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『ダブドリ Vol.9』インタビュー06 山本柊輔(プロバスケット選手)

2020年5月9日刊行(現在も発売中)の『ダブドリ Vol.9』(ダブドリ:旧旺史社)より、山本柊輔選手のインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。インタビュアーは、ポッドキャスト『エクストラパス』のズボンさんと宮本將廣さん。なお、所属等は刊行当時のものです。

全国未経験、一般入試で名門・筑波大のロスターを勝ち取り、その後もプロの舞台に挑戦し続ける山本柊輔。昨年秋にはついに、B.LEAGUE屈指の強豪・アルバルク東京入りを果たした「非エリート」の強さの秘密とは―。イベントやポッドキャストへの出演をきっかけに山本と親交を持った、ズボンと宮本將廣(エクストラパス)が切り込んだ。(取材日:2月10日)

日本とアメリカとでは、やってるスポーツが違うとすら感じた

ズボン おなじみの顔ぶれということで、今日は……。
山本 ざっくばらんに。
ズボン そうね。山ちゃん、ズボンちゃん、宮ちゃんてな感じね。
大柴 ハハハハハハ。
山本 了解です(笑)。
ズボン やまもん(山本の愛称)はダブドリさん初登場なので、簡単に今までの経歴を話してもらっていいですか?
山本 静岡県静岡市の出身で、ミニバスから高校まではずっと静岡でプレーして、一般入試で入学した筑波大バスケ部で初めて、全国レベルのバスケを経験しました。卒業後はトライアウトで入団した山形ワイヴァンズで2年半プレーして、去年はレバンガ北海道で1シーズン戦いました。9月からカナダリーグ挑戦のためにアメリカに渡って、その途中の10月の末にアルバルク東京からオファーをもらって急きょ帰国して、2ヶ月プレーして契約満了。現在は無所属で、母校を借りてトレーニングをしています。
ズボン ありがとうございます。じゃあ、海外挑戦の話から行こうか。サクラメント・キングスの下部組織のストックトン・キングスの練習生としてプレーしたわけだけど、やっぱり日本とアメリカとでは全然違った?
山本 違いますね。Gリーグとはいえ、やってるスポーツが違うなってくらい差がありました。ゲイブ・ビンセントっていうやつはナイジェリア代表で、こないだマイアミ・ヒートにピックされてました。マジでうまかったです。その中で一番差を感じたのはシュートですかね。
ズボン シュートが入るってこと?
山本 入るし、何より打つ。最初のターンでシュートを打たなかったら、もうパスが来ないんですよ。パスが来たときに打って決められて、初めて認められる。
宮本 アメリカに行った日本人選手ってよく「パスが来ない」って話してますけど、こういうことなんですね。
山本 日本の選手が8割オープンでしっかりシュートを入れられるとしたら、向こうの選手は3割から5割くらいでも入れる。だから、マークがついていてもオープンの味方へのパスでなく自分のシュートを選ぶ。あとは実力主義なので、例えば15人で5対5をやるとしたら、その中でうまいやつ3人がじゃんけんして、選手を1人ずつ選んでいく。そのとき人数が16人とか17人だったとしたら、余ったやつは一切試合に出られないんです。
宮本 シビアですね……。
山本 そういう環境なんで、5対5までの練習で「こいつはやれるな」っていうのを見せることは意識しました。
宮本 まず、うまい選手とコミュニケーションを取って、戦力として認められるところからのスタートだった。
山本 そうですね。ビッグマンは日本の外国籍選手のほうがうまいんですけど、ガードは向こうの選手のほうがうまい。ピック&ロール使ってそのままシュート行ったり、1対1をガンガン仕掛けたり、日本にあんまりいないタイプのガードが多かったです。
ズボン そんな中で、やまもんはどういうプレーをしたの?
山本 生き残るためには周りをどれだけ生かせるかだって思ってましたね。元々のプレースタイル的にも、個で戦うっていうよりは、ビッグマンと組んで、彼を生かしたり、自分のスピードできっかけを作っていくタイプでしたし。向こうのガードってあんまりそういうことを考えてないんで、手ごたえはありました。「あ、こいつはこのタイミングでパスをくれるんだ」みたいな、日本人ならではの強みを生かせたと思います。

