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思い出の102円

私は幼い頃から叔父と遊ぶことが多かった。叔父は当時の自分にとって、新たな環境へ誘ってくれる刺激的な存在だった。

初めてドンキホーテに行ったのも叔父に連れてもらった時だ。初めてすたみな太郎に行ったのも、任天堂ファミコンで遊んだのも、モンスターエナジーを飲んだのも全て叔父と一緒だった。同年代と遊ぶ時には得られない経験を積めたのは叔父のおかげであり、その一つ一つの思い出は自分にとって、かけがえのないものだった。

ということを、先日2人で飲みに行った時に話した。今まであった楽しかった思い出をつらつらと話していると、ちょっぴりノスタルジックな思いになってきた。

しかし、叔父は「え、そんなことあったっけ?」と全然覚えていない様子だった。自分にとっては強い思い出だったから少しショックだった。そんな中、叔父はこれだけは覚えてると言って一つのエピソードを話し始めた。

「お前がまだ小さい時、shop99(全品99円のコンビニ。今はLAWSON100になってる)ってあったろ。あそこにお前連れてった時、100円だけ渡して俺は外でタバコ吸ってたんだわ。そしたら全然帰ってこないから心配になって見に行ったんだわ。そしたら、shop99なのに、税込だと102円だったんだよね。だからレジで100円しか持ってないお前は買えなくて、途方にくれてたのは覚えてるわww」


なぜそんなしょうもないエピソードは覚えているの??


初めて一人で電車に乗って遊びに行ったら約束すっぽかされてて駅で泣いた大事件は!?!?(←覚えていない)原付に乗せてくれて駐車場を大暴走した大事件は!?!?(←覚えていない)ゲーセンでコイン大量にゲットしたら隣のババアにケンカ売られた大事件は!?!?(←覚えていない)

このように、センセーショナルな事件は全て忘れてshop99で買い物ができなかった事件だけ覚えていた叔父。まあ、ちなみに自分もこの事件は覚えている。

幼かった自分は、ディスプレイに表示される102円という数字を前に、100円を握りしめることしかできなかった。そんな時、叔父がきて、

「えぇ〜!?!?102円!?!?!?」

とめちゃくちゃ驚いてたことは昨日のことのように覚えている。

普段あまり感情を出さない人だから、これほど驚く様子は印象深かった。もしかしたら、叔父にとって、shop99がshop102だったことは彼の人生にとって5本の指に入るような大発見だったのかもしれない。


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