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「日本一勤勉なチーム」はいかにして作られているのか ~ レバンガ北海道 小野寺龍太郎 interview vol.4 ~

「日本一勤勉なチームを作る」その言葉を聞いたとき、いかにしてそのチームを作るのか。その方法論が気になった。2023-24シーズンに伺ったvol.1とvol.2に続き、今シーズンのレバンガ北海道を紐解くべく、小野寺龍太郎HCに話を伺っていく(インタビュー : 9月6日 文: 宮本將廣 写真:三浦雄司)

2023-24シーズンinterview

2024-25シーズンinterview

鍵を握るのはペースコントロール。

宮本 小野寺さんの会見でもありましたが(※詳細はこちら)、昨シーズンのチャンピオンシップ出場ラインが35勝でした。その中でレバンガ北海道は17勝。小野寺さんの会見だと17試合は競ったゲームで、それを勝ちきれれば単純計算で34勝となります。そこまで行ければチャンピオンシップに絡める可能性が出てくるというお話でした。
小野寺 そうですね。3ポゼッション差の試合が17試合ありました。
宮本 昨シーズンにお話しさせてもらったときも、小野寺さんの考えるバスケットボールには原理原則があって、カオスというものが存在しない。これは今日お話しいただいたところも同じです。それ故に聞きたいことがあって、これは少し挑発的になってしまうかもしれませんが、カオスは存在しないとするためには、個人的にペースコントロールをどうするかにかかっていると思っています。そこができるかどうかでレバンガの勝利数はかなり変わってくるのではないかと予想しているんですね。簡単に言えば、オフェンスの終わらせ方だと思います。台湾の試合でもあったんですけど、ファストブレイクで点数が取れるんだったらそれはいい。でも、その後のディフェンスのプレッシャーのかけ方、相手のエントリーのさせ方。オフェンスもしっかりと崩してオープンを作ってショットを打つ。そこからリバウンドの絡み方、プレッシャーのかけ方。要はレバンガがファストブレイクで加点しても、相手にもファストブレイクで簡単に解決されてしまったら意味がない。失点は70点という基準を小野寺さんがわかりやすくするために作ってくれていますが、70点台だからOKではなくて、相手のポゼッション数も関わってくるはずです。回りくどくなってしまいましたが、相手のペースコントロールができたからこそ、結果的にレバンガの失点が70点台になるという状況を作らなくてはいけないと思っています。
小野寺 そうなんですよね。
宮本 僕の考えとしては自分たちでゲームをコントロールをして、ファストブレイクとか速いバスケットボールをする相手に対しても、ある程度自分たちが想定するポゼッション数でゲームを展開する必要がある。そして相手の得点期待値を抑えていきたいってことじゃないですか。
小野寺 そうなんですよ、そこの説明はなかなか難しいなと(笑)。
宮本 だからこそ、このインタビューはレバンガを見る上で読んでくださいね、ちょっと頭の片隅に入れておいてくださいねってしたいわけです!!
一同 ハハハハハ!

ペースをコントロールして、最後に頭ひとつ上回る。

宮本 ポゼッション数がどれぐらいあるのかによって、ディフェンスの質がどうかという風に見れると面白いと思います。例えば千葉ジェッツが100点取りました。そのゲームはポゼッション数が多いからレバンガも90点取れたとします。試合自体は「惜しかったね!」ってなりますが、「小野寺さん、これじゃ失点70点台なんて無理でしょ」って言われちゃうじゃないですか。
小野寺 そうなんですよね。昨シーズンもSR渋谷戦であったんです。その試合はペースを落としまくったんですけど、ポイントパーポゼッション(PPP/1回の攻撃で何点取れたかという指標)で考えると、リーグアベレージよりも高かったんです。他にもA東京や宇都宮はペースを落としますけど、効率も良いという状況です。これはコーチの考え方にもよると思いますが、僕はそこまでペースを落とす必要はないと思っています。これはちょっと主観的なものにもなるんですけど、相手のタレントレベルだったり、オフェンス効率を総合的に見ると、僕たちがそのペースで戦ったら勝つ可能性が低くなってしまう。 タレントレベルの差が一番出るのはトランジションの最初の6秒だと思います。人数的なアドバンテージだったり、マッチアップトラブルなどが起こりうる場面は1対1で打開されるケースが発生しやすい。だから、まずはそこを避けたいと考えています。
宮本 台湾の試合でもピックアップができなくて、相手に勢いに乗った状態で持っていかれるシーンがありましたよね。
小野寺 そうなんです。あれは絶対避けたいシーンですね。ペースコントロールにも繋がるのですが、そうさせないためにも自分たちのポゼッションを増やす必要があります。簡単に言えばオフェンスリバウンドを増やすことですね。それによって相手のファストブレイクのポイント、トランジションオフェンスの頻度が減っていきます。昨シーズン、僅差で負けたゲームを振り返るとペースの速いチームに対して自分たちのペースではないバスケットを強いられるケースが多くありました。だからこそ、今シーズンはよりトランジションディフェンスのルール、そしてセットで考えなければならないのはオフェンスリバウンドのルール。これが重要です。僕たちのオフェンスリバウンドのルールは、原則としてウィークサイドのビッグマンが1人だけ絡みます。それ以外はセーフティーになるんですね。ディフェンスに戻るレーンも指定してしています。理想は4人が戻っていることなので、ダイヤモンドという形を採用しています。それがもし3人になった場合も想定しています。例えば1人が転んでしまって戻って来れなかった。または意図せずオフェンスリバウンドに絡んでしまったという場合は、3人でトライアングルを作ります。最優先は絶対にレイアップを防ぐこと。場面によっては2人しか戻れない、1人しか戻れない場合もあります。そのときはレイアップだけは止める。もしくはファウルで止めるということが優先されます。
宮本 はいはい。なるほど。
小野寺 それらを踏まえて話を戻すと、自分たちが主導権を握って相手をペースアップさせないようにする。相手がそこまでペースが速くないチームだったとしても、その原則は徹底します。よって失点が70点台だったからOKなのではなく、自分たちの目指すポゼッションとペースでプレーをして70点台に抑えることが大事です。ペースの具体的な数字を出すと、僕らは大体72から74ぐらいの間で推移します。そこからオフェンスリバウンドを10個と考えると大体82から84。ただB.LEAGUEの中には三遠だったり、仙台だったり、長崎のように90ポゼッションを超えるチームが多数存在しています。そういうチームとやるにあたっては、とにかく彼らのペースを抑えていく。そうやって接戦に持っていって、最後に頭ひとつ上回る。それが僕たちの勝ち方だと考えています。

