシを置くと見えない。学校の視力検査で見えるところまで近づいてくださいと言われて検査ボード30センチまで近づいたらふざけるんじゃないと眼医者に怒られる。小学校までは視力の悪いのはめんどくさかったのだけれど、中学校くらいになると視力の悪いのも使いようだと考えるようになった。中二病と相まって視力の悪さは人と違うことをする理由として大活躍してくれた。

さて、そんな私の相棒は眼鏡。コンタクトレンズは矯正範囲を超えてしまって作れなかった。そのうちに技術が進んでコンタクトレンズも可能になった。大学生の時にコンタクトレンズにしてみたが、眼鏡無しでいるとどうにも頭の横がスース―して気持ち悪く、すぐに眼鏡に戻ってしまった。

強大な乱視と近視の私が使っている眼鏡はドイツ製のレンズに日本製のフレームだ。1枚6万円もするレンズは、眼球のカーブを測定してそのカーブに合わせてレンズカットを調整し、画像が歪まずクリアに見えるという代物。もちろん薄型で光学技術の粋を集めたようなものだ。注文してから受け取るまでに2か月くらいかかる。

ただし、レンズ1枚6万円。両方で12万円。フレームはだいたい3万円くらいだから眼鏡一式で15万円。こんなものをポンポン買えない。世の中には安い眼鏡もあるし大勢が使っている。実はあっちでもいいのではないだろうかと常々思っていた。そもそも技術の進歩は素晴らしいのだからこんな高くなくとも云々

昔は眼鏡は全般的に高額だったのだけれど、今では安くなり、服装に合わせて取り換える人も増えてきた。そんな人をうらやましく思っていて、ついに先日眼鏡を作ることにした。

乱視がひどいんですができますかと聞いたらできるという。しかも一週間で出来上がるという。欲しかったデザインのフレームもあり注文した。

支払総額は5000円

そしてその眼鏡は今ケースにしまわれて非常持ち出し袋に入っている。普段使い30分の1の価格の眼鏡が大差なかったらどうしようかと少し不安だったがそれは全くの杞憂だった。かけた瞬間歪む画像。中心部分はよいが、少しでも左右に振るとすぐに画像が歪み始める。端ではサルバドール・ダリの名作記憶の固執に描かれる時計のようになってしまう。歩くときの頭の上下運動に少し遅れて歪んだ線の画像が目に入ってくる。焦点は合うのだけれど画像のゆがみが酷くすぐに使い物にならないことが分かった。

以前に聞いたことがある。自分のレンズは設計は手作業、最終磨きは手磨きなのだと。職人芸を少しでも疑った自分を叱責し今後もこのドイツ製のレンズにお世話になろうと思う。

#思い込みが変わったこと