やりたいことと向いていることは、違うけれど…

今まで様々なアルバイトを経験し、訳あって派遣社員などもしてきたが、色々やってみて分かったのは、接客業が自分に向いている、ということだ。
元々、人見知りをする性格で中々人に話しかけることもできず、友達を作るのも苦手だったから、学生時代は新学期がいつも憂鬱だった。クラス替えがあるので。
それに私は愛想笑いというものができないし、そもそも愛想が無い。生まれてくるときに母の胎内に忘れてきたに違いない。幼い頃から親には「おまえには愛想がない」、「女の子なんだからもっと愛想よくしなさい」などとさんざん言われたものだった。

しかしどうやら、こういう性格でも接客業は案外務まるものらしい。
接客業の仕事を始めたきっかけは、時給だった。高時給に心を引かれたのだった。一口に接客業と言っても色々あるわけだが、経験した中でも特に、アパレル販売員が一番自分に向いていたと思う。天職かも? と思ったのは、まだ仕事を始めて1週間なのにお店で個人売り上げ1位になれたからだった。売り上げという、分かり易い数字が私に自信を持たせてくれたのだった。

自分自身、お高めの服屋さんに入るのは緊張するし、店員さんにグイグイ来られると怖いと思ってしまうタイプなので、正直服屋の店員が務まるかなんて不安だった。けれど、こういうことされたら嫌だな、とかプレッシャーになるな、というポイントはよく分かっているのでそれを活かせたのかもしれない。もちろん、最初はどうやって売ったらいいのか分からなかったので、服を畳むふりをして店長の接客技術を横目で見て、その売り方を学んだものだった。

なるべく主観はお客様には伝えずに、客観的情報(商品の特徴、類似する他のアイテムとの違い)のみを伝えるように心がけていた。
だから、お客様が「かわいい」と言うまでは絶対に自分から「この服かわいいですよね~」とかは口にしない。そのアイテムを「かわいい」とか、決めつけたくなかった。その服をどう思うかなんてその人の自由だし、人の感性ほど自由なものは無いと思うので。

お客様によっては全身コーディネートして欲しい、などの要望や、これに合う服ちょうだいなどの中々センスが問われる要求もあったりして、大変だったけれど、頑張ってコミュニケーションを取っていく過程に正直、ちょっと楽しさを見出していた。これは新しい感覚だった。

接客業を経験したおかげで、年齢性別を問わず初対面の人ともそこそこ話を盛り上げることができるようになったし、何より人に対して緊張していても明るく接することができるようになった。

現職は私がやりたいことをするために必要な仕事だから、正直自分に向いているかは分からないし、向き不向きを考えたら多分病んでしまう。
接客業はやりたい仕事ではなかったものの、結果的には経験して良かったと思っている。それに服屋さんで働けたので、洋服に詳しくなれたという、副産物もある。

きっと私の天職は接客業だ。でも、私は自分がやりたいことのために、これからも今の仕事を続けていく。

#天職だと感じた瞬間

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