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『ダブドリ Vol.8』インタビュー01 ジュリアン・マブンガ (京都ハンナリーズ)

2020年2月15日刊行(現在も発売中)の『ダブドリ Vol.8』(ダブドリ:旧旺史社)より、ジュリアン・マブンガ選手のインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。インタビュアーはバスケライター 大西玲央氏。なお、所属・肩書等は刊行当時のものです。

203㎝という長身プレーヤーながらも、トリプルダブルを連発する選手がB.LEAGUEにいる。京都ハンナリーズのジュリアン・マブンガ選手だ。昨季はアシスト王にも輝き、日本にもこういったプレースタイルのビッグマンがいることに歓喜したのを覚えている。さらにツイッター上ではリーグに対する不満を投稿することも臆さず、何かと話題性に尽きない。英語で話せば、見ているだけでは伝わらない彼の一面が見られるのではないかと思い、今回のインタビューに至った。

玲央 今年で3シーズン目ですよね。プロ生活としては、これまで在籍してきたチームでどこよりも長いです。ここでのプレーを楽しんでいるということで良いですか?
マブンガ ああ、大好きだよ。ここでバスケットボールをするのが大好きだ。この街も大好き。コーチも大好き。
玲央 奥さんも一緒ですか?
マブンガ そう、一緒に住んでるよ。
玲央 じゃあアメリカ料理とかは奥さんが作ってくれるのですね。
マブンガ そうだね。サーモンとか魚を食べることが多い。とても健康的な料理を作ってくれるから、助かっているよ。
玲央 あなたのスタッツを見ていると、京都に来てからアシスト数が大幅に増えています。ボールを持つ機会が増えたというのは当然あると思うのですが、このパス能力やセンスっていうのは、元々自分のなかにあったものなのでしょうか?
マブンガ そうだね、元々パスはできる選手だった。大学でも確か平均4アシストくらい記録していたはずだ。でもほとんどポストからのプレーだった。だからパス能力自体は持っていた。
玲央 ただポストからのパスアウトと、トップからのパスって全く違いますよね。どう上達させていったのですか?
マブンガ 僕のプレーの大部分は、インディアナポリスでのトレーニングで形成されたものなんだ。ロブ・ブラックウェルっていうトレーナーがいてね、これまで一緒にトレーニングしてきたなかで最高のトレーナーだ。僕とロブ、そして親友のゴードン・ヘイワード(ボストン・セルティックス)とトレーニングするんだ。そこではいつもガードスキルのトレーニングをやっている。トレーニングだけだと1on1や1on2しかできないから、夏はたくさんピックアップゲームに参加しているんだ。オフの夏にプレーするのが大好きでね。そこでピック&ロールなんかを試していくと、色々と見えてくるんだよ。ヘルプの位置を読みながら、正しい判断ができるように磨いていく。
玲央 コート全体を見渡すようになって、だいぶ世界が変わったのでは?
マブンガ そうだね、慣れが必要だった。クレッグ・ブラッキンズはわかる?
玲央 滋賀レイクスターズの。
マブンガ そうそう、プロ1年目、僕は彼とイタリアでチームメイトだったんだ。彼が先発パワーフォワードで、僕は先発センター。ルーキーのときは1本もスリーを打たなかった。それを考えると、大きな変化だね。

