風邪の日によく見ていた夢

久しぶりに風邪をひいた。
喉の違和感から始まり、やがて全身を倦怠感が覆う。風邪を自覚した頃、喉の痛みが増すとともに体温も上昇し発熱症状が出る。こうなるとしばらく辛い。

今は熱も引き、喉の痛みもほぼ消えて、鼻水が辛い時期だ。自分の今までの傾向からするとこの段階まで来ると治りが近い。

ここまで風邪らしい症状が出るのは珍しい。普段からそれなりに健康的な生活を心がけているおかげか、風邪をひくことはほとんど無い。

だが今でこそ丈夫な僕だが、小学校低学年ぐらいまではしょっちゅう熱を出して寝込む子どもだった。
寝込んでいる時は枕元で加湿器がポコポコ音を立てていた事を覚えている。

風邪をひいて寝込んでいる時に決まって見る夢があった。

それは終始俯瞰的な映像だ。そこに「僕」という人間が介在する余地は無い。ただテレビの画面をぼんやりと眺めているようなものだ。 

夢は決まって真っ白い空間に小さな犬小屋が映るところから始まる。
犬小屋はアニメによく出てくるような典型的な犬小屋で、建築様式で言えば切妻屋根で妻入りの犬小屋だ。

画面はだんだんとその犬小屋の入口に迫っていく。
ただどこにも犬はいない。入口はポッカリと空いた穴のようなもので、中には黒い空間が広がるばかりだ。
それでも画面はひたすらズームしていく。
入口が間近になり、黒い空間が画面に広がっていく。そして画面が黒い空間にでいっぱいになろうとする頃、

キリキリキリと黒い空間で回るものが見える。

小さな歯車だ。それはどこから現れてどこに繋がっているのかも分からない。ただ小さな歯車が1つ回っているだけ。キリキリキリと音を立てながら小さく回っている。

いつの間にか歯車は2つに増える。すると3つ、4つと歯車が加速度的に増えていく。
気がつけば画面は歯車、歯車、歯車だらけになって、

暗転。

ここで場面は変わる。
1人の男が地下のようなところで横穴を掘っている姿が見える。探検家のような格好に、シャベル1つでひたすら穴を掘り続けている。

画面の上にゲージのようなものが表示される。
男が横穴を掘れば掘るほどゲージは溜まっていくようだ。
男が掘る、ゲージがたまる。
男が掘る、ゲージがたまる。
これを繰り返し、やがてゲージが最大までたまった。

突如男は地上へ飛び上がり、空まで舞い上がる。
男の背後には虹が出ていた。


ここで必ず目覚めていた。
今文章に書き起こして見ても全く意味の分からない夢だ。最後の最後で無理矢理ハッピーエンドにしているような感じが微笑ましい。とは言え、この夢を見ている段階では風邪は完治していないので、たいてい寝汗びっしょりの状態で目覚めていたのだが。

この夢を最後に見たのはいつだろう。
気がつけば体調を崩してもこの夢は見なくなっていた。 

家族や友人に聞くと、その人なりの「体調が悪い時の夢」を見る人が一定数いた。これはどういうシステムで発生しているのだろうか。意外と研究とかされていたりして。


今の風邪はもう治りかけだが、結局あの夢は見なかった。なんとなく、ちょっとだけ、あの夢を懐かしく思う気持ちを持っていることに気がついた。


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