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「動画サイト構築システム ソーシャルキャスト」の誕生に至る経緯と失敗とピポット。時々社内の冷たい目。

こんにちは!
株式会社ストランダーの代表を務めております、青木大輔ともうします。

「動画サイト構築システム ソーシャルキャスト」を皆さんご存じでしょうか?

ほとんどの方がご存じないと思います!!

弊社のソーシャルキャストは動画配信サービス構築でかなり多くの実績を持っているシステムです。特にVOD方式での動画販売サービス構築ではかなりたくさんの採用事例があります。
昨年末には利用ユーザー数が100万人を突破しました。

守秘契約があるものも存在しますのですべての事例について掲載ができないのですが、おそらく日本国内のこの分野の製品の中では一番充実した実績を持っています。

●ソーシャルキャストの導入事例 → https://socialcast.jp/cases/

そんな弊社製品のソーシャルキャストですが、いつどんなきっかけで思いついて、軌道に乗るまでどんな紆余曲折があったのか、という質問をいただく機会が増えてきました。
せっかくなのでそれをまとめたいなと思い、キーボードをたたきはじめました。

きっかけはニコニコ生放送

リーマンショック騒動も落ち着きかけた2010年ごろ、私は株式会社アジャストの社長を務める傍ら、ニコニコ生放送の配信者(生主)として活動をしていました。12年前なので34歳ごろです。
その当時発売されたMMORPGなどゲームを中心に夜な夜な配信しており、ニコニコミュニティのレベルは25(600人弱)でした。
ニコ生に魅了された私は社員に隠れて配信に没頭し、またいろいろな方の配信を視聴するのも大好きになっていました。

ニコ生やってお金が欲しい

ある日、お気に入りの生主さんがゲームをしながらぼやいていました。

「俺は本当に毎日一生懸命お前らを楽しませようとやっているんだ。機材とか準備時間も全部持ち出しでやってるのに、お前らから1円ももらえんというのはどういうことだ!」

「まあ確かになあ」と、私は思いました。

実際に自分でも配信をやっているので、なおさらその大変さはわかります。その方は時間をかけて準備をし、配信のクオリティを上げ人気を集めている方だったので、冗談とは思いつつ腹の底では本気で思ってるかもなと感じました。

私はピンときました。
「ライブ配信でお金が稼げる仕組みを作ってみたら商売になるんじゃないか・・?」

当時はYouTubeやTwitchでの投げ銭もなく、ニコニコクリエイター奨励プログラムも立ち上がっていなかったように記憶しています。
要は、ライブ配信をやってお金を得るということが手軽にできない時代だったのです。
「振り込めない詐欺」という言葉が一般的に使われ始めたのもこのころだったように思います。

インターネットライブでお金が稼げるってよくない?と思った

作ったら商売になるかも!ぜひやりたい!と思った理由は、

  1. ライブ配信はやるのが面白いからシステム作って提供するのも絶対面白いはず!(これはほぼ個人的なやりたいという気持ち)

  2. お金を稼げないニコ生主にお金を稼げる方法を提供出来たら喜んでくれるはず!(役に立てるかなという気持ちがありつつ、手数料ビジネスができるかもという考え)

  3. もう少し枠を広げて、法人に「有料ライブ配信」ができるシステムを提供したい。(法人向けビジネスができそう)

  4. リーマンショックで相当痛い思いをしたので会社に新しい事業を作っておきたい。

1から4に行くにつれてより大人の目線が濃くなっていきますが、新規事業というのは社員も巻き込むわけなので、1~2あたりの面白そうだ!だけでおいそれとやれるものではありません。
また中小企業ではかけられる予算もリソースも限られています。
それらの点を考慮したうえでも、「これは面白い、本気でやってみよう。」と思うことができるアイデアだと自分では感じていました。

全く売れなかった

最初はエンジニア1名のリソースを少し借りてシステムを実装し、デザインや販売用のサイト構築、マーケティング、セールスまで一人でやりました。
これまではWeb制作で、お客様の要望を聞いて1点1点違うものを作って納品するというオーダーメイド的な仕事を中心としてやってきていたので、きまった機能の1つの製品を売るというのはすべてが新鮮な経験でした。(2011年当時はSaaSという言葉も出始めだったように思います)

