見出し画像

お前もか。

手のかかる次男と、直球投手の長女に押されるようにして、どうしても優先順位が後ろへ行きがちの長男。ついに癇癪が出始めた。「なんで僕だけ」という悲痛な叫びが聞こえる。いくぶん身体は大きめの長男は、おもちゃの取り合いも力では勝つことが多いが、そのぶん親には「奪った」と認識されてお叱りの対象となる。最初に危惧した通り、やはり長男の宿命が待っていた。たった1分の差でここまで扱いが違うのだ。これがオリンピックか何かなら、良かったのに。心なしか長男は少し卑屈な感じになってきて、少し暴力的にも感じる。早くもグレたか…
身体が大きいといってもそれは家庭内のことであって、そもそも三つ子たちはまだ平均より小さめの部類に入る。幼稚園では他よりそこまで強いわけではない。いじめられなければ良いが…

初めて行った参観日、なにやら長男の動きがおかしい。明らかに集団行動を無視した動き。講堂をみんなで走って一周するときに、なぜか1人だけ親の方へ抜け出して走り寄ってくる。他のお遊戯でもやたらと勝手に座ったり駄々をこねたり。明らかに注意欠陥、ADHDもしくはASDの行動そのものである。次男はもちろん、常に1人保育士の先生に付き添われている特殊枠なので、長男までこの調子だとうちの家庭のキャラ立ちがとんでもないことになる。おいおいおいお前もかよどんだけ手かかるんだハンパねーなうちの家族。奥さんと目を合わせて、深く溜息をつく。
小児科で事情を話すと、医師は「前から分かっていた」と言わんばかりに、矢継ぎ早に診断を下した。知的障害は無くむしろIQは高めだが、軽度の注意欠陥が見られる。脳が多動なせいか、睡眠の質があまり良くない様子で寝言が多い。順番を待ったり、自分の欲求を抑えることが少々苦手である、などなど。細かい症状はもう聞くのをやめた。分かったよ、もう分かった。多胎の子はある程度のリスクを持って生まれてくる、と大まかには理解していたこと。それでも何より、子供に会いたかった。親になりたいという欲求を抑えられなかった。その代償が、これなのだ。受け入れるしか無い。一目見れば、紛れもなく自分の子であると思わざるを得ない顔立ち。そして、自分へまっすぐ向けられる、愛情を求める眼差し。もう分かってるから。おれの腕は二本しかないんだ。三人は手に余るからちょっと待ってくれ。いちばん大きいしおそらく一番賢いんだから分かるだろ。お前が嫌いなわけじゃないんだ単純に手が足りないだけなんだよ。

ここから先は

0字

父親目線での三つ子育児日記 移住先でのくらしと発達障害の判明、その考察

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?