野外の配食(炊き出し)・相談現場に無料Wi-Fiを飛ばす試み。相談資源への「ラストワンマイル」を確保するために
あまり試行/進行中の(海の物とも山の物ともわからない)プロジェクトについては書かないようにしていたのだけど、そういう縛りも時には良い結果を生まないのではないかとちょっと思い、以下走り書き的に。
配食(炊き出し)・相談現場に無料Wi-Fiを
個人的にずっと必要あると考えていた「支援団体が催す野外の配食(炊き出し)・相談現場に、相談に来られた方が使える無料Wi-Fiを飛ばす」という試みを、今月(10月)よりまず始めてみることにした。
場所は東池袋中央公園。池袋を中心にホームレス状態の方を支援し続けているNPO法人TENOHASIと認定NPO法人世界の医療団が主催されている定例相談会(毎月第二・第四土曜日開催)に許可を頂いた上でお邪魔し、ルーターなどを設置。
医療テントの横に「soudan-Wi-Fi」(とりあえずの仮称)として、配食や医療・生活のご相談に並ばれている方々へご利用を呼びかけた。
課題意識としては前回投稿したエントリーにも書いたが、
・電話を含む通信手段を個人が安定して確保することが社会生活を営む上で必須となっているにも関わらず、それらを失い、困窮されている方が増加していること。
・また、そうした方をコンビニエンスストアが代表される「無料Wi-Fi」が最後のセーフティネットとして機能していること。
・電話・通信回線は解約されていたとしても、端末自体はかなりの方が自前で持っていらっしゃること。
以上を鑑み、それならば相談主催自体が安定した回線を提供すること(通信支援)が、食料支援や医療・生活相談支援と同様に(今後さらに)重要となっていくるのではないかと考えた次第。
もし池袋でうまくいけば、ほかの支援団体が主催する相談会の現場にも「無料Wi-Fi提供のパッケージ」を提供できたらと思っている。
こうした「無料Wi-Fi」提供は、主に渋谷や新宿で若い女性を支援されている一般社団法人Colaboが「Tsubomi Cafe」というバスを利用した定期相談の現場で先進事例としておこなっており、私も今回の実施にあたってどのようにおこなっているのかを教えていただいた。
Colaboでは携帯の充電も提供しているとのことで、それはニーズがあるだろうなと思う。
とはいえ、そんな実証実験初日(10月10日)はあいにくの大雨。
貼り紙にラミネート加工をしていなかったり、そもそも相談会に来られた方がテント外に滞在するといったことが不可能な気候だったので、並んでらっしゃる方々への声かけ以外のご案内が難しかった。
ただ、そんな中でも並んでいる方から「利用したいのだが」と呼びとめていただき、具体的にネットワークへの接続をさせていただいた方もおられた。
(この方がポケットから出されたのが「iPhone5s」(美しい!)だったのでちょっと格好いいと思ってしまった)
次回相談会にもお邪魔し、設置する予定であるが、上記Colaboさんに倣って(これも実験的・限定的だが)「充電」の提供もおこなえたらと考えている。
デジタル行政の「手前」で取り残される方の「ラストワンマイル」を
ここ数日の政治の流れを見ていると、行政が急速にデジタル化へ舵を切っていくことが見てとれる。
これ自体はすでに文明的に不可避だと思っていたので評価したいのだけど、行政手続きが今後積極的にオンラインを入り口にしていく中で、安定した回線を持たない(持てない)方々をどう包摂するかが課題となっていくだろう。
今後オンラインがメインとなっていけば(間違いなくメインとなっていくだろう)、いくら「通常窓口と平行します」と謳ったところで、リアルは縮小されていくことは不可避だろうと思う。
一方で、10月8日に電子決済アプリのアカウント登録のためにショートメッセージサービス(SMS)認証を代行したとして逮捕者が出たとの報道があった。
詐欺罪で公判中の別の容疑者に、スマートフォンの決済アプリのアカウント作成に必要な電話番号とSMS認証コードを提供し、不正にアカウントを作成させた疑いだという。
恥ずかしながら既に「SMS代行業」なるものの存在を、寡聞にして知らなかった。ただ、前記事でも言及したように、SMS認証が生活に密着したウェブサービスを利用することへ必須となっており、事実上の社会的IDとし機能している現実があるわけで。
現時点(2020年10月)の時点で、Apple IDの新規取得にはメールだけでなく、050以外の電話番号認証(音声・SMSどちらかでの)が必須となった。
まだLINEのように、完全に050以外の音声通話番号と「一対一」で紐付けられないからマシではあるが、Googleアカウントについても逐一電話番号による承認を求めるようになってきている。(こちらも「まだ」回避可能だが……)
また、Microsoftアカウントについても、同様に求められる状況がある。
このように、一般的なITサービスにアクセスするためだけでも、「つながる電話」(050番号)ではカバーしきれない状況がどんどん進行している。
となれば、賃貸契約における「与信」を代行する家賃保証会社のように、それを代行する業者がそりゃあるだろうな、という雑感がある。
ではどうするのか。
コロナ禍で困窮し、オンライン環境を持たない「子ども」については、民間の複数の支援団体が「モバイル無線LANルーターとPC端末の無償貸与」という支援スキームを始めている。
ただ、こうした施策が現時点で子ども以外の一般の方に実施・援用されるとは考えにくい。
(小規模では現状既にある/今後ありえるだろうけど、通信が電気・ガス・水道といった生活インフラと同等である、という社会的同意が今後進んでいかないと大きく展開するのは厳しいのではないかと個人的に)
なので、少しずつ。
「つながる電話」にしろ今回の無料Wi-Fiもそうだが、こうしたデジタル社会から疎外された方々の「ラストワンマイル」を担保する試みは、今後ともしつこく考えて実践を広げていきたい。
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