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おどりおどりて、どこまでも

ミュージカル『おどり村と妖の森』
トライアウト公演が終演し、アーカイブ配信も終わり……

公演が終わってすぐに次の現場が始まったのと遅筆な性分が合わさって(9割そっちのせい)、書き上げるまでに2ヶ月もかかってしまいました。

もうこれ、完全に自己満散文だし、下書きにしまっておこうかな……

とも思ったんですが、やっぱり大切な作品の区切りは残したくて、公開することにしました。せっかく書いたし!

お時間と興味がありましたら、お付き合いくださいませ。


物語の話。

(のっけから「頭痛が痛い」みたいな見出しになってしまった)

なんに関しても周りからの影響を受けやすいタイプだと自負していますが、『おど森』には私自身の世界の捉え方そのものをぐわっと広げられたような気がします。

生まれ育った日本という国に古くからある、けれど今まであまり意識してこなかった八百万信仰や、知識や技術よりも前にある歌や踊りの生まれる源について、知ったり、考えたり。

そして、とてもシンプルで、だからこそ忘れてしまいがちな
「今、ここにあることに意識を向けて、日々を大切に生きる」ということ。

日々のあれこれに追われると、「あの頃はよかったなー」とか「どっか行きたいなー」とか、今ここじゃないどこかに思いを馳せがちになるじゃないですか。そんな日々は、後から振り返ると中身がすかすかなんですよね。
この物語に出会って、最近の自分はどうやって生きてるかなあ、と省みるようになりました。

それから超個人的ポイントですが、『まるゆめ』からまるさん作品のファンだった私としては、言葉選びと距離感がとても好きでした。

生身の人間が目の前で同じ空間に存在しながら虚構を演じる舞台演劇。
その性質と相俟った、現実のようで夢のような距離感。
すごく近いわけじゃない、でも離れていかない。

音・リズムとしての心地よさもありつつ、衝動や感情を何度でも新鮮に立体化させてくれる台詞や歌詞。数ある言葉の中からなぜこの言い回しが選ばれたのか考えるとき、そこにむっちり詰まった愛と熱量を感じました。
まるさんの言葉は誰も置いてけぼりにしない。


……とまあ小難しく書いたんですが、要するに言いたいことは
「この物語に出会えてよかったー!」です。
今度はお客さんとして味わえる本公演が今から楽しみ!


《よもやまこばなし・1》
稽古休みの日には山を登って大自然感じてみたり、ウズメヒコイズナの3人でそれぞれの役に縁のある神社を巡ったりしました。
公演が終わって数日後、ふと恋しくなって脚本を読んでいたら、ヒコの
「こうやってすっかり普通になっちゃった時間も、わたしはだーいすき!」
という台詞が心に留まりました。
そうだなあ、楽しいお祭りが終わっても愛おしい日々は続いていくよね!

八咫烏で有名な十二社熊野神社。



役の話。


役者たるもの舞台上に置いてきたものが全て。
……とかカッコつけたかったんですが、本能に抗わず書き残すことにします。

はじめて脚本を読ませて頂いた時、魅力的なキャラクターたちの中でもひときわ演じたい!と惹かれたのがイズナでした。

村で腫れ物扱いを受ける、無愛想で捻くれ者の男の子。


普段から少年役を演じる機会が多いからというのもありますが、何より、彼の孤独を代弁したいと強く思いました。

きっと誰でも、どうしようもなく孤独を感じる瞬間ってあるんじゃないでしょうか。
そういう時、私は、本でも映画でも音楽でも、自分の感じている孤独ごと肯定してくれるような作品に救われてきました。
もっとしっくりくる言い回しがあるような気がするんですが、昔から「あらゆる孤独の味方でありたい」という思いがあって。(それが表現を続けている理由のひとつなのかもしれません)

小手先のイメージでこなしてしまわないように、あまり自分でイメージを固め過ぎず、さらに言えば男役であるとかもあまり意識せず、その場で感じること・周りのみんなから受け取ることを大事にしよう!と臨みました。

終わって振り返ってみて、私が積み上げたイズナは、
本当は人が好きで、誰かと繋がりたい。
傷つく痛みを知っているから大事な人に同じ思いをさせまいと背負い込んでもがいている。
そんな不器用で優しい、人間臭い男の子だったのかな、と。

千穐楽が終わって家に着いた瞬間、自分からイズナが離れたのを実感して寂しくなったけど、今の私にできるすべてを尽くして彼に寄り添えたと思っています。

私も君に出会えてありがとうだよ!イズナ!