バスケへの愛情と、それに費やした時間のおかげで、今の自分があるのだと思っている。

玲央 ゴードンの名前が少し出ましたが、高校で一緒にプレーしていたとき、彼はガードだったのですか?
マブンガ ガードだよ。彼が凄いのは、高校1年生のときは178cmしかなかったんだ。それが4年生(アメリカの高校は4年制)には僕と同じ203㎝まで伸びていたんだ。ただ身長が伸びているあいだも、ずっと彼のポジションは変えなかった。
玲央 2人でひたすらピック&ロールしていた感じですか?
マブンガ そうだね、多かったね(笑)。僕とゴードンを中心にやっていた。チームの得点の7割を僕らが稼いでいた。
玲央 過去のインタビューで、州の決勝戦で決勝レイアップを決めたゴードンしかみんな覚えてないけど、あのルーズボールを生み出したのは自分なんだって主張していましたよね(笑)。
マブンガ そうなんだよ! 今あいつに電話したら多分全く同じことを言ってくれるはずだよ! 最後のプレーは僕にボールを入れるものだったんだけど、パスが少し短かったんだ。それに気づいたから僕は走って向かって、ボールを弾いたんだ。それを彼が取って得点した。
玲央 なるほど高校時代から、そういうプレーメイクの感覚は持っていたんですね。
マブンガ そうだね。
玲央 でもバスケットボールを始めたのは、高校1年生のときなんですよね?
マブンガ ああ、1年生だ。中学ではやってなかった。
玲央 今ではすっかりバスケ一家ですが、そもそもバスケはどうして始めることになったんですか?
マブンガ やっぱり昔から周りに「背が高いね、バスケした方がいいよ」と言われ続けてたってのはあるかな。あとは高校のときのコーチの影響もあるね。家族と一緒に引っ越してきたばかりのときに、僕が街中を歩いているのを彼が見かけてね。車を停めて僕に話しかけてきたんだ。「バスケはするのかい?」って。公園とかでやることはあったけど、チームに入ったことはなかった。そうしたらトライアウト受けてみるといいよって言われて、大きいし、力もあったし、身体能力もそれなりだったから、やってみようかなって思ったんだ。
玲央 簡単に身につきましたか?
マブンガ 簡単とは言わないかな。かなり努力したからね。そういう性格なんだ。始めたからには、もの凄く練習する。練習以外でも1日3~5時間はジムでトレーニングをしている。とにかくバスケが大好きなんだ。恋に落ちた。でも始めたときは本当に下手くそだったんだ(笑)。レイアップさえ外しちゃうような状態で、でも体育館で練習するのが本当に楽しかったんだ。だからバスケへの愛情と、それに費やした時間のおかげで、今の自分があるのだと思っている。ちゃんと始めたときは14歳とかで、ほかの選手が色々やってるのを見て、「あれができるようになりたい」って思って練習したんだ。バスケだけじゃなくて人生において全てに言えることだ。何事もどれだけ時間を費やせるかが重要なんだ。
玲央 ゴードンとは同じ学年でしたか?
マブンガ 同じ学年、同じクラスだったね。4年間。結婚式でも、日本だとこういう習慣はないかもしれないけど、彼が僕のベストマン(新郎の付き添い人)で、僕が彼のベストマンだった。だからもうずっと仲良しだよ。
玲央 では当然まだ連絡取り合っているのですよね。今季彼が怪我(左手を骨折)したあとに連絡はしましたか?
マブンガ ああ。彼が怪我したとき、彼はまだ前の怪我(左脚骨折)からメンタル面で立ち直ろうとしている状態だったんだ。しかも良いプレーが続いていた。だからそれが止まってしまうということに対して、苛立ちはあったみたいだね。彼はボストンに素晴らしい選手になるために移籍した。友人の僕からすれば、彼は常に素晴らしい選手なんだけど、怪我のせいで彼がどれだけ素晴らしい選手だったかを忘れてしまった人がたくさんいる。今季序盤はそれをまた見せることができていた。当然怪我はしたくなかったと思っているだろうけど、彼はとてもポジティブだったよ。前向きに捉えていた。前の怪我に比べれば大したことない。ぶっちゃけ、彼が一番悔しがってるのは、TVゲームができないからだと思う。
玲央 ぶはははは(笑)。
マブンガ あいつは本当にゲームに取り憑かれてるってくらいやるんだ。
玲央 確かプロ並みに上手いんですよね。マブンガ選手もやるんですか?
マブンガ やるよ。『コール・オブ・デューティー』や『FIFA』が大好きだ。一緒にやれるなら今度やろう。
玲央 今でもゴードンとワークアウトしているんですか?
マブンガ 機会があればするようにしているんだけど、最近はあまりできてないかな。毎年夏はインディアナポリスに行くようにしていて、たまにカリフォルニアにも行っている。ここ2年ほど、ゴードンはユタに家を持っていた。カリフォルニアにも家を持っていたんだけど、最近売っちゃってね。そして昨年の夏はボストンに住んでいた。だから一緒にワークアウトはしたいんだけど、結局はお互いがトレーニングしないといけない内容とかもあるからね。
玲央 確かにそうでしょうね。
マブンガ 前に彼とトレーニングしていたとき、ちょうど良かったのは、僕はガードのスキルを磨こうとしていた。彼はポストのスキルを磨こうとしていた。だから僕は彼から学び、彼も僕から学んでいた。3Pラインで1on1をやったら、次はポストでやるって感じでね。ただこれだけは言わせて。1on1をした直近の2回はどちらも僕が勝っている。
玲央 NBAに行かないと(笑)!
マブンガ やれるとは思うんだけどね。比較が難しいよね、どうしてもお金の話が出てきちゃうから。
玲央 というと?
マブンガ 例えばアレックス・カーク(アルバルク東京)が日本で50万ドル稼いでるとしよう。これは適当な数字だよ。そしてトリスタン・トンプソン(クリーブランド・キャバリアーズ)を見てみると、彼は8000万ドルの契約を結んでたりするんだ。トリスタン・トンプソンがアレックス・カークよりも7950万ドルも上手い選手って言えるかい?
玲央 なるほど。
マブンガ 日本にいるベストプレーヤーは、NBAにいる選手と同じくらい、またはそれ以上の選手だっている。これは本当だよ。
玲央 今のB.LEAGUEのレベルはどう感じていますか?
マブンガ 高いと思うよ。良い選手が入ってきている。B.LEAGUEの好きなところは、色々な種類のチームがいるところだ。特定の選手に頼っているチームもあれば、特定のプレースタイルに頼っているチームもある。例えば東京。もう3年間ずっと同じプレーを毎試合やり続けている。でも彼らのコーチはそれを徹底して、効率的に遂行できるから強い。来るってわかっていても、頑張って止めなければならない。京都、うちらだってそうだよね。いつもピック&ロールをやってるけど、それを相手は止めなければならない。高いレベルでやれれば、わかっていてもなかなか止められないんだ。それがエキサイティングだし、面白さを生み出す。

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この後も、Bリーグにおけるスキルトレーニングやレフェリーの重要性、当時の京都ハンナリーズについてたっぷりお話しいただきました。続きは本書をご覧ください。

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