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『ダブドリ Vol.6』インタビュー06 今野紀花(ルイビル大学)

2019年6月4日刊行の『ダブドリ Vol.6』(株式会社ダブドリ:旧旺史社)より、今野紀花さんのインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。インタビュアーは中川聴乃さん。なお、所属等は刊行時のものです。

悔しい思いが残ってる高校3年間ですけど、いっつも楽しく過ごしてたし、すごくいい仲間に出会えた。

中川 では、お願いしまーす。
今野 お願いします。
中川 もう卒業したと思うんだけど、高校3年間はどうでしたか。
今野 めっちゃ楽しかった。あとバスケットに対する価値観がすごく変わりました。
中川 どういうところが変わりました?
今野 中学校の時とかは日本代表とか興味なかった。目指してるっていうか、もう「そこで楽しんでる」っていうだけだった。でも高校で日本代表に入って海外のチームと試合してるうちに「世界で戦えるようになりたいな」って。そういうふうにバスケと向き合えるようになったのが、この3年間っていう。
中川 ちなみに、中学生の時はどうだったの? バスケットの成績とか。
今野 チームは県のベスト8。
中川 あー、そうなんだ。
今野 はい。個人としては、トップエンデバー14とか15(選手の発掘・育成とともに技術の伝達などを行う選手強化計画)とかに行ってて。そこでいろんな選手とバスケしてっていう感じでした。
中川 聖和学園(高等学校)に入学する決め手っていうのは、何だったの?
今野 決め手はチームメイト。自分と同じ代がほとんど宮城の選手で、ミニバスとかからずっと一緒にやってきた人がいっぱいいたので「もう一回」って思って。ジュニアオールスター(各都道府県における複数校の1、2年生の選手で構成されたチームで競い合う全国大会。来年は「全国U15バスケットボール選手権大会(仮称)」のプレ大会を開催予定)で宮城県が3位で、メインコートに立てなくて苦しい思いをして。で、そのメンバーともう一回集まって、「全国に立ちたいね」ってなって聖和に行きました。
中川 聖和学園に入って価値観が変わった中で、この仲間との3年間っていうのはどういう思い出が残ってますか。
今野 面白い人とか個性がある人がすごい多くて、常に笑ってたイメージ。でも勝ち切れなかったので、悔しい思いが残ってる3年間なんです。けど、いっつも楽しく過ごしてたし、なんか悩んだ時はいつも支えてくれたので、すごくいい仲間に出会ったと。
中川 先生からは、何が一番良くて、何が一番足りないって言われてた?
今野 うんと、波があることがダメって。あとは100パーセント、バーって出す時がないって。60ぐらいでずーっとやってる、っていう。なんか気持ちにバッて表れる瞬間が少ないっていうことを言われてて。良いところはプレーの幅が広くて、身長もあるから日本だと中もできる。だから自分で考えて、マッチアップを見てプレーしろって言われます。
中川 試合を見てても、今野ちゃんのプレーの幅っていうのはもう本当、可能性しかないなっていうのを感じてて。伸びしろっていうところでは、もう誰もが期待してるなぁっていう。
今野 本当ですか。
中川 期待しかないよ。ウインターカップ見てても、もっと自分で積極的に行ったらいいのになと思いながら見てた。周りを気にしすぎるかなって。
今野 あぁ、それよく言われます。
中川 ボールを持ったら「全部いけるのに」って思いながら見てたよ。今野さん的にはどう思いますか?
今野 最後まで決め切るとか、そういう気持ちがまだ足りてないって自分でも思ってます。
中川 やっぱりそうなんだ。自分の課題もしっかり理解できてるんだね。
今野 自分のチームは、結構みんな点取れたので、アシストとか自分が引き付けてパス出してっていうのもやろうとしてたんで。なんか行けるけど、パスしちゃうっていうのが多かった感じです。
中川 そうだよね。ルイビル大学への進学を決めたじゃない。そこに進学を決めたきっかけっていうのは何なの?
今野 アメリカの大学からは結構オファーあって、ルイビル大に決めた理由は、コーチがわざわざ東京に来てくださって。多分、10数時間しか滞在してなかったんですけど、会うために来てくださって、熱い言葉とか、自分とプレーしたいっていう思いとか、あとは自分が英語しゃべれなかったので通訳を呼んだんですけど、「通訳はいらないから一緒にしゃべろう」って。そういうコミュニケーションを取ろうとするところ、そのコーチの姿勢をすごくうれしく思って決めました。
中川 でも普通だと、まぁ王道だけど日本の実業団だったり。今は大学もあるよね。そこに行くっていう選択肢もあった中で、よくアメリカ行きを決断したね。
今野 不安とかはそん時なくて。それより、もっと知らないことを知りたいし、知らない世界に飛び込んでみたい、って。正直日本の実業団は考えてなかったんです。日本の大学か、アメリカの大学って考えていて。でも日本の大学に入ったら、自分の努力次第ですけど自分がどうなっていくか、どういうふうに過ごしていくかとか、そういうのがちょっと想像できた自分がいて。だったら何も分かんないアメリカに行った方が楽しいし、日本じゃできない経験がすごくできると思って、アメリカに決めました。