《よもやまこばなし・2》
ある日の通しの「五十鈴萬唄」(通称あるおるいるじゃ)のシーン、歌い踊るみんなを眺めていたら自然と涙が出てきました。
それまで心をぎゅーっと固く覆っていた不信、悲しみ、怒り、強がり…といった重たい鉛みたいな感情が、ぼろぼろと剥がれおちていくような感覚。大袈裟な言い方かもしれないけど、あれはたぶん解脱ってやつだったんじゃないかな。


カンパニーの話。


大人って、約1ヶ月半でこんなにも仲良くなれるんですね。
みんな真面目で愉快で、キュートで一生懸命で、思いやりに満ちていて。
たったひと月半の付き合いなのに1年間同じクラスで毎日一緒に過ごしたかのような、居心地のいいカンパニーでした。

キャスト一人ひとりとの思い出はTwitter(この記事書き始めた頃はまだXではなかった)で呟いたので…

クリエイティブチームの皆様!

作・演出のまるさん。
はじめてまるゆめさんの舞台を観させて頂いた時から、「いつかまるさん作演の舞台に出たい!」というのが長らくの念願でした。
毎回の稽古も、まるさんのくださるきっかけから色々なアプローチで世界観を深めていくのも、『おど森』のことを考えている間ずっと幸せでした。
この物語を生み出し、イズナを任せてくださって、本当にありがとうございました!そしてこれからもよろしくお願いします!


作曲のころさん。
『ひみつの箱には、』を観劇した時、一度観ただけなのに曲がずっと頭から離れなかったのを覚えています。
新しいのに懐かしかったり、ちょっと不気味だけどかわいかったり…とひとつの曲の中にカラフルな魅力があって、あちこちにフレーズの仕掛けが散りばめられていて、おもちゃ箱のような楽曲たち。出番のないナンバーも気づいたら歌えるようになっているくらい、どの曲も印象的でお気に入りでした!今でも時折トラックを聴いています。
(特に「いつか心通う」「五十鈴萬唄」「オーバーチュア」を。笑)


振付の佑介さん。
今回イズナはみんなに比べるとがっつり踊る!というシーンは少なかったですが、見せたいことや伝えたいこと、動きひとつから生まれる効果がとても綿密に練られた佑介さんの振付は、頭でも心でもキャッチしやすかったです。
より良くするためにはどうしたらいいかを的確にアドバイスしてくださったり、さらには演出部的な役割まで……とにかくたくさんサポートしてくださりありがとうございました!


監修・舞台監督の星さん。
あらゆる面から支え、見守り、時にはアンダーまでもこなされていて…
まさにオールラウンダー!演者としてもスタッフとしても活動している者として、私もこうありたいと思いました。リスペクトです。
そんな星さんに楽屋で「イズナいいよ!」と褒めて頂けたのが、文字通り小躍りしてしまうくらいとても嬉しかったです!

脚本から膨らんでいく音楽や振付、舞台美術、小道具…そのひとつひとつが出来上がっていくたびに心が踊って、そこにいち役者として携われたことが本当に幸せでした。
またいつかご一緒させていただけますように!


そしてそして、S&Dサークルの皆さん!
稽古場での音出し、場ミリ。稽古動画を撮ってすぐに見られるようにしてくれたり、稽古から本番まで素敵な写真をたくさん残してくれたり、衣裳や舞台美術の作製、さらには当日の制作周りまで……
いつも笑顔でテキパキとこなす姿に、支えられつつたくさん学ばせてもらいました。本当にお世話になりました!!
学生時代にこのサークル知ってたら私も入りたかった。笑

他にも、見えないところでどっしり支えて下さったスタッフさん、たくさんの方々のお力添えがあったからこそ、今思い返してもあたたかい気持ちで満たされる公演になったのだと思います。
本当に、ありがとうございました!



《よもやまこばなし・3》
Twitterにも呟いたけど…
ウズメ役・ましもんと、ヒコ役・りんりんとの初対面。
顔合わせに参加できず、どんな空気感なんだろう……上手く馴染めるかな……と不安と緊張を抱えながら稽古場に足を踏み入れると、真っ先に2人が話しかけにきてくれて。びっくりしたのと同時に、ほっとして、とても嬉しくなったのを覚えています。
この時の感覚は、そのままウズメヒコとイズナの出会いのシーンに投影してました。
もし顔合わせから参加できていたらこんな風に感じることはなかったかもしれないし、何かタイミングがひとつでもズレていたら、この3人は揃わなかったかもしれない。そう思うとほんとに、すべてにありがとうだな〜。

ウズナヒコ!


まとめ。

歌や踊り、ひいては演劇をここまで続けてきた自分にとって、『おど森』はご褒美みたいな作品でした。なんだか、故郷がひとつ増えたようです。きっとこの先も何度も思い出すだろうな。
私たちの蒔いた種が本公演、その先へと育って広がっていって、また五十鈴村に里帰りできる日を楽しみにしてます。

長々と徒然なるままに書き連ねましたが、最後に!
この物語と、イズナと、カンパニー全員にありったけの愛を。

そして、劇場に足を運んでくださった皆さま。配信で見届けてくださった皆さま。この舞台に心を寄せてくださったすべての方に心の底から感謝を込めて。

では!またどこかで!


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イズナ役・藤田知礼

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