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「堕ちていく物語」、シン・仮面ライダーの全体像を読んでいく

遅ればせながら昨日、「真の安らぎはこの世になく」第五巻を購入、読みました。

言ってしまえば、SHOCKERの漫画です

昨年、シン・仮面ライダーの公開直前に連載が始まったコミック版で、緑川イチローの少年時代からを描く映画のエピソード0的な内容です。帯にあるように今回の巻でついに、バッタオーグに改造される前の本郷、一文字が登場します。

本物の「リメイク」である証拠

先日、アニメのリメイクにまつわる記事を書きましたが、庵野監督のエヴァ以外のシン・シリーズ(ゴジラ・ウルトラマン・仮面ライダー)もまた日本を代表する特撮作品のリメイクと言って良いと思います。それぞれ、元になったのは1作目、初代なんですね。
この漫画版シン仮面ライダーを読んでいると、やはりこれも初代仮面ライダーの漫画版、つまり石ノ森章太郎先生による原典と同じ香りを感じます。

昨年読みましたが、テレビドラマ版よりも毒の強い描写が印象的でした

シンシリーズはそういう点も含めて、元の作品をしっかりリスペクトした「真面目なリメイク作品」なのだと思います。
かつて東映の白倉氏が少年時代に仮面ライダーを見て、「これは親殺しの物語なんだ」と感じたと語っていましたが、その通り仮面ライダーは悪の力を持った、正しき心のヒーローであり自らの生みの親を倒す…という側面があります。それは令和の時代に至るまで守られている大事な要素です。
原点である初代仮面ライダーにおける「悪」とは、世界征服をもくろむ秘密結社、暴力によって人を苦しめる存在でした。それは社会生活を送る我々にとって実に明快なものです。
対して、令和の時代に描かれたSHOCKERの物語は、暴力を忌避する少年が世界を正そうとする結果、逆に暴力に呑みこまれていくさまを描いています。結果としてハビタット計画という、暴力より恐ろしい思想に辿り着いてしまうのですが、現代性という意味でこの上なく「グレー」な立ち位置、リアルな存在です。この2020年代に悪の組織が存在するとしたらこういうものだ、をステレオタイプではなく創造した結果ですね。まさしく
「令和の仮面ライダー」、それがシン・仮面ライダーなのだとこの漫画版が伝えています。

映画の副読本として是非

3巻くらいで終わると思っていたので、ここまでしっかり描かれるとは…と感服しています

この漫画、主人公たるイチローが映画のラスボスに至るまでの過程を描いているのでいわばスターウォーズのエピソード1~3的な趣きを持っています。それでいて映画と矛盾がないようにかなり緻密に描かれている印象があり、シン仮面ライダーファンの目ざとい審美眼にも耐えうる作品だと思いますね。
最初こそ世界のために!という熱さがあったイチローが、映画のような世捨て人の雰囲気を纏うようになったその経緯は痛々しくも非常に惹きつけられるものがあります。個人的に、最初はクモオーグをSHOCKERの先輩として「クモさん」と呼び兄の様に慕っていたイチローに違和感がありまして…。ご存じのように、映画では
「クモオーグのプラーナが消えたね。緑川のバッタに負けたのかい」
と、実に冷淡に語っていました。クモオーグに対し何の感情も感じられません。
ですが今回の5巻で、なぜそうなったかが解ります。
「なるほど、こういうことがあったのか…」と膝を打つ思いでした。
ネタバレは書きませんので、ぜひご一読を。

この作品、次の6巻ではいよいよ映画本編の時間軸に突入していきます、ただの前日譚で終わらないようで期待が高まります。カバーの裏に、脚本の山田胡瓜先生が「ネームは6巻最後までたどり着いています」と書かれており作画の藤村先生ともどもモチベーションの高さもうかがえます。あえて作品名は出しませんが、人気の割に作者のやる気が微妙な漫画もありますので、それを考えるとこの漫画はこの先も絶対に面白いだろうな、と確信しています。

何より、次の6巻の発売予定日が11月19日となっているので…

もう、おわかりですね。祭りです。
盛り上がってまいりましょう!


どっちが悪者かわからないスチール
ヒーローと悪は紙一重、それが仮面ライダーです(なんか違う)

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