見出し画像

仮面ライダーV3・40話…段取りの無い戦いに滲む死闘の空気

今週、YouTubeの東映特撮チャンネルで仮面ライダーV3の39,40話が配信されました。

40話はデストロン幹部、ツバサ大僧正との決着が付く回です。ツバサ大僧正の変身であった死人コウモリに敗れるも、おやっさんの特訓でV3マッハキックを会得しリベンジを果たす、というストーリーです。

これぞ昭和仮面ライダー、という一編

昭和仮面ライダーを語る際に、

・Aパートでの敗北
・特訓での新技習得→リベンジ
・幹部が怪人化

この辺はよく語られる要素ですが、この回にそれが全て入っており、そこに少年の回復も備わったドラマ、風見志郎のバイク上での変身など見所が多い名編といっていいと思います。

珍しく弱気になる志郎に、藤兵衛が激励を込めて一喝します。左目の上に痛々しく傷の残る顔を思い切りぶつという、あんまりな一発ではありますが(笑)。その後藤兵衛は少年のためにやってみせろと檄を飛ばし、特訓に入ります。まさに「昭和の親父」です。

しかしこのシーンを見て、志郎が気の毒だ、とか子供の教育に悪い、などと言う視聴者がいたでしょうか。おそらく現代だと、NGになってもおかしくない…のだろうかと頭をよぎってしまいますが、これがもうおかしい。常々思っていますが、特撮ヒーロー物は、主人公と敵が命のやり取りをしているものです。暴力的なシーン、残虐な描写を見て、視聴者はヒーローの強さ、正しさに共感していく、その普遍性が半世紀以上続いている理由です。表現規制が厳しくなる一方で近年の作品に見られなくなった描写を見るたび、「作品」として退行しているのではないか、と思ってしまうんですね。

派手さはなくとも、真に迫るもの

シン・仮面ライダーの件で庵野秀明監督が、仮面ライダーのアクションについて「段取りが無いのが、良い所」と述べていました。

このV3・40話、新技マッハキックで死人コウモリとの空中戦を制する訳ですが、それが決め技になっていません。地上に降りた後も戦闘が続き、死人コウモリはなんと地面を割るという大層な事をして、V3を地下に落とします。そこで戦った後地上に戻り、さらに戦いは続くのですが突然「マッハキックで羽根を折られた」と言い戦闘不能に陥ります。本来の姿に戻り、

「死が…来た…」

とよろめきながら最期を迎えるのです。
スマートに終わらせるなら、マッハキックで終わるべきです、もしくは正体が暴かれる、くらいの変貌が新技によって起こってもいいはずです。「おぉ、ついに特訓の成果、マッハキックが炸裂した!」と見せておいてその後1分ほど戦いが続いているのはどうにも腑に落ちませんが、毎回大技で終わるわけではないんだよ、死人コウモリはデストロン幹部だからそれくらい強いんだよ、と思う事でなんとか納得できるような戦いでした。

おそらく、この辺はアクションシーンを即興的に撮っていた、また編集していた体制ゆえの形ではないかと思いますが、これも昭和ならではな感じがありますね。
今と違い、必殺技だからといって光るエフェクトがついたりしていませんし、ヒーローのターン、敵のターンみたいなわかりやすさも無くただ殴り合っているような戦闘シーン。しかしそれが、その段取りの無さが「リアルさ」として視聴者に伝わっていたという側面もあるかもしれません。

ふと見返してみると、死人コウモリは既にマッハキックの時点で致命傷を負っており、最後の力を振り絞っていたのではないか、という風にも見えて「散りゆく悪党の意地」を感じる場面とも受け取れます。最後は人間の姿で爆散するところに、幹部の美学すら感じますね。

物語のパターンはハッキリしたものがありながら、粗い部分を想像で補完できたのが昭和特撮の面白味だと思っています。
あと、V3は改造人間ですが血は赤いんだな~が意外だった、40話の感想でした。

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?