演劇は音楽と似ている

演劇というと、なんだか敷居が高そうと思う人が多いと思う。私も、キャラメルボックスという劇団と出会うまで、演劇というと、なんだか自分には縁遠い世界のように思っていた。演劇が趣味なんです!という人のことを、なんだかお高くとまっている人のように印象付いてしまうことが残念で仕方がない。

これは一重に、演劇が誤解を生じさせてしまっているのだと私は思っている。メディアで演劇というものが取り上げられる時、この国では大体、戦争というものに絡んでいる時か、芸術性が高い常人には理解しがたい崇高なものと絡んでいる時がとてもとても多い。それ故に、演劇というものが、なんだかとっつきづらいもののように感じている人が多いのではないだろうか。

映画は気軽に見に行こうと思えるのに、演劇はそうは思えない。もちろん値段の差はあるが、大体2時間くらいの時間を見知らぬ人と席を隣にしながら、1つの同じものを見るという点では何ら相違がないにも関わらず、演劇が映画ほどに市民権を得ている感覚は、正直ない。これは、先ほど述べた演劇が持っているとっつきづらさに原因があると思っている。

ここで最大限のPRができるとすれば、演劇も気軽に見に行ってもいいものであると声を大にして言いたい。「いや、そもそも興味ないし」という人も、もう少しだけ読んでほしい。演劇と音楽は似ている、という話だ。

「音楽が好きです」と言っても、別に違和感は持たないだろう。むしろ、「え、どんな音楽を聴くのですか?」と会話は弾む。そこから、クラシックです、とか、J-POPです、洋楽ですとか、演歌です、ボカロです、K-POPっですとか、色々な音楽の会話が膨らんでいく。しかし、「演劇が好きなんです」という人に、「どんな演劇が好きなんですか?」と聞く人は少ない。そう、私は、演劇というものにもいろいろなジャンルがあるんだということがあまりに知られていなさすぎる、と考えているのだ。

音楽には、童謡のような子どもが歌える曲、J-POPのような馴染みやすい曲、洋楽のようななんとなく格好いいと思える曲、クラシックのような優雅な曲がある。演劇もそうだ。子どもと見て楽しくなる演劇。とにかく笑えて最後に感動する、1つの2時間ドラマのような演劇。シェイクスピアのような格式高い古典演劇。なんだかよくわからん演劇。演劇にもいろいろな種類があるにも関わらず、演劇と一括りにされてしまっている現状があるのではないだろうか。音楽に例えると、音楽=演歌としか発想が膨らまないような状況が、演劇には発生しているのではないか、と思っている。演劇=ロミオとジュリエット、演劇=戦争の悲惨さを伝える、といったようなイメージがこびりついてしまっているのではないだろうか。

演劇にも様々なジャンルのものがある。1人1人にハマる演劇の形が違うにも関わらず、「いや、演劇はちょっと…」と門前払いがされてしまっているのではないだろうか。映画にも自分にハマる、ハマらないがあるのと同様に、演劇にも自分にハマる、ハマらないはあるのだ。そして、すべての演劇があなたにハマらないということはない。演劇の種類はそれほどまでに多様である。

ちなみに私は、途中笑えて、最後に感動して、一緒に見に来た人と「楽しかったね」と笑顔で帰れる演劇が好きだ。しかし、逆の人もいる。ひたすらに不幸で、泣いて泣いて泣いて終わる演劇が好きだという人もいる。もちろん、その他にも色々ある。

劇団四季とか、宝塚とか、2.5次元だとか。全て立派な演劇であるが、それぞれが演劇の1ジャンルでしかない、とわかってほしい。あれが、演劇のすべてでは決してない。AKBグループが音楽のすべてではないことは、多くの人がわかっているだろう。あれも、音楽の1つのジャンルであろう。

私はとにかく演劇への偏見を取っ払いたいのだ。演劇は、誰しもが楽しめるモノであるはずだ。そう信じている。ぜひ、一度劇場に訪れてみてほしい。それがあなたにハマらなくても、その芝居がハマらなかっただけで、決して演劇があなたにハマらなかったわけではない。ジャイアンのコンサートに行って、私に音楽はハマらなかったと思う人はいないだろう。

少しでも演劇に触れてくれる人が増えてほしいという私の切実な願いだ。そして、あわよくば、私が携わる芝居を見に来てほしい。少しでも多くの人が楽しめる芝居こそ、私が目指すところである。

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