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映像作品感想

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映画中心の感想集です
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2022年11月の記事一覧

映画感想「アイの歌声を聴かせて」(Filmarksより)

予告を観た時から、創作者センサーが反応していたので鑑賞。 研究者である母と二人暮らしの女子高生、サトミの学校にシオンという転校生がやって来る。天真爛漫なシオンに振り回されるサトミだが、母の仕事とシオンの関係に気付き非日常に巻き込まれる…。 素晴らしかった。 AIであるシオンの突拍子もない行動によるドタバタは定番だが、メインキャラ全員のキャラが立っており高校生らしい悩みがシオンによって解決されていく前半は爽快。 その後シオンに危機が訪れ、サトミ達が一丸となって救出に向かう流

映画感想「エルヴィス」(Filmarksより)

初日IMAXにて鑑賞。 ロックンロールを世界中に浸透させたスターの伝記映画。 何曲か聴いた事がある程度で、経歴や人間性などほぼ知らない人物だったので勉強する感覚で鑑賞した。 印象的だったのは、1950年代のアメリカにおける人種差別問題。今見ると異常さしか感じない差別意識がエルヴィスの音楽を革新的なものにしたらめたのだとよく解った。 マネージャー・パーカー大佐はもう一人の主人公で、守銭奴な面とそれ故にエルヴィスを大事に扱っていたのも判った。醜悪さと好々爺の両面を演じるトム・ハ

映画感想「ウルトラマントリガー エピソードZ」(Filmarksより)

二年ぶりのウルトラマン映画。 初めて公開初日で自宅鑑賞という形になった。 これも時代である。 TV最終回の後日談。 GUTSセレクトに新隊長・トキオカが就任し怪獣退治が行われていたがある筋から、光となったトリガー=ケンゴの危機が知らされる…。 キーとなるのが中村優一氏演じるトキオカ隊長。中村氏の演技力が抜群で、彼が物語を引っ張っていくので最後まで芯のある展開になっていたと思う。さらに問題となる敵は、前作Zのアイツである事から合作映画として巧妙なクロスを見せている。 凝った

映画感想「TELL ME hideと見た景色」(Filmarksより)

hideの弟、松本裕士氏の自伝を原作とした没後ツアーまでの軌跡を綴った作品。 四半世紀に渡ってXファンである自分にとっては見逃せない作品だった。 98年当時、今ほどネットも普及しておらずテレビ、新聞、週刊誌からしか情報が入らなかったゆえに、バンドメンバーや事務所の混乱を目の当たりにすると納得と同時にやりきれない気持ちが湧いてくる。 更には誹謗中傷から死を考えるまでに追い詰められる様は、24年経った現代の方が身近に思える事象なのが重ねてやるせない。 実現に漕ぎ着けたライブシ

映画感想「映画 五等分の花嫁」(Filmarksより)

知人に薦められ、一週間でTV版24話を詰め込んで鑑賞に向かった。 土日は全回満席で、月曜の夜になったのが人気を思い知らされたポイント。 TVの三期を一気に見せられた気分。 キャラ全員が丹念に描かれていて、薄い、浅い人物は一人もいない。風太郎が貧乏なのは周知の通り、中野姉妹もかつてはそうだったと仄めかされてはいたがその過去にも触れており思い残しの無い完結作になっていた。 映画として見ると長尺で、スマートとは言えないシーンの羅列もあるものの1vs5の恋の決着という明確なゴール

映画感想「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(Filmarksより)

京アニ公式の予習をして、鑑賞。 度重なる受難を乗り越え公開と相成ったTVアニメの完結編。 戦争に傷付けられた人々が力強く生きる様と、想いを伝えることをテーマに描かれる叙情詩の様な映像作品。 1950年代から70年代にかけて同様のテーマを扱った「戦後映画」は世界中で作られ、「我等の生涯の〜」など、アカデミー賞に輝いた傑作も多い。 このヴァイオレット・エヴァーガーデンもそれに匹敵するドラマとメッセージに溢れている。 京都アニメーションのクオリティは長尺を感じさせない美しさがあり

映画感想「トップガン マーヴェリック」(Filmarksより)

36年ぶりの二作目という、類い稀な続編。 二年の延期を経てようやくお目見えとなったが、伝説的な前作に引けを取らぬ骨太人間ドラマの大作だった。 まず時代。もはや人間のパイロットが時代遅れにならんとしている現代に、老兵と呼ぶのは失礼なほど若々しいマーヴェリックの腕と心意気。 そして過去。続編と言うより前後編ではないかと言うほど、マーヴェリックとルースターの関係性は色濃い。 ミッションの困難さは無情な自動兵器の恐怖感と相まって緊迫感を生々しく伝えてくる。 訓練の段階で生命の危機

