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進化する秋田を紐解く ~ 秋田ノーザンハピネッツ 小栗瑛哉 interview ~

彼の成長が秋田の進化である。チームの練習に参加した頃から、明らかにまとう空気が変わった小栗瑛哉。彼の成長にはどんなストーリーがあったのか。今回はルーキーシーズンの3分の2を終えた小栗瑛哉に迫る。(取材日 : 2月21日 インタビュー・写真 : 宮本將廣)

絶対に傷跡は残さないといけない

宮本 今シーズンから秋田とプロ契約をして39試合を過ごしました。率直にどうですか?
小栗 やっと自分らしさだったり、チームから必要とされていることを体現できるようになってきたと感じています。
宮本 開幕節の北海道戦は熊谷選手がいなかったこと、藤永選手の怪我もあってチャンスが巡ってきました。正直に言えば、チャンスはもらえたけど掴むまではいかなかった。シーズンの序盤はそんな試合が多い中で、どのあたりからリズムを掴めてきたのでしょうか?
小栗 きっかけというか、自信になったのは1月の長崎戦ですね。うまくいかない時期を過ごして、あの試合があっての今だと思っています。
宮本 実は今回のインタビューも長崎戦でのステップアップを見て、オファーさせてもらいました。あの試合でいいパフォーマンスを出せたのは、何かマインドの変化があったんですか?
小栗 GAME1でスティーブが怪我をして、ヤスさんと雷太さんも出場できない状況でした。顕蔵さん(前田顕蔵HC)から、僕とノボルさんの2ガードの時間帯が長くなるから、準備しておけよという話をされました。どの試合でも準備はしていますけど、あの試合は絶対にチャンスがあるから、必ず結果を残してやろうという気持ちで臨みました。
宮本 長崎戦のGAME2では、得点が伸びました。小栗選手の良さはシュートまで行けることだと思っています。だけど、シーズン序盤はちょっと横を見過ぎている印象があったですけど、その辺はどうですか?
小栗 そうですね。秋田にはいいシューターがたくさんいるので、当時はシューター陣に気持ちよくシュートを打ってもらうことが大事だと思っていたんですけど、今思えば、自分に自信がなかったことも影響していたと思います。間違いではないけど、自分が打つよりも他の人が打った方が効率よく得点が取れるという逃げでもあったのかもしれないですね。
宮本 結果的にはあまりいいプレーができずに、熊谷選手が戻ってきてプレータイムを失いました。
小栗 そうですね。出場できるのがほとんどガベージタイムになってしまって、逆に絶対に傷跡は残さないといけないと思いました。正直、勝敗どうこうという時間帯ではないので、自分をアピールしようと思って打ったシュートが何本か入ったことで、自分の持ち味が何かを再確認できました。

大学進学のタイミングでは教員を目指そうと思っていました

宮本 小栗選手が歩んできた道はすごくドラマチックだと思っています。中学時代はジュニアオールスター優勝、全中準優勝という成績を残し、開志国際高校ではインターハイを優勝しました。そこから関東を倒したいという思いを持って大阪産業大学に進学して、最後のインカレでは本当に関東の早稲田大学に勝った。そこには親友の土家大輝選手(福島ファイヤーボンズ)がいたという、ドラマのようなストーリーを歩んできて、Bリーグでは秋田を選びます。秋田を選んだ理由はなんだったんですか?
小栗 秋田を選ばせてもらった理由は、長いキャリアを作っていくためにポイントガードとしてのディフェンス力がまだまだだなと思ったことと、日本人が起点になるという秋田のバスケスタイルにすごく魅力を感じたことですね。
宮本 一方で、絶対に試合に出ることができるという環境ではなかったですよね? 前田HCのインタビューでこのバイウィークから、「藤永選手が練習に復帰している」という話を伺いました。そうなると小栗選手がロスター外になる可能性はあるし、そもそもシーズンスタートの時点では13番目という立ち位置だったと思います。
小栗 そうですね。本当にその通りだと思います。
宮本 だから、勝手にチャレンジングな道を進むのが好きなんだと思っていました。
小栗・宮本 ハハハハハ。
宮本 中学時代の同期2人は(土家大輝選手、山本草大/福岡大附属大濠高校アシスタントコーチ)福岡大附属大濠高校に進学した中で、小栗選手は開志国際高校に進学したり、大学もあえて関西を選んだり。何か原体験というか、自分の信念みたいなものがありそうだなと思っていました。
小栗 あー、なるほど(笑)。正直、僕も大濠から声をかけていただいたんですけど、当時は土家と一緒じゃダメだなって思ったんです。中学では土家が1番だったし、このままじゃ土家を超えられない。当時のモチベーションのひとつは土家を倒すことだったことは間違いないですね。僕の上には常に土家がいたし、今でもライバルだと思っています。もちろん、彼が活躍すると嬉しいですけど、同時に負けてられないなっていう気持ちは常に湧いてきます。
宮本 じゃあ、高校ではインターハイで優勝しますけど、むしろ大濠に勝ちたかった?
小栗 そうですね。可能なら大濠とやって優勝したかったという気持ちはあります。ただ、あの時はU18日本代表組がいなかったんですよ。
宮本 はいはい。国際大会と日程が重なるやつですよね。
小栗 そうです。だから優勝はできましたけど、僕の中ではなんか引っかかるというか。他のチームはフルメンバーじゃないよねって思っていました。
宮本 ウィンターカップで勝たないとっていう感じが残ったんですね。
小栗 そうです! それが真の王者だと思ったんですけど、富永(ネブラスカ大学)にやられました(笑)。
小栗・宮本 ハハハハハ。
宮本 言い方が心地よくないかもしれないけど、世代トップを通ってきながら、トップオブトップではない感じは、自分の中でコンプレックスだったりするんですか?
小栗 そうですね。正直、関西を選んだことも関東を倒したいっていう気持ちも事実でありながら、関東でプレーする自信がなかったっていうのもあります。技術的にもそうだし、高校で燃え尽きたところもあって、大学進学のタイミングでは教員を目指そうと思っていました。でも、Bリーグを目指したい気持ちもあって、4年の時にインカレに出ることができなかったら、教員に絞ろうと決めたんです。だから、最後のインカレには全てを賭けていました。
宮本 でも、リーグ戦の最初で4連敗とかするじゃないですか。
小栗 はい。正直、もう無理だなって思いました(笑)。
小栗・宮本 ハハハハハ。
小栗 その時に先生たちが、「リーグ戦は長いから切り替えるしかない」って言ってくれたり、「まだ全てが終わったわけではないよ」って言ってもらえたのは大きかったですね。そこからチームで頑張って、関西6位でインカレに出場しました。
宮本 変な話だけど、僕は選ばれし者っていると思っています。小栗選手から見るとそれは土家選手だったりするかもしれないけど、中学、高校、大学の時からプレーを見ていて、僕からすると小栗選手もそういう選手だと思っていました。もちろん本人の努力が前提なんだけど、大学のリーグ戦で4連敗したけど、インカレに出ることができて、最後は土家選手のいた早稲田大学に勝つとか。こういうストーリーは、今シーズンの秋田にも重なりますよね。序盤はうまくいかずに3勝11敗で、その時はチャンスをもらえたけど掴めなかった。でも、運も巡ってきて、チームも勝ち始めてプレータイムも勝ち取った。
小栗 確かに、そうですね。それで言うと、試合に出ても本当に何もできなかったので、めちゃくちゃ焦ってましたね。アキさんが復帰できそうって聞いた時も正直、「あ、もう終わったな」とは思いました(笑)。
小栗・宮本 ハハハハハ。
宮本 そこから藤永選手がもうちょっと離脱することになりました。はっきり言ってしまえば、コンディションが整っているのであれば、現状では小栗選手よりも藤永選手の方がトータルでレベルが高いことは間違いないと思います。そこでまたチャンスをもらえる時間が延びた時は、考え方に変化が生まれたりしましたか?
小栗 結果を残すということは変わらずに考えていましたけど、アキさんの復帰が伸びた時は、もう少し自分らしさを出していこうと思いました。もちろんチームの勝利に貢献することは当たり前なんですけど、もっと自分の持ち味を出していこうとは思いましたね。

チームのために自分ファーストでプレーすること

宮本 そしてはまったのが長崎戦だった。そういう瞬間は、コートでの見え方が変わったりするものなんですか? 僕は選手じゃないからわからないんだけど。
小栗 変わりますね。余裕ができたと自分でも感じています。結果が出たことによって、自信もつきました。ずっと奈良アシスタントコーチにスキルワークアウトをやっていただいていて、オフの日も頼んでやっていただいていました。それが結果に繋がったので奈良さんがいなければ、今の僕がいないのは間違いないです。もちろんまだまだですけど、奈良さんにはすごく感謝しています。
宮本 そのワークアウトは何系をメインにしていたんですか?
小栗 全部ですね。ハンドリング、ピックアンドロール、判断とか。もちろんシューティングもそうですね。やってきたワークアウトの動きが試合で出た時は、「奈良さん、やりましたよ!」って感じでした(笑)。
小栗・宮本 ハハハハハ。
宮本 ここから21試合で、僕は秋田において引き続き、小栗選手が重要だと思っています。プレータイムを勝ち取る。そして、もう一度爪痕を残すために自分は何ができるか。その辺りはどうでしょうか?
小栗 チームのために自分ファーストでプレーすることが、チームにとっても今の僕にとって大事なことだとわかったので、まずは点を取りに行くことですね。あとは、速い展開でのバスケットを作っていくことが今の僕に求められているので、僕が自分の良さを出し切ることが大事だと思っています。

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