アメリカで戦うプレーヤーは、誰もが必殺技を持っている

ズボン アメリカにいたのは1ヶ月半くらい。どんな収穫があった?
山本 山ほどあったけど……そうだなあ、直近のプレーに生かせるなって思ったのは、彼ら、必殺技じゃないですけどお決まりのパターンみたいなのを持っていて、それをめちゃくちゃ練習してるんですよ。
ズボン へえ。そうなんだ。
山本 日本人は、レッグスルーからフロントチェンジ、ストレッチしてシュートみたいなシンプルな技が多いですけど、向こうの選手は3ムーブぐらいパンパンパンッて入れてからシュートやドライブをする。このクオリティが全然、違うっていうか。日本だとムダだしミスするからやめようって考え方になりがちなんですけど、自分みたいにドリブルやハンドリングが武器の選手はやったほうがいいなって思いました。
宮本 NBAだとジャブステップしてピック入れるってよりは、ちょっとドリブルで引っ張って、ロールして当てるとかそういうのが増えてきてるじゃないですか。そんな感じですか?
山本 そうですね。その種類、レパートリーの多さが全然違ったし、そもそもやってる練習も違った。そこは面白かったです。
ズボン どんな練習をするの?
山本 まず、スキルコーチが持ってるムーブの量がすごいんですよ。日本だと例えば1~2種類やってピック使うとかなんですけど、彼らは1回の練習で5~6個入れるんです。レッグスルーからフロントチェンジして、ストレッチしたときにシュートフェイク。ディフェンスが来たらインサイドアウト、ロールして、そこで初めてピック使う。それを「マネしてやってみろ」と。僕、そういうのがけっこう得意なほうだと思ってたんですけど、最初はできなかったですね。「さすがに多くね?」って思っちゃって。
一同 (笑)。
山本 でも、向こうの選手はすぐできるんですよね。しかも面白かったのが、一回やってちょっと自分に合わないと思ったら、リメイクしちゃう。
ズボン 自分用にしちゃうの?
山本 はい。コーチもそれで全然OKって感じで。そうやってみんなが自分の必殺技を見つけて、反復して磨いていくんです。
ズボン 日本じゃ絶対に得られない経験だね。
山本 ですね。こうやってある程度まとまった期間を過ごせたのは、自分にとってすごく大きかったです。
ズボン 英語とか生活面はどうだった?
山本 思ったより大丈夫でした。今はアプリでタクシーも呼べるし宿も取れるし、生活のストレスはほぼなかったっすかね。ただ、カナダへの移動は大変でした。遠いんですよやっぱ。アイランド・ストームっていう、プリンス・エドワード島っていう赤毛のアンで有名な島のチームのトライアウトを受けることになったんですけど、拠点にしていたロスからそこに行く直行便がないので、わざわざトロントまで出て、さらにそこから小さい飛行機に乗り換えて……。
宮本 1人でですよね? 大変そうだ。
山本 トライアウト当日も大変でしたよ。12時に体育館集合だったので、ホテルに11時にタクシーを呼んでいたのに、一向に来ない。仕方ないから流しのタクシーを探そうと思ったんですけど、まわりに何もない。人も通らない。せっかく来たのにどうしよう……ってあわててたら、そのホテルに泊まってた女の子が「どうしたの?」って声をかけてくれて。「タクシー呼んだんだけど来ない」って言ったらお母さんが「乗りな」って自分の車に乗せてくれて、3人でお喋りしながらドライブして、15分くらいで会場に着きました。
宮本 すごい経験(笑)。
山本 帰りは、3時間くらいバスに乗って空港に着いたはいいけれど、次の飛行機は12時間後の朝6時発という。どこかに泊まりたかったけど、朝4時にタクシーは来てくれないだろうと判断して、空港の荷物検査所の、荷物がばーっと出てくるとこの横のソファで寝ました。1人で。
ズボン ハハハハハハ。すげえ。今回の挑戦でそんなに大変な経験をしていたっていうのは想像できなかったなあ。

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