アメリカで自分の殻を破って、もっとエネルギッシュにやれるように。あと、アメリカの選手相手にどうやって点を取るかを学んでいきたい。

中川 実業団じゃなくて大学を選択っていうところで、後押しなんかはあったの? 例えばご両親とか。
今野 いや、自分に選択を任せてくれる人だったので。
中川 あ、そうなんだ。
今野 なんかまだ自分、全然分かんないこと多いし。子どもだから、そのまま実業団へ行ったら……何て言うんだろう、自分ではまだ行けないなって思って。
中川 でも、すごいよね。そこを感じ取れるっていう。その選択はすごいなって。幅も広がるしね。
今野 大学でもっといろいろ学んで、いろんなこと経験してから代表とかでプレーできるようになりたいな、って。
中川 これから行くんだけど、日本とアメリカを見てて、バスケの違いってどういうふうに見えます?
今野 まず一人一人の運動能力が違って。戦術とかはまだ全然分かんない。やっぱフィジカルとかエナジーとか、そういうのがちょっと違うと思います。
中川 一番何を求めて、アメリカに行くっていう選択肢を取りました?
今野 2つあります。1つは自分の殻を破って、先生に言われてた自分の気持ちを出す、っていう課題。もっとエネルギッシュにやれるように。アメリカの中で殻を破って、どんどん行きたいっていうこと。あとは、すごいリーチも長くて身長もでかくて運動神経もいい選手がたくさんいるので、その中でどうやって点を取るのか。もう今の打点だったら絶対シュートブロックされるし、フィニッシュも全然、バリエーションも少ないし。だからその、アメリカの選手を相手にどうやって得点を取るのかっていうのを学んでいきたいです。
中川 これから先、いろんな目標だったり夢っていうところがあると思うんだけど、どういう選手になっていきたい?
今野 世界でプレーできる選手。世界でもベストプレーヤーみたいに選ばれるように。日本を代表して、世界で戦えるようなプレーヤーになりたいです。
中川 アメリカでプレーしている八村塁選手(ゴンザガ大学3年。NBAドラフトにアーリーエントリー済)とか、渡邊雄太選手(メンフィス・グリズリーズ)の活躍は、どう映ってますか。
今野 塁さんは宮城の明成高等学校でやってたじゃないですか。で、自分が中学校の時に姉もバスケしてたので。大会行った時に、プレーしてるのを見てたんですよ。その体育館にいた人が、今はNBAに行くような選手になってるっていうのがもう信じられないっていうか。でも本当に実力ある方なんで、すごく尊敬するし、憧れでもあります。
中川 やっぱりあの活躍見て、自分もこうなりたいっていう思いが膨らんだ?
今野 塁さんを見て、自分も活躍してるイメージを持ったりとか、そういうの、影響はすごくたくさんあります。
中川 まぁ実際に、アメリカの大学でユニフォームとか写真、撮ってたから向こうには行ったの? どうだった?
今野 練習を見させてもらったんですけど、ルーズボール追う時はもう、「わー」って声出したり、すごくエネルギッシュで。あとはトレーニングをしてるところをちょっと教えてもらったんですけど、もう本当にレベル違うなって感じました。
中川 なんかさ、プライベートジェットで移動っていうのを聞いたんだけど。
今野 インスタフォローしてるんですけど、プライベートジェット乗る時の映像とか、すごいレベルのやつが出てくるので驚いています。
中川 そっかー。すごいね。今までアメリカの大学に行ってた子はいたけど、やっぱりスターが行くってなると多分、今後の女子バスケット界にも大きな影響を与えると思うんだよね。やっぱりその後輩たちにも、いろんな選択肢を持たせてあげたいっていう思いはあります?
今野 ありますね。自分が初じゃないですけど。
中川 でも、それに近いと思う。
今野 っていうことを言われて、先生からも。で、取材とか受ける時に、次の人たちがアメリカに興味を持って、それで日本のレベルが上がれば、それはすごくいいことだからって。本当は取材、あんまり好きじゃなかったんですけど、「伝えることも大事だから、そういう思いを持ってプレーしろ」っていうふうに言われました。
中川 やっぱりこう、現役中の価値っていうのはすごく大きいものがあるから、そこでどれだけいろんな人たちを応援させるかですね。そこはもっと積極的に。しかも、かわいいし。
今野 やめてください、もう。
中川 でも印象は本当に良くって。だから日本女子を背負っていく子だなって。プレーもよくて、見た目もいい子はなかなかいないから。

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このあとも、ライバルだと思う選手やアメリカで戦うための準備、不安と楽しみにしていることなどを語ってくださっています。続きは本書をご覧ください。

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