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続 引っ越し

8月下旬〜

8月はは3つ子の誕生月なので、先月からひと月待たずしてまた北海道へ飛んだ。

1500km近い距離も、もはや感じなくなってきていた。飛行機の時間にしてみれば、都内から京葉線で幕張へ行く位のもので、慣れてしまえばただの「ちょっとした遠出」に過ぎなかった。

今までに無く足取りは軽かった。先日のバーの1件から一晩明けてすぐ、「北海道に引っ越す」と奥さんに宣言して、まずは自分の仕事場を作る為の物件探しをすることになった。
物件探しは時間を要した。

あたり一面に牧草の広がるこの地域では、不動産の賃貸管理というビジネスがあまり浸透していない様子で、借家やアパートを探すという目的に対して行われる最初の行動が「めぼしい物件の電気メーターを確認する」というものだった。電気メーターが動いていない=空き家である、ということだ。それを見つけ次第、町役場にその現状や、持ち主の連絡先を伺うのだ。なんてアナログな…
街の中心部にある住宅街を車でトロトロ走りながら、民家のメーターをキョロキョロと覗き込む。これを都内でやっていたら、ただの不審者だと思う。本当に、この街の人はこんなやり方で家を探すのか?実は騙されてるんじゃないだろうか。もちろん騙すメリットなど、何処にもない。
ひとしきり住宅街を廻ると、メーターを見ずとも「入居者募集」と手づくりのチラシを貼ったアパートが数軒見つかった。やはりここは日本だった。ひとまず安心したが、仕事部屋に使えそうな部屋はなかなか見つからずその日は終了となった。

数日後、親戚に古い一軒家を紹介された。200坪の土地に余裕たっぷりに建つ4LDK。かなりオーバースペックだが、ここまで広いなら家族で住んでしまっても良いかも知れない…などと夢が膨らむ。すぐに内見をお願いしたが東京行きのスケジュールと重なってしまったため、内見を奥さんに任せて東京へ飛んだ。

内見の日。
東京からFaceTimeで奥さんへ繋ぎ、家を写してもらう。築4〜50年は経っていそうな、古い一軒家。まさに「田舎の祖母の家」。玄関は引き戸で、サッシの真ん中に付けられた、棒をひねって突っ込むタイプの鍵。一階は20畳近いリビング・キッチン風呂トイレと、8畳強の部屋が一室。二階には納戸と、また8畳ほどの洋室が二部屋と和室が一つ。子供達が大きくなって、一人部屋が欲しいと言い出しても充分対応できそう…だけれど、その時までこの家は形を保っているのだろうか?
庭がやたら広く、同じ家がもう一つ建ってもまだ余るほど。大きめの木が数本と、ブロックで区分けされた、畑の跡のような区画がある。今にして思えば、身の丈以上の手に余る物件なのだが、東京のワンルームで粗大ゴミに囲まれて暮らしていた当時の僕は、そこで家族と暮らす絵を想像して心が踊ってしまった。「(奥さん)が良いと思ったら決めて良いよ」と半ばいい加減な転嫁をする夫。敷金礼金なしで家賃は毎月5万円。当時都内で借りていたワンルームより安い家賃に踊らされて入居を決定してしまった。

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父親目線での三つ子育児日記 退院後の子育て開始から北海道移住まで

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