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不条理への偏愛

不条理が好きだ。
不条理に分類される作品群が好きなのだ。
別役実氏やケラリーノ・サンドロヴィッチ氏らの不条理劇を観たり読んだりする度に心躍る。
でも私は、不条理のどんな所にそんなに心惹かれるのか。
というかそもそも不条理ってなんだ。
不条理の定理はとても難しい。
ググってみた。

①筋道が通らないこと。道理に合わないこと。そのさま。

そうだ。
まさにそうだ。
不条理作品に登場する人々は筋道の通らない、ズレた会話を展開する。
そしてそのズレた会話が噛み合わないままどんどん発展していき、最後には絶望的なラストを迎える。
そのような作品が多いのだ。
また小説などの場合はその状況下が不条理になったりする。
例えばフランツ・カフカ。
「変身」という作品では朝起きたら体が虫になっていたというとんでもなく道理の合わない設定下で物語が始まる。
また「城」という作品では目的地である城に行こうとするが行くことができないという道理の合わなさが描かれている。

また不条理でググると他の意味も出てきた。

②実存主義の用語。人生になんの意義も見出せない人間存在の絶望的状況。

まさにカフカの作品は人生への絶望が寓話的な形になって物語が紡がれているように思える。
なにせ朝起きたら虫になったり城に行こうとしても行き着けないのだ。
悪夢としか言いようのない状況下である。
しかしその様な不条理な物語に心惹かれてしまうのは私だけではないだろう。
ところでカフカは普段はサラリーマンとして働きながら夜にその様な作品を書いていたらしく、私も普段は働きながら夜中にしこしこ脚本を書いているのでとても親近感を覚える。

また村上春樹の作品も不条理であると感じることがある。
どんな所が不条理だと感じるのだろう。
そうだ、そもそも村上春樹の作品は主人公が理不尽にそして強制的にその不思議な物語の世界に入り込まされる。
その様な状況下が不条理的なのかもしれない。
しかも村上春樹の物語の世界はキラキラファンタジーなどではなく、不可思議で湿った世界観だ。
そのような世界に強制的に送り込まれる状況に不条理さを感じるのかもしれない。
またその物語の細部も不条理だ。
井戸の中に何日も閉じこもっていたり、街で毛髪の薄い男性の数を数えたり。
その様な不可思議で不条理なエピソードを積み重ねることによって村上春樹の作品は作られている。
そういった所も不条理だと感じる一因になっているのかもしれない。

また今書きながら気づいたが、不条理作品はあくまでその理不尽な状況に魅力がないと成立しないように思える。
不可思議でないといけないのだ。
虫になったり城に行かなかったり井戸の中で何日間も過ごしたり。
ただ戦争に巻き込まれただとか、その様な理不尽さでは不条理作品として成立しない。
どこか非現実的で魅力的な設定が必要なのだ。

また私が不条理が好きな理由として、笑える、というのもある。
ガハハと笑えるわけではない。
何かこう心の中でフフッと笑える感じが好きなのだ。
別役実氏の作品もそうだ。
道理の通らないズレた会話は笑える。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏も別役実氏の戯曲を演出したことがあるが、それはじめっとしたシリアスな絶望劇ではなく、あくまでコメディとして演出されていた。
不思議なコメディといった感じで。
そうだ。
不条理劇はしばしばナンセンスコメディとカテゴライズされることがある。
不条理とは笑いと表裏一体なのだ。
その理不尽さ、道理の通らなさがしばしば笑いを生んでしまう。
そのような所も私が不条理が好きな一因なのかもしれない。
不可思議で笑える。
不条理とはなんと魅力的なものなのだろう。

そうだ。
今度5月に私の書いた脚本を演劇として上演する機会がある。
「踊れない夜の嘘つき」というタイトルだ。
これもまた、理不尽に踊れなくなってしまう人々の話だ。
ある種不条理劇と言っても差し支えはないかもしれない。
そんな劇をやりますので、ぜひ観に来て頂けますと幸いです。

なんだか宣伝になってしまって申し訳ないですが笑、以下公演情報の詳細となります。

ダダ・センプチータ
「踊れない夜の嘘つき」

日時
2024年5月
4日(土)15:00/19:00
5日(日)15:00/19:00
6日(月)13:30/17:00

会場
カフェムリウイ
(世田谷区祖師谷4-1-22-3F)

チケットご予約フォーム
https://www.quartet-online.net/ticket/yiopgqv
※役者個別の窓口はございません

作・演出
吉田有希
(ダダ・センプチータ)

出演
サトモリサトル
梁瀬えみ
(演劇ユニット マグネットホテル)
(以上、ダダ・センプチータ)

尾形悟
(演劇ユニット マグネットホテル)
宇都有里紗
大村早紀

制作協力・当日運営
木村優希
(演劇ユニット「クロ・クロ」)

音響・照明
小林和葉

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