大事なのは最初の6秒間のルールを徹底すること。

宮本 そういうところを知った上でレバンガ北海道の試合を見ると面白いと思います。例えば、トランジションディフェンスでトライアングルを作っていたのに、レイアップでやられてしまった。「でも、頑張っていたよね!」じゃなくて、レイアップは絶対ダメなわけで、誰かが責任を果たせていないわけじゃないですか。
小野寺 そうですね。
宮本 全員が責任を果たしてしっかりと遂行できていれば、相手は次のオフェンスに入っていきます。おそらくドラッグスクリーンに入るでしょう。そこはマッチアップトラブルが起こりやすい。今日の練習でもミスマッチを戻す練習をやっていました。そこがちゃんとできれば、5人で守ることができる。バスケットには24秒ルールがあるので、そこまでできれば残りは14秒から12秒ぐらいになると思います。その場合、逆サイドに展開するのは1回あるかないかになるので、そこに持ち込めればディフェンスが有利な状況で守れるはずですよね。
小野寺 そうですね。理論的にはそうできるはずです。それができないケースがあった場合は、僕たちのルールのどこかでミスが起きていることになります。そういうミスをできる限り減らしていくことが今シーズンの僕らがやるべきことだと考えていますし、本当に今おっしゃっていただいた通りなんですよね。僕らは5対5がしたいんです。ビッグマンは必ずオフェンスリバウンドに絡むんですけど、彼も戻ってくる必要があります。これは走るしかないですよね。とにかく走って戻る。そこはちょっと原始的にはなるんですけど、ビッグマンにはとにかく走ってもらう必要があります。
宮本 それはもう普遍的なバスケットの原理原則ですよね。リングとリングを結んだラインをビッグマンが走り続けるチームは強い。これは今も昔も変わらないことだと思います。
小野寺 そうですね。自分たちがまずやるべきことは相手にアウトナンバーを作らせないこと。それが生まれやすいケースとしてはトランジションであり、最初の6秒間です。だからこそ、とにかく最初の6秒間のルールを徹底する。そして5対5に持っていく。5対5に持っていったらある程度は戦術レベルでどうにかできるケースが増えるので、そういう部分を大事にしています。

勝つために自分がやるべきことをやっていく。

宮本 色々お話を聞かせてもらって、それこそ三遠が分かりやすいと思います。ディフェンスもすごいけど、ペースの速い攻撃的なバスケットボールじゃないですか。B.LEAGUEはそういうチームが増えていると思います。秋田も今シーズンは改めてそういうバスケットをやっているし、長崎もそうですよね。だからこそ、今話していただいたポイントをどれだけ遂行できるか。そういう視点でレバンガを見るとすごく面白いと思います。
小野寺 そうですね。茨城もそうだし、名古屋Dもそうですよね。色んなスタイルのチームがある中で、僕らは僕らの戦い方にプライドを持っています。チームが勝つためにどのようなコンセプトなのか。どのような戦術戦略で戦っていくのかはコーチの仕事だと考えているので、まずは僕がそれを提示する。これは以前も言いましたが、矛盾のない状態で必ず言語化できているということが最低条件です。それに対して選手は窮屈に感じることが多々あると思います。「いやいや、うるせえな」とか、「ちゃんとやってるよ」みたいな感情って多分あると思うんですね。それでも全然いいんです。僕は勝つためには、それが自分たちのやるべきことだと信じてやっています。僕が疑ってしまったら選手にも求めることができません。そこを一番信じて追求することが僕の仕事であり、彼らもすごく真剣に取り組んでくれています。そういう意味では選手たちに感謝しかありません。このチームをもっともっと勝たせて、上を目指していく。彼らと一緒に成長していきたいなと思っています。

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