映画感想「カラダ探し」(Filmarksより)

主題歌・挿入歌目当てで鑑賞。 予備知識は上映数分前に漫画版を1話だけ読んで臨んだ。 基本的にホラー苦手人間ゆえに緊張感があったが、ドッキリ幽霊ではなくスプラッター系だったので心臓の負担は少なく助かった。 橋本環奈が冴えない女子、は無理があるだろ〜と思いながらも他の5人も美男美女。体育会系からオタク、高校生らしからぬギャルなど見慣れた構成の主要人物の織りなす学園ドラマだった。 ループ物、友情物、そこにホラー要素を足している感じで目新しさはなく、どんでん返しも無く淡々と終わっ

映画感想「シン・ウルトラマン」…昭和41年の疑似体験

本日、AmazonprimeVideoでシン・ウルトラマンが配信された。 今年の一押し映画について拙文を書きたい。 80年代生まれのウルトラファンが持つ「渇き」 まず自分は、ちょうどウルトラシリーズが過去のものになっていた時代に生まれ、再放送、ビデオレンタルで観てウルトラ大好き、な少年だった人間。雑誌や怪獣図鑑をボロボロになるまで読み込んでいた事もあり、映像を観る時は大方内容を知ってしまっていた。それがつまらなかったか、と言えば決してそんな事はないのだけど。 常々、もっと

映画感想「天間荘の三姉妹」(Filmarksより)

先に脚本を読み、気に入ったので鑑賞。 三ツ瀬という地の天間荘という旅館。 そこに、何故自分がそこに来たのかも知らない小川たまえがタクシーでやってくる。 出迎えたのは腹違いの二人の姉で…。 図らずも来週公開の某アニメ映画と同じ題材である人生ドラマであった。 あの世と現世の狭間で繰り広げられる人間模様。 とにかく役者陣が素晴らしかった。約10年前に映画でのつたない演技の印象しかなかった大島優子が立派な女優になり、三姉妹の長女を見事に演じていて感服した。 そして母や客の老婆、父

ドラマ感想「仮面ライダーBLACK SUN」…50年の重みと複雑さ

「仮面ライダー50周年記念作品」 先月28日に全10話一挙配信という形でお目見えしたメモリアル作品、「最後の昭和ライダー」であるBLACKのリメイク。 全話観終えるのに一週間かかったが、ネット上では配信日の午前中に終えてるファンもチラホラおり、オタクの熱量を思い知った次第である。 これも50年コンテンツであるがゆえかな、と思う。 で、今作は歴史あるシリーズの強み、弱みが溢れたある意味快心作だと感じる。 一言で言うと… 平成無き、仮面ライダー この作品は極道もので有名な白

映画感想「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(Filmarksより)

初日初回鑑賞。 シビル・ウォーから始まったMCUスパイダーマンの完結編。 前作で、全世界に正体を晒され汚名まで着せられたピーター。それは友人達の人生にも影を落とす。 ピーターはかつての戦友、ストレンジに魔術による世界のリセットを嘆願するが…。 トムホランド版完結作、に留まらずスパイダーマン映画の完結作となっている今作。 リブートによる作り直しを作品の中で正当に消化し、ピーターパーカーの物語を着地させている。 もはやネタバレもネタバレだが、三人のスパイダーマンが集結しそれぞれ

映画感想「ONE PIECE FILM RED」(Filmarksより)

ONE PIECEは本当に序盤を読んだことがあるだけの知識で、これがアニメ版初鑑賞といっていい人間だが、とても良かった。 観るキッカケはAdoにハマっているからだが、ウタはその有名になるまでの境遇やその経緯、そのままAdoの二次元版と言っていいキャラ。加えて、次第に明かされるエレジアの謎やウタの本性は物語に引き込む魅力に溢れていた。 原作に疎いので、終盤出てくるキャラやウソップの親子のくだりなどはなんとなく観ていて流すような感覚だったが、全編に渡って流れる歌で気持ちは随分

映画感想「すずめの戸締まり」(Filmarksより)

初日午前中ながら上映6回目の回を鑑賞。 平日とは思えない入りに感嘆した。 先に小説版を読んでいたので、映像での見せ方を確認する感覚で観ていた。結果的には想像を超えるような場面はなく、芹澤の車のくだりは小説の方が面白かった程。 だがすずめが草太に抱く恋愛感情は、映像で見る方が腑に落ちる部分があった。これは表情と声の力だな、と思う。 もう周知の事実だが、今作は東日本大震災を元にしており直接的な描写もある。それにより顕著になったのが「大切な人との別離」というテーマ。 前二作でアニ