展示会に出てみたり、つてをたどって放送・メディア系の企業に話をしてみたり、いろんなことをやってみましたが、反応はそれなりにあるもののまったく売れませんでした。
ライブ配信やるのはむつかしくて無理ですよ。配信途切れたらお金もらった人に怒られちゃいます。
テレビでやればいいし、チケット売って会場に来てもらわないといけないですから。
「VODだったら事故もないし、会場でのライブを収録して販売するみたいなことができるので良いかもしれない。」
お話を聞いてくださったメディアや芸能事務所の方々の多くは、おおむねこの3つの話をされていました。

さらに、ニコニコ生放送などをやっている方向けに「個人向けのソーシャルキャスト無償版」というものも同時にリリースしたのですが、全く使われませんでした。話を聞きたいという連絡が1件だけぐらいでしたか。

結局、このシステム「ソーシャルキャスト Ver.1」は、ほどなくピポットをすることになります。

ピポットと社内の冷たい目線

「VODの販売ができるようにしようと思う。」

私は当時手伝ってくれていたエンジニア、井上にそう伝えました。

井上は、「えーっ。あんだけライブにこだわっていたのにいいんですか?」と言いましたが、もうその時はライブを売れるようにするということより、いかにして売れる製品にするかに情熱を燃やし始めていました

「関係ない。やれ。」

と言ったかどうかは記憶が定かではありませんが、井上はあんまり細かいことは言わずに黙ってそれをやってくれました。
そう時間がかからずに「ソーシャルキャスト Ver.2」ができました。

当時私は、オーナーである会長の意向もありアジャストのメイン事業であるWeb制作やシステム開発の既存事業の統括から手を引き、会長と部下たちにすべて任せることになっていました。詳しい説明はありませんでしたが、会長も新しい事業を作らなければ、という思いがあったはずです。
それまで既存事業の中心としてやってきたのにも関わらず、そちらはほぼ手伝わず一人で新しい事業の事をやっているという状態でしたので、社員からしたら「?」な状態であったことは想像が難しくありません。
何やってんだろうな・・・という社内の雰囲気もあり、あまり事業に協力的な社員はいなかったのです。
今思い返すと会社の雰囲気が良い時期ではありませんでした。

自分の首をかけてみた

ただ私はこの事業を必ず黒字化して、会社の新しい柱にすると決めていました。
そこで私はある日、全社員+オーナーの前で話をしました。

「ソーシャルキャストがあと1年の間にうまくいかなかったら、青木は会社を辞める。」

私はオーナー社長ではありませんので、失敗したら責任取って辞めるからと、背水の陣を敷いた形です。

私はよっぽどのことがないと、自分の感情を露骨に表に出しません。
ただこの時は、涙が出るぐらい本気で話をしたような記憶があります。

その時の私は、必ずそれなりの額の売り上げにして黒字化できると、腹の底から思っていましたし、心の底から本気でした。
これぐらい言わないと、社員たちに自分の本気度が伝わらないという気もしていました。

風向きはそういうことで変わるのかもしれない

「辞める」とまで言った時はさすがに社内がシーンとしてしまいましたが、その後ちょっとずつ社員たちが応援してくれるようになってきます。
2013年ごろになるとソーシャルキャストVer.2がはじめて売れ、手伝ってくれるエンジニアが増え、その後営業スタッフも配置できるようになりました。
よりVOD機能を充実させ、パフォーマンスを改善したVer.3の開発をスタートさせることもできました。

1年後に軌道に乗ったかですか?
ギリギリ黒字にはならないぐらいでしたが、間違いなく軌道には乗っていたので、細かいことはだれも言わなかったです。

その後有料ライブ配信をやりたい、という相談も増えてきて、今ではVODだけでない使われ方も増えています。
採用ケースも様々で、有料販売だけでなく、社内向けのクローズド配信なんかでもたくさん使っていただいています。
社員研修や校内VODなんかでもご活用いただけるようになってきています。

良かったなと思うポイント

小さいながら事業として一定の成功を収めることができたのですが、客観的に振り返ってみてよかったなと思うポイントがいくつかあります。

  1. 事業責任者がその分野に詳しい、経験がある、好き。

  2. 同、事業化のプロセスをポジティブに楽しんでいる。

  3. 同、覚悟して本気でやっている。

  4. この分野に可能性があるといわれつつ、本気で取り組んでいる会社があんまりいなかった。

  5. 同じモチベーションを社員に強要しなかった。

上記はとても大事ではないかと思っています。

1について、責任者が事業分野についてやったこともなく好きでもない、という状態では、情熱を燃やすことなどできるはずはありません。やらされていてうまくいくはずがないんです。

2について、商売にしていくことを前向きにとらえて考える必要があります。
好きな部分だけではなく、ビジネスの仕組みや方法論、システムについて、掘り下げて学んで事業を考えていかなければなりません。コスト計算などもしっかりやらないと利益が出せません。嫌儲的な考えを気にしすぎるとなかなかうまくいかないのです。

3について、結局だれも責任をとらないという状況でものごとをやっても、うまくいかないです。
踏ん張れるかどうかは結構こういうところで決まると思います。

4について、先見の明とまでは言いませんが、あれでお金儲けできるのかな?と大部分の方が思っていることを早い段階で取り組み始めることができるかどうかは、大事なポイントだなと思います。

それから5は結構大事だと思ってます。
ずっとトップが暑苦しく事業の成功だけを社員に話し、ハードワークを要求するような感じだったら暑苦しくていやでしょう。
社員は社員の生活や興味があり、自分の人生を生きています。
ただ、なぜこれをやりたいのか、何が面白いのか、成功するとどうなるのか、ということはしっかり伝え続けました。
結果として、淡々と仕事をこなす以上の思いは持ってくれたと思っています。社員のみんななりにこの事業を成功させたい、という気持ちで仕事に取り組んでくれています。じゃなきゃうまくいかなかったでしょう。

ARR10億越えを目指して

なんだかんだでソーシャルキャスト事業は11年目を迎えています。
チームも大きくなりましたし、何より私は2年前にアジャストの社長をやめて(結局やめてる!)、ソーシャルキャスト事業に専念するため別法人「株式会社ストランダー」を作って代表に就任しました。

ただ、いわゆるARRはいまだに10億を超えられていません。
好調になってから数年間、これは私の視野の狭さが原因と言っていいのですが、自分の考えや思いにこだわりすぎた結果、製品としての幅を広げることが出来ませんでした。
コロナ禍のタイミングでストランダーを設立し、チームメンバー各々に仕事を任せるようにし始めて少しずつ状況が変わってきたように思います。

売り上げ利益を伸ばすだけが目標ではない

一方、私はこう考えています。
売上や利益は多いほうが良いに決まっていますが、そのために社員の気や体が病むまでむしゃらに働かせ使い捨てにしてまで売り上げを伸ばしたいとはまったく思いません。
お金だけで幸せは得られないからです。

そんなだから成長できないんだよ、とバカにされたこともなかったわけではありませんが、プライベートでの経験がこの思いをものすごく強いものにしています。(機会があればまた別の記事で書きます)
もちろん、売り上げ利益がなければ給料を払うことが出来ませんから、頑張らなくていいよということを言うわけではありません。
彼ら彼女らの人生を大切にしたいと思い、売り上げの大切さを話しています。

みんなの幸せと会社の発展のスピードの2つのバランスのとり方は難しいですが、試行錯誤しながらアクセルを踏んだりゆるめたりしつつ、ARR10億を目指したいなと思っています。

おわりに

久しぶりに振り返りをしてみましたが、時系列はひょっとしたら間違っているところもあるかもしれません。でもだいたいこんな感じです。
システムをどういう考えで作ったか、ということも機会があればまとめてみたいと思います。事故に強く、かつ安く提供するため変わった考え方でやっています。

本稿は以上です!
面白いなとか、何か思うところがあったら、ぜひお聞かせください!
私のTwitterです。→ @Daddy_Poco

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