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ベースラインからの景色 vol.3 【SoftBank CUP 2024(東京大会)vs 韓国 G1】日本代表のパリ五輪決勝トーナメント進出に黄信号

月末に開幕を控えるパリ五輪に向けて、国内では最後となる調整試合だが、2大エース八村塁、渡邊雄太が欠場という不測の事態に。Akatsuki Japanとしては痛すぎるものの、ロスター入りを確定させていない選手たちにとってはまたとないチャンスとなった。推定残り3枠を争う仁義なきアピール合戦が始まる……はずだったのだが……。(写真・文=大柴壮平)

若手主体の韓国代表に点差以上の完敗

言い訳はある。本来なら「ホーバス・ジャパン初登場の八村塁をどうやってチームに組み込むか」がテーマの試合になるはずだった。しかし、主役を務める予定だった八村が試合直前で欠場を決断。コンディション調整を選んだ。もちろん八村個人の話で言えば、無理に出場して怪我をするより満足するまで調整してもらった方がいい。しかし、チームとしては試合直前にテーマを失ってしまったのは痛かった。

国歌を聴く韓国代表。中央9番は仙台89ERSでプレーするヤン・ジェミン。

とは言え、である。パリ五輪まで残り3週間。さらに相手の韓国代表は若手主体だ。パリ五輪での決勝トーナメント進出を目標に掲げている以上、Akatsuki Japanが圧勝しないと辻褄が合わない。しかし、現実は圧勝どころか敗戦、しかも完敗となってしまった。

スリーポイントを決めて吠えるイ・ジョンヒョン。ゲームハイの27得点を挙げた。

ダメだったところを挙げれば切りが無い。攻守ともに問題点は多かったが、まずはトランジション・ディフェンスだろう。トランジションとスリーポイントを徹底してきたホーバス・ジャパンが、韓国にその2点で上回られてしまった。試合後の記者会見で、青木記者(フリー)の「ピックアップが遅かった原因は?」という質問に、ホーバスHCはこう答えた。

「今週は素早くピックアップする練習をしてきたが、それができなかった。しかし、より大きな問題は、ディフェンスでコールした時のミス。フリースローが終わってコールした時に4人はその動きをしているのに1人だけ別の動きをしていて、相手にダンクされるとか。これは絶対にダメ。直します」

記者会見では終始渋い表情だったホーバスHCだが、苦しい敗戦の後も丁寧に対応する姿はプロフェッショナルだった。

ホーバスHCの記者会見で印象的だったことが2つある。1つは、戦術面よりもメンタル面を問題視していたことだ。そのメンタル面での弱さを象徴していたことがある。ホーバスHCが指揮を執って以来ずっと求めてきた「ヒットファースト」、つまりフィジカル・バトルで先手を取ることができなかったのだ。

ダンク2発を含む15得点でイ・ジョンヒョンと共にチームを引っ張ったハ・ユンギ。

「これはウェイクアップ・コール。目を覚まさなければならない」と語ったホーバスHCだが、7日のゲーム2でAkatsuki Japanは生まれ変わった姿を見せられるだろうか。

選考争いは渡邉飛勇とジェイコブズ晶が一歩リード?

記者会見で印象に残ったもう1つのトピックは、渡邉飛勇と川真田紘也が1枠を争っているということだ。北海道のオーストラリア戦では、高さの渡邉と幅の川真田は共にストロングポイントをアピールできたように見えた。逆にウイングのジェイコブズ晶と金近廉はショットを決めきることができず、パリが遠のいたように私には感じられた。

ヤン・ジェミンをブロックする渡邉飛勇。

ところが、この日のホーバスHCの話では、

  • 渡邉と川真田が選考を争っている。

  • 川真田は練習で軽く捻挫をした割には健闘したものの、相手のピック&ロールへの対応は良くなかった。特にコンテインがダメだった。

  • ジェイコブズは北海道戦より良かった(しかも北海道戦でもジェイコブズのリバウンド力を評価していた)。

ということが発覚した。現時点で残り3枠争いは渡邉とジェイコブズが一歩リード。テーブス海と佐々木隆成の第3PG争いはゲーム2での佐々木の出来次第となっているようだ。

川真田のスクリーンを利用してリムまで侵入、レイアップを決めきったテーブス海。
得点とアシストでAkatsuki Japanを引っ張った河村勇輝。
河村のアシストからこの日2本目のスリーポイントを決めてセレブレーションを見せるジェイコブズ晶。

試合中に舞い込んだ朗報「富永啓生、ペイサーズとExhibit 10契約」

チーム状況としては課題だらけだったAkatsuki Japanだが、試合中に朗報が飛び込んできた。富永啓生が、インディアナ・ペイサーズとExhibit 10契約を結んだことが発表されたのだ。これでパリ五輪後の富永の予定は埋まった。ペイサーズのキャンプに参加し、認められれば2way契約を獲得できるし、最低でも傘下のGリーグチーム、インディアナ・マッドアンツでプレーすることになるだろう。NBAに向けて1歩目を踏み出した富永のコメントを紹介する。

珍しくスリーポイントが決まらなかった富永だが、積極的にペイントに侵入していた。

「これからがチャレンジの始まりかなと思います。ペイサーズは早いバスケットボールでスリーポイントも沢山打ちますし、自分のプレースタイルに合っているチームだと思うので楽しみです。自分のことを獲ってくれるチームが表れるように、ここからはできる限りアピールしたいです」

日本人4人目のNBA選手誕生が楽しみだが、まずはパリ五輪でNBAのスカウトたちにアピールしてほしいところだ。


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