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ウルトラマンブレーザー第22話感想…怪獣保険の営業マン、これこそ「特撮ドラマ」!

今朝のウルトラマンブレーザー第22話「ソンポヒーロー」が滅茶苦茶面白かったので、昂りのまま書こうと思います。

★STORY↓
日本怪獣損害保険株式会社で働く、しがないサラリーマン・テツオ。人生に大きな目標もなく、やるせない日々を過ごしていたが、怪獣保険の営業先のミチコとのやりとりのなかで、自分の人生を見つめ直していく。そんな中、アルプスの山を裂き現れるレッドキングとギガス。怪獣が暴れている町にはミチコが住んでいる。どうする、テツオ?!
(公式ページより引用)

面白シリアスの極地

まず「日本怪獣損害保険」というのが面白いですよね、冒頭のCMもそうですが、更にその前にウルトラファイトのノリでレッドキングとギガスのケンカを見せています。怪獣の戯れも人間にとっては大事なのだ、という対比になっているようで、リアルな社会の実情と夢想性を併せ持った話だと最初に提示してきます。そこに営業成績が振るわないサラリーマン、テツオが一軒家に一人暮らしの年配女性、ミチコと出逢うところから人情話が始まる訳ですが…。

大きな目標がなくてもいい、という人生の先輩の言葉。
旦那さんに先立たれ、一人で生きてきた人の真実なのでしょうね

会ったばかりの営業マンながら、家族の様に交流する二人。テツオがバリバリに成果を上げている男ならさっさと退散していたところですが、会社に戻っても怒られるだけだし…とお婆さんの家の手伝いに取り組んだのは、心情としてリアリティがありますし、ミチコさんの人間としての温かみが素晴らしかった。このシーンで…

「たまたま入れた会社がここだっただけ」
これは現代社会あるあるな感じでテツオの不遇を際立たせていますし、歩き回って裏道に詳しくなった、が後で効いてくるのが脚本の技巧になっていました。ホッコリする場面ながら、シビアな情報が溢れている名シークエンスと言って良いでしょう。

この回全体に流れる「怪獣が出現する社会」のリアルには、仮面ライダークウガに似た空気感も感じますが、どこかコミカルな色でその不穏さが薄められているのが、ウルトラシリーズの持ち味ですね。

特撮的にも、面白く、おかしく

「アニキ、どうします?」
って、顔でしかないギガス

今回の登場怪獣はレッドキングとギガスで、初代ウルトラマン25話「怪彗星ツイフォン」に倣ったものになっています。ですが冒頭にケンカしているシーンがあり、それを踏まえて市街地に現れた時に主従関係が出来上がっている、という物語性を見せています。まずアースガロンが立ち向かいますが、レッドキングのパンチがギガスの顔面に直撃したり、この二匹のやり取りは怪獣漫才になっていました。ギガスが子分的ムーブで連携を見せたりもしますが最終的にはブレーザーとアースガロンの共闘の前に倒されます。水爆云々の話はありませんでしたが、レッドキングの見た目がしっかり二代目になっていたのは、当然でありながら「ちゃんとしてる」と思いましたね。

で、オリジナルの回だともう一匹、ドラコが居たのですがそちらは残念ながら出番なしでした。…と、思わせておいて…

ここの怪獣の鳴き声が、ドラコのものでしたね

このCMも、テツオが出していた資料もしっかり作り込まれていました。
じっくり観たくなる要素でしたね。

「誰も傷つけない」とはこういう事

「ソンポヒーロー」の大活躍です

怪獣が現れ、いの一番にミチコさんを心配し助けに行くテツオ。この戦闘をバックに住宅地を逃げるシーンこそ今回のクライマックスですね。テツオが営業の仕事で培ったことが人助けに活きる、まさにヒーローでした。温かいご飯をいただいた恩に報いるため、冴えないサラリーマン男が輝く場面です。歩き仕事なので、足腰は強かったんですね(笑)。

こういう画面こそ、巨大特撮の醍醐味ですね

今回のメインであるテツオやミチコさんは、スカードの面々と会うこともなく完全に別軸の物語として進んでいきます。であるからこそ、ブレーザーや怪獣を完全に「生活に降りかかる現象」として観ている視点がこの話の肝としてエンディングに効いてきていたんですね。

怪獣が倒されたものの、家は…というミチコさんに対し、「やり直せます、そのための保険屋です」と笑顔で応じるテツオ。
そうなんです、あくまで保険屋の話なんです。「また怪獣が現れても、スカードやウルトラマンが~」ではなく、生活を取り戻せるようにお手伝いします!という保険会社がヒーローな物語なんですね。こういう話だと、大体、

「保険会社は強引に契約を取ろうとする悪質な業種である」
「外回りの仕事は報われない、散々な仕事」

こんな雰囲気に持っていって、テツオが辞めて別の道を行く…みたいな締め方が一般的かと思います。しかしそれだと、保険の仕事に携わっている人からすると不愉快な話になってしまいますよね。今朝のブレーザーはキツい仕事である事も描きつつ、顧客としっかり向き合ったテツオのサラリーマン人生に光が差す、という決着になっていて、本当に「誰も傷つけない」鮮やかな話である、と感じました。

この「誰も傷つけない」は、亡くなった方への賛辞としてよく使われる印象を持っていますが、使い方としてはこちらがより正確だと思います。

そしてそういう着地に持っていきながら、やたら横文字を多用する嫌味な若手社員の頬を叩く格好で話が終わり、スカッとする締めにもなっています。

大体コイツ、補償の段階まで考えてなさげ
契約取ったら終わり、な考え方なのが露骨に出ていましたね

テツオは顧客と素晴らしい出会いがあり成績も上向いてきたことで、揚々と外回りに出かけていきました。

全体を通して、ゲストキャラによる人情噺のとても良くできた一編でした。初代ウルトラマンのオマージュもありつつ特撮も2vs2の大立ち回りを見せ、現代社会への風刺とハッピーエンドにまで持ち込む。
これだけ盛りだくさんで、まとまって一話完結なのが凄まじい完成度だと思いました。ブレーザー、過去にも良いと思った回は記事にしてきていますが…。

今朝の22話もここに並ぶ、「神回」でしたね。
もう番組も終盤ですが、最後まで楽しんでいこうと